プリキュア創作6

□輝木ほまれ誕生日SS:2018−3
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 赤ちゃんの声がする気がして気になって屋上に向かってみると、そこには・・・

「・・・あ」
「・・・薬師寺さん?」

 何故かこんなところに昨日出会った薬師寺さんがいた。まずい、もう彼女に迷惑かけないよう会わないように決めていた矢先、こんな不可抗力で出会ってしまうなんて思わなかった。

「輝木さんも気になったの?赤ちゃんの声」
「う・・・うん、まあそんなとこ」

 って薬師寺さんも聞こえてたんだ。さっき廊下ですれ違った先生や他の生徒は何も聞こえてない風で不思議だったけど、どうやら私だけの幻聴ではないみたいで安心する。私もおいそれと『今、赤ちゃんの声聞こえませんでしたか?』って聞くのも何だか変な子みたいで不安だったんだよね。ただでさえ不良扱いされているのに、それにプラス不思議ちゃんだったらこれからの学校生活は目も当てられないだろう。

「何だったんだろうね、屋上にもそれらしき姿は見当たらないし」
「・・・赤ちゃんがいたらいたで大変だろうけどね。見つけたらどうするつもりだったの?」
「えっと・・・一応先生に報告」

 まあそんな流れになるよね。私こそ赤ちゃん見つけたらどうするつもりでいたんだろ。

「でももう一つの可能性もないみたいね。私はてっきり猫ちゃんかもしれないって思ったんだけど」
「え、何で猫ちゃん?」

 明らかに赤ちゃんの泣き声だった気がするんだけどなあ。

「ほら、発情期の猫さんって人間の赤ちゃんみたいな声するでしょ?あれびっくりするよね」
「発情期って何?」
「・・・ああ、まずはそこから・・・えっと・・・春辺りになると猫さんも他の猫さんが恋しくなるって時期かな・・・」
「ふーん。あとでちゃんと調べとこ」
「わ・・・私の説明、分かりづらかったかな?」
「いや・・・別に」

 でも何かボカしている言い方で気になっちゃったかな。薬師寺さんも言いづらいことっていうか私が常識なさ過ぎて知らなかったら恥ずかしいことかもしれないからちゃんと調べたかった。
 ・・・もういいや、この際ここまで話してしまったらあとは気分が晴れるまで話してみよう。

「・・・昨日はごめんね、何か迷惑だったでしょ、私」
「え?何が?」
「・・・何がって、その・・・」

 昨日のことのはずなのに何だか私も記憶を消したくて数年前の出来事な気がしてきた。いやそんなことないんだけど、昨日のこと昨日のこと。

「あ!!!もしかして昨日私が勝手に誕生日を調べて祝ちゃったこと!?やっぱり怖いよね・・・勝手に輝木さんのこと調べてて・・・ストーカーみたいで、ごめんなさい」
「ええ!?違うよ?誕生日のことは嬉しかったよ!あれはマジで!何か気分が落ち込んでたけど誕生日お祝いされて嬉しかったよ!っていうか誕生日祝われて嬉しくない人なんている?私のこと調べてくれたのもその・・・気にしてくれているみたいで良かったよ・・・」
「・・・そうなんだ」
 ・・・って私が薬師寺さんの掃除を邪魔しちゃったり、他の子にいじめられそうなところをお節介なことしちゃったかな、って不安だったからそのことを言おうと思っていたけど結局逆に謝られてしまった。
 赤ちゃんと発情期の猫のことといい、昨日の重曹の豆知識だったり、薬師寺さんと話していると変なところに脱線して本来私が言いたかったちょっと暗めな話がどんどん変な方向に言ってしまう。
 ・・・楽しい。
 じゃなくって・・・

「私ほら・・・クラスで浮いてるし、これまであんまり普通の友達付き合いとかしてこなかったからさ・・・その、常識ってものがないからよく分からないんだ」
「・・・そうなんだ」
 改めて、軽蔑されるかな。不良から委員長にこんなこと言われても、やっぱり迷惑なだけかなって思ってしまう。薬師寺さんには友達がいっぱいいそうだし、こんなめんどくさい私を見せたら失望されるかなって怖かったけど。
 フェンスの向こうの空を眺めるように、薬師寺さんは優しく言葉を空に投げる。

「私もそうなんだ。これまで学校であんまり友達いなかったから、距離感がよく分かってないかも」
「・・・え」
「・・・昨日だって、何か変な時間に変な掃除の仕方していてからかわれていたもんね」
 ・・・へ、変な自覚はあるんだ・・・本当に変な子、でも・・・
「・・・薬師寺さんも一緒だったんだね、私と」
「え?」
 ・・・私が薬師寺さんのことを知らないように、薬師寺さんだって私のことを知らないんだ。
 私は不良で周りから浮いているって思っていたけど、ラヴェニール学園は他にも芸能科から普通科に転入してきた子だったいるだろから、もしかして薬師寺さんもちょっと訳ありの生徒なのかもしれない。それを詳細まで知ろうとは今は思わないけど、でも・・・

「・・・何か私、自分のことばっかで薬師寺さんのことあんまり考えてなかったかも。薬師寺さんだって、新学期で友達作りたかったんだよね」
「・・・うん」
「でも改めてだけど私は辞めておいた方が良いんじゃないかな。不良だし、きっと委員長の薬師寺さんに迷惑かけちゃうと思う。薬師寺さんに似合う友達は・・・そう」
 例えば入学式の時にあった、ちょっと前髪の変な女の子の・・・なんだっけかな。一応あとで同じクラスだって知ってびっくりしたんだけど。
「野乃さん、みたいな素直で明るい子の方がいいよ」
「野乃さん!輝木さんもその子のこと知ってるの?」
「う・・・うん」
 まあ薬師寺さんは委員長だし、知っててもおかしくないとは思うけど・・・
「野乃さんって良いよね。明るくて元気で、私も難しいことあんまり考えないで野乃さんみたいな子になりたいなあ」
「そうだね、私も」
「・・・昨日も野乃さんの真似をしてみて、輝木さんに話してみたけど、やっぱり私じゃ他人の真似事は上手くいかないみたいだよねえ」
「・・・そ、そんなことないよ」
 まずい、やっぱりこの子といると私も変な気分になってくる。
 お互いがお互いより卑下しあちゃっているみたいな。私は不良で薬師寺さんはなんかの訳あり。本来なら接点がない私達が赤ちゃんの声で屋上に来たこと、野乃さんっている共通の憧れの相手でどんどん距離が近づいている感じだ。
 このままだと本当に友達になってしまうかもしれない。
 ・・・それはよくない、この子の為にも。

「・・・ごめん」
「・・・輝木さん?」

 どうせ私は普通の友達付き合いができない以上いつかこの子を傷つけてしまう日がくるだろう。だったら最初から出会わなかったみたいに、今ここで無理矢理にでも距離を取っていた方がいい。
 ・・・ありがとね、薬師寺さん。誕生日祝ってくれて嬉しかったよ。
 ・・・いつか色んなしがらみから解き放たれて、普通に接することができたのなら
 ・・・トモダチになっていみたいな。

 そんな別れの言葉を心の中で呟いてから、ダッシュで屋上から逃げようと振り返ったその瞬間である。

 やっぱり運命なのか、私と薬師寺さんがいるとまるで磁力のように引き合うのか。

 バタン、っと屋上の扉を開いて私の逃走経路に立ってたのは。

「・・・あれ?今ここで赤ちゃんの泣き声がしたような気がしたけど・・・いるのは薬師寺さんと輝木さん?」

 ・・・噂をすればなんとやらで、野乃はなさんだった。
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