プリキュア創作2

□はなとユニ
1ページ/2ページ

「ちょっと、野乃はな、止まりなさい」
「は!はいっ!」

っと、道をポカンと歩いていると、不意に声をかけられて私はびっくりしてしまう。
…前々から道端で変な人から声をかけられがちだけど、やっぱり慣れないものではある…
っていうかこの声の主は…?

「ユニちゃん!?」
「どうも、野乃はな。こうして一対一で話すのはもしかして初めてかしらね」
ぴょおいーん、っと。ユニちゃんは道端の塀の上から猫みたいに軽やかに降りてきた。
「…ああ、そう言われたら…」
「こんににはにゃ」
「こ、こんにには…」
話しで聞いてたよりだいぶフレンドリーになっているようで安心する反面少し迷ってしまう。
…噂で聞く分には、居心地のいいさあやの家に隠れているとは聞いているし、ひかるちゃん達からも気難しい子、って話を聞いていたから気難しくって、私単独に話しかけるなんてことないとは思っていたけど…
「あ、もしかして野乃はな、今は都合悪かったりするにゃん?これは失礼なことをしたにゃんね」
「あー違う!違うの!その…逆っていうか…」
「…逆?」
「…ほら、ユニちゃんって私みたいなちょっとお節介しがちなおっちょこちょいな人は苦手なのかな、って思って。本当はさあやみたいな距離感の子の方がいやすいんでしょ?」
「にゃー、そう言葉にされるとそうだったかもしれにゃいにゃ。自分でも今まで無意識に野乃はなを避けていたかもしれんにゃ」
ペコリ、っと。ユニちゃんは頭を下げる。足がとっても長くて胴も長いのに、関節も柔らかそうなので私からみたら急にすんごい柔軟しているように見えた。
「ごめんなさいにゃ。ちょっと前まで自分でもめんどくさいって思う子だったと思うから、その時何かあなたにも粗相と感じることをしていたのなら謝るにゃん」
「あー!大丈夫!大丈夫だから!全然そんなことないよ!ユニにゃん!」
「そ、じゃあいいにゃん」
深々と頭を下げていたと思ったらこれまたケロリとすぐ元の体勢に戻る。ルールーとは違った意味で変身しなくてもさすが単独で怪盗していただけあって既に出来上がっている身体という感じだ。
「その…じゃあ、今私に話しかけてくれたのって…無意識じゃなくて意識的に何か目的があったってこと…何かな?」
「にゃー、あったようななかったような…さっき話してる最中に言いたかったこと忘れちゃったにゃん!」
「めっちょく!」
それじゃどちらこというと気分で話しかけたという感じだ。まあその方がユニにゃんらしくていいかもしれないけど。
私もそこらへんを歩いている時に気軽に話しかけてくれるような存在に、ユニちゃんの中でランクアップできているようで安心といったところだろうか。
「にゃー、思い出したにゃ!サンゴインステーキにゃ!」
「…サ。サンゴインステーキ…?」
訳が分からな過ぎる。やっぱり単語自体も何か思いつきで話しているんだろうか…この子は…責任感の強い子だとは聞いているけど、やっぱり実際会ってみないとその人の人となりは分からないものである。
人って言うか宇宙人っていうか、もうほぼ気まぐれな猫さんみたいなものかもしれないけど…
「って、サンゴインステーキ…全く聞いたことない訳ではないような…?あ」
そういえばひかるちゃん達から聞いた惑星サマーンへの冒険のお土産話のプルルン星でロケットを直していた時に、そんな単語を聞いたような気がする…確かそこでユニちゃんは…
「職人フレアさんを応援する為のサンゴインステーキを作っていた係…だったんだよね?」
「そうにゃそうにゃ。サンゴインステーキは勝手に出来上がっちゃうから、どっちかっていうと応援メインだったにゃ」
応援、ってことで、もしかして私の元に来てくれたのかな?
「応援って初めてやったけど、その時はあんまりえれなとまどかのイカタコ運動の力になってあげれなかった気がするにゃん。応援のプロとして、今後の戦いに備えて野乃はなからも何かアドバイスが欲しいにゃん」
「…アドバイス、って言っても…」
イカとかタコとかサンゴインとか、状況があまりにもシュール過ぎる。ひかるちゃん達から聞いている時も内心ちんぷんかんぷんだったしね…
…だけど
「応援はあくまで一番頑張っている人の側に邪魔にならないように近くにいてあげることで精一杯のことだから。あんまりなことを言うと私もキツイんだけど、応援に出来ることは限界はあるかな。成功するかどうかはやってる本人達次第だし」
「う…そうにゃんよね…」
っと、かつてアンリ君に言われたことっぽいことを返してしまう。けどそれを言われた時はショックだった代わりに、自分の中の応援の限界も超えることが出来た出来事だったのも確かだったのでそれで終わらないよう付け加えさせてはもらう。
「…けど、限界は自分で破るためにあるって人は言うけれど、同時に一人じゃ絶対破れないからこその『限界』だと思うの」
「…にゃん…日本語は難しいけど、確かに元来そういう意味の言葉にゃんよね」
「…だから、人が自分の限界を破る時って、絶対支えてくれる誰かがいてくれる状況でもあるんだよ。一人で頑張るしかないけど、一人じゃ絶対越えられないもののお手伝いを邪魔しない距離感で支えてあげること。それが応援の持てる強さだと思うな」
「にゃん…距離感ね…私には難しいことにゃん…ただでさえ今まで色んな人を傷つけてきたし…やっぱり向いてないにゃんかね…私に応援って」
「…そんなこと…」
早速距離感に迷うけど、勇気を出して私はユニちゃんの手を握ってみる。
…意外なことに拒絶されないで握り返してくれた。
…やっぱり、さあややひかるちゃん達の言う通り、変われたのかな、ユニちゃん。
私も避けてたり誤解してばかりじゃなくて、今日こうして話せる機会が持てて嬉しいよ。

「…実際、まどかさんとえれなさんを助けてあげれたんでしょ」
「…けど、それは二人が頑張ってくれてたからで、私からは何も…」
「…だからそれが応援の力なんだよ。言葉にしてみないと分からないけど、見えない形でみんなの土台のがんばりになれてくれている。それくらいの距離感でいいと思うよ、応援って。心配なら聞いて見てみると良いよ。えれなさんとまどかさんに『自分の応援があって、嬉しかった?』って」
「にゃん…あの二人、人がいいからきっとおべっかで良いって言うに決まってるにゃん…」
「…そうかもしれないね。けどそれを決めるのは、実際聞いてからでもいいんじゃない?」
「…にゃん…分かったにゃ。聞かないで誤解するより、ちゃんと聞いてみて判断するにゃん…もう、失敗しないために…」
…ユニちゃんの言う失敗が何かは分からないけど、頑張って『なりたい自分』なろうとしている彼女の姿を、私はとても愛おしいと思えた。
「フレフレ!ユニちゃん!『なりたい自分』を目指してー…ゴー!ファイ!」
「…ふふ、私が『なりたい自分』になるためにね…そうね、香水に頼らないでも、バケの皮だけじゃなくてちゃんと中身から変わっていかないとね」
キュ、っと手を握る力が強くなる。ユニちゃんの星のような瞳が私を見つめる。
「…これからも、応援で迷った時は相談しにくるけど…迷惑でなければよろしくね、野乃はな」
「…うん!ユニちゃん!こちらこそ!」
嬉しくなって、私はついさあややほまれにするようにハグをしようとしてしまう。
「はぎゅうううううう…っていない!」
「あ、ごめん。つい怪盗の時の癖で拘束技から避けてしまいがちに…」
まるで忍者の変わり身の術みたいに、ユニちゃんはいつの間にか後ろにいた。
「…トホホ…このつかみどころのない感じ、確かにさあやと気が合いそうだよね…」
「…けど、薬師寺さあやや輝木ほまれがあなたのこと、大切な親友として大切にしてあげてる気持ち、何となく分かったにゃん」
「え」
ぴょーん、ぴょーん、っと。近くの塀を伝ってそくさくとまたどこかへ去ってしまうユニちゃん。姿は見えなくなってしまったけど、声だけが私の心の宇宙に響いてくれるように残っていた。

演技や嘘じゃなくて、心から変身しようとしてるあなたの姿そのものが、みんなにとっての応援にゃんね。

「…ユニちゃんも、フレフレ、だよ…!」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ