小説

□ホワイトデーSS:4
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…突拍子ないどころか次元の違うワードが飛んできてツッコミもできないでいた。
なんつーかこれまであたふたしながらも一応会話のキャッチボールをしていた中、いきなり相方が別方向に槍投げし始めたような感覚だ。
そして槍を投げた方もなんだかおぼつかない足取りで混乱し始めている。
「いや、ちょっと待って。私変なこと言ってるよね?」
「うん、そうだね」
珍しく顔真っ赤にして恥ずかしがっているエコ。こいつにも恥じらいはあったのか。
「そ、そうだよね。別に子供だからって親の望み通りに育たなくたっていいよね…育ちたいように育てればいいんだし」
「…お前は何を言いたいんだ?」
不覚にも潮らしく恥ずかしがっているエコの姿をかわいいと思いつつも、それ以上に混乱してしまいそうなのでちゃかすのはやめておくとする。
「いやね、確かにスランプとか老化とかって誰しもが経験することだからしょうがないとはいえ、究極的なこと言うなら誰しもが絶対いつかは死ぬじゃん」
「お、おう。そうだね」
「いつか死ぬ以上はたとえどんな努力も無駄。そんなこといったらスランプをどうにかしようって努力も無駄になっちゃうから全否定になっちゃうかもだけど、そんなこと言いつつみんな絶望的に生きている訳じゃないでしょ」
「ん、んまーお前の理論がぶっ飛び過ぎてるってもあるけど、誰も死ぬために生きている訳じゃないな」
そりゃほんの一部はいるかもしれないけど、その問題はスランプがどうのとか個人レベルの問題というよりも鬼という生物単位の問題と言ったほうがいいだろう。そのくらい飛躍している。
「だいぶぶっ飛んだ意見だし、ぶっちゃけ他力本願だから誉められることではないけどさ。例えスランプになったとしても子供じゃないにしても後輩とか弟子にでも教えてあげればいいんだよ」
「それは…なんつーか諦めというよりも…丸投げ?」
「まあ今のあんたみたいに個人の仕事の出世とか評価レベルの話になるとまた違うんだろうけど。個人の問題を外した視野を広げた言い方をするなら、スランプになったら後進に道を譲っちゃえばいいんだよ。丸投げし過ぎないようにちゃんと知識や技術も受け継いで、自分の出来なかったことを託す感じでさ」
「後進に道を譲る、ね…」
それくさ年寄り染みた台詞で、確かに今の僕には分からない話である。
しかしエコが言わんとすることはなんとなく分かる気がした。
確かにスケールが大きくなりすぎてはしまったけど、僕がルルちゃんに言ってあげたかったニュアンスに近いものかもしれない。やっぱり感覚派のこいつは僕のモヤモヤしたものを的確に表現できているようである。
孤独に頑張んなくてもいいんだよ、例え調子を悪くしたら誰かに頼ればいい。
他力本願。
ルルちゃんにも何度も怒られていた僕の欠点ではあるけど、やはりこいつとは親戚というかたどり着く答えはなんとなく一致しているのであろうか。
親戚というよりも魂のどこかで繋がっているようなこの教えはどっちかというと、あの鬼に子供のころに口酸っぱく言われたことに似ている。
血筋的には親戚よりももっともっと近い存在。

「「父さんにもよく言われたしね、助け合いながら生きていきなさいって」」

「え?」
「は?」

何故だか感嘆詞以外の台詞が被っていた僕ら。
「エコ、今父さんって?」
「チヨ、聞いてなかったけどあんたの父親って…あれ?」

どうやら僕らの関係は親戚というよりも…?

「父さん、何託してんの!?」

続く?(丸投げ)
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