プリキュア創作

□スランプさあや
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「さあやってさー本番前に緊張した時にどうするのー?やっぱり私に言ってくれたみたいに周りの人のこと野菜とかに見てるの?」
 …ほまれがこの間の時みたいな質問を今度は私にしてきた。
「うーん、どうだろ。私はそんなに緊張しないかも」
「え、マジ。やっぱりさあやはすごいね」
「…どうせ私のこと何て誰も見てないだろうし。役に成り切ることに集中しちゃうかな」
「…え?」
 ほまれの雰囲気が一瞬で変わった。
 あ、マズい。何か怒るようなこと言ってしまったかな?と感じるも時は既に遅く。
「…それってどういうこと、さあや」
「えっとね、これはその決して見てくれる人のことを蔑ろにしている訳じゃなくって」
 違う。私がほまれに言いたいのはそういった言い訳染みたことじゃないの。
 アスリートとして一流の勝負の世界で戦うほまれ。怪我から復帰した彼女の中にはきっと彼女の中にしかないポリシーというものがあるはずだ。
 …薄々思っていた。
 ほまれが私のことを友達としてみてくれるのはとても嬉しい。勿体ないくらいだ。
 …そう、私の心の内ではどこか彼女と私は釣り合ってないんじゃないかっていう劣等感を隠していたと思う。
 それを騙し騙し秘密にして過ごしてきたけど、今ここ。
 勝負の世界で身を置く者同士として彼女が信じてくれていた私と。
 本当の私の価値観のズレが生じてしまったと思う。
 これは分かる。見てくれだけの演技ではきっと、素直なほまれには全て『嘘』だと映ってしまう。
 …嫌だ、見ないで。本当の私を。
「…さあやってさ、たまにすごく自分に興味がない時あるよね」
 …うん、知ってる。やっぱりあなたにはバレてたのね。
「…ごめん、責めるような言い方しちゃって。さあやにはさあやなりの演技の仕方があるのは分かってる。素人の私が口出してはいけない境界線ってのもあると思うよ。けどスケートと女優。世界は違っても同じ『演技』っていう広い舞台で一緒に戦っていると思ってたけど、やっぱり私とさあやとじゃ違うんだな、って今分かっちゃった」
「…違うの、ほまれ!私はただ…」
 …ああ、ダメ。言葉が出てこない。頭の中の台本がない。
 私はほまれにどういてほしいって願われてるの?
 心が空っぽだから分からない。
 これじゃ、はな達と出会う前の、委員長を演じてた私と一緒じゃない。
 違う、私は薬師寺さあやとしてほまれに言いたいことがあるの。
「ほまれ…!」
「…ごめん、私も言い過ぎた。都合の良いこと言うけど、少し忘れてて」
「そ、そんなことない、私ね、実はあなたのこと…」
「…ちょっと間を置かしてほしい。私も言葉をまとめたい」
 …『も』って、やっぱり…
 私はほまれの前では、全然演技が出来ない。
 だから本当の『何にもなかった』頃の私に戻っちゃう。
 嫌だな、はな達と出会って変わったと思ったのに。
「ただこれだけは言わせて。イライラして少し言葉が強くなってしまったけど、私がさあやに伝えたい、嘘偽りのないシンプルな気持ちはこれだから。これだけ言わせてから、お互いちょっと休もう…」

 世界中の誰がみてなくたって
 私だけは、さあやを見てるからね
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