小説

□ホワイトデーSS:4
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しばらく黙りこむルルちゃん。悩みを素直に僕に話してくれるというのもレア体験なんだけど、こうして仕事もしないで黙ってものを考えている彼女の姿を見るのもいつ以来だろうか。
「この仕事やめようかな」
「うぇええ!?」
「うそ」
唐突な爆弾発言に汚い話なんだけど鼻水めっちゃ出てきた。
「冗談に決まってるでしょ。さすがにそこまでネガティブになってないわよ。ただね…」
「う、うん」
「この仕事やってなかったら自分がどんなことしていたんだろ、って一瞬想像しちゃった」
それはネガティブというよりも、なんというかルルちゃんじゃなくとも一回は夢に出てきそうなそれくさ創作の種になりそうな『もしも』だった。
「楽観的な発言だけど多分そんなに性格まで変わっていないと思うわ。角のコンプレックスだって相変わらずだと思うし、ヒットソングのフレーズみたいだけどこんな私だからこそここまで生きていたんだから、一つの職自体で劇的に自分が変わったとも思えない。きっと適当な仕事に就いてもプロではない創作活動はしているだろうし、いつかもっと面白い話を作りたいと思いつつも今日みたいな老化とかスランプの話題で悩んで同じオチに落ち着く自分でいると思うの。確信はないけどどこか自信がもてるわ」
そんな『もしも』の世界の中に果たして僕はいるのだろうか、検討違いだけどそこが気になりつつも、確かにきっと別の世界にいってもルルちゃんはルルちゃんだってことはなんとなく分かる気がする。
そうはっきり言ってあげることのできないヘタレな僕だけど、そんな『もしも』がこれから未来彼女の選択次第でいくらでもあることなのだ。
老化とかスランプとか言いつつまだまだ彼女は若いのだから。
果たして彼女がそんな『もしも』を選択したときに、僕は彼女の隣にいることはできるのだろうか。
どんな未来でも見守っていけるのだろうか。
「…でも僕はたとえルルちゃんが漫画家やめても、一緒にいるからね」
「誰が漫画家やめるとまで言ったんだおい!テメーみたいなファッションスランプと一緒にすんなボケィ!」
がっーっといつもみたいに怒り狂うルルちゃん。ひえっーと恐がりつつも、取りあえず安心してしまう僕であった。
「で?あんたいつデビューすんの?」
「えっとそれは…」
スランプのプロとしてはそろそろスランプを抜け出したいのですけどね。トホホ。
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