プリキュア創作

□ほまれとパップル
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クライアス社本部に乗り込むためにジェロスが文字通り助け船を用意してくれた。
…これに乗っていよいよ決戦の場に向かうんだね…最後の戦いに…
「みんなー、がんばんなさいよ!あんた達が帰る場所は私達が守ってあげるから!」
パップルがいつもみたいに明るく励ましてくれる。これなら私達も胸を張って迎えそうである。
「…ありがとうね、パップル。私達頑張ってくるから」
「あ、エトワール…その」
しかし私が話しかけると珍しく汐らしくなってしまうパップル。あれ、何か私変なこと言っちゃったかな。
「…あなたからそんなこと言われるなんてね、エトワール…いや、輝木ほまれ…」
「…どうしたの?パップル。何か私、あなたにしたかな」
「いや…ほら。したというなら私の方よ。私はあんたに嫌われてもしょうがないことしたしね」
「???」
…んー、身に覚えがない。えみるちゃんとルールーならまだしも、パップルと私って何かわだかまりあったけかな。
「もやもやするから、出来ればちゃんと言葉にしてくれると嬉しいな、パップル」
「いや…ほら、あれよあれ。皆まで言わせる気?」
…うーん、私はさあやみたいに察しがよくないからパップルみたいな大人の人が言おうとしてることは分からないや。皆の前ではお姉さんでいるつもりでも、まだまだ子供なんだな、私って。
「ほら…あなたがあのネズミのこと好きだってこと、皆に言いふらせたの実質私みたいなもんだったしね」
「…え?そんなこと?」
あーそういえばさあやから何となく聞いてた気がする。はな達が私の恋心を知ったのって、確かパップルに問い詰めたからだっけ?自分でもびっくりするんだけど、もうかなり前の話のように思えて今までそんなこと気にも止めてなかった。
「いいよ、別に。私も皆から聞いたけど、聞かれたから答えてくれただけなんでしょ?言いふらせたとか思ってないから気にしないでよ」
「で、でもねえ…これは私の後味の問題よ。自分がされて嫌なことを、年下のあんたにしちゃったのよね。ずっと謝りたかったの」
シュンとするパップル。失礼ではあるんだけど、私は少し微笑んでしまった。
「な、何よ!せっかく私が勇気を出したってのに!」
「はは、ごめんごめん。パップルも案外かわいいところあるんだな、って思っちゃってさ。意外とそういうところうぶなんだね、初めて知ったよ」
かっー、っと赤くなるパップル。そう言えばクライアス社にいたころの彼女と決着を着けた時、何だか想っている人がいるようなこと言ったような。
…大人のお姉さんとして私達を助けてくれていたようで、パップルもやっぱり女の人だったんだな…
「…私、パップルには感謝してるよ」
「…え?」
手を握る。パップルの少し赤くなった瞳の中で私の顔が揺れていた。
「ハリーに告白したあと、勇気を振り絞って失恋したあと。私のこころはバラバラになりそうだったんだよ…あの瞬間、事情を知ってたみんなが側にいてくれて、私を抱き締めてくれたんだ。あの場面にみんながいてくれなかったら、きっと私は立ち直れなかったと思う」
パップルにハグをする。あの時みんながそうしてくれたように。
「私は一人じゃないって、勇気を出して失敗しても、時でも見てくれている誰がいてくれるんだって。皆があの場にいてくれなかったらきっと今の私もいなかったと思うよ。だからそのきっかけをくれたパップルにも感謝してるよ。あの場にはいなかったかもしれないけど、パップルも、私の失恋を支えてくれてたんだね」

ありがとう。

冬の空に溶かせるように、この言葉をパップルに届ける。

「…お節介じゃなかった?」
「うん、今はちゃんと失恋出来て良かったと思ってるよ」
「…少し見ない間に、いい女になったわね」
「…パップルには負けるけどね」
「…そんなことない」
パップルは目を伏せる。まるで何かに懺悔するように。
…私達をここまで助けてくれただけでも十分罪滅ぼししてくれてると思うけど、大人には色々な後悔があるのだろうか。
「私はあなたと違って勇気を振り絞ることすら出来なかったダメな大人よ。本当なら背中を押すこと立場ですらない。けどあなたなら。あなた達なら私の代わりに『あの人』の元へと行って良いって思えるの…私の言えなかった想いを、託してもいいかしら?」
「…パップルの想いを伝えたい人ってさ…もしかして…」
「ほら、そこの二人!何をグズグズしてるの!そろそろ出発するわよ!」
っとジェロスがせかしてくる。もうあまり話してる時間はないようだ。
「…分かったよ、パップル。あなたの言葉も拳に乗せてくるね」
「ええ、頼むわよ。エトワール」
「良いってことよ」
彼女は否定するかもしれないけど…私はまだまだ子供だ。いつかはパップルみたいな大人になるために。色んな人の恋を助けられるような大人になるためにも、この戦い、絶対勝たないとね。
待っててね、パップル。

「さあ、いくよ!みんな!」

羽が生えたようなボートは表情を星のように進んでいく。色んな人の愛を乗せて。
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