プリキュア創作2

□ほまれと蘭世
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うう…どうしてこんなことになったのですの…
「さあ、一条蘭世さん。私と一緒にさあやの話をしよ!」
…わたくしはこの間の約束通り、輝木ほまれさんと一緒にカフェで過ごしていた。
…しかしいざまじまじと一対一で対面してみるとものすごいかっこいい美人さんでたじたじしてしまう…わたくしの方が女優であるはずなんですけど…向こうは天才美少女スケーターときたものだから完全に負けてしまっている…
って、輝木さんは薬師寺さあやじゃないんだから別に張り合う必要もないんですけど。
「それでそれでー、一条さんが知ってる昔のさあやのこと教えて下さいよー」
っと、どうやら輝木さんは私の知っている昔の薬師寺さあやに興味を持ってるみたいで、それでこの場を設けたらしい。
…こんな有名人と仲良くなってたなんて、ほんと隅に置けない人ですね、あの人は。
「べ、別に…今の薬師寺さあやもわたくしからしたら昔と変わらない生意気な薬師寺さあやですよ?」
「そこだよそこ。私たちの知ってるさあやって、見た目こそ大人しいけど『生意気』っていうほどやんちゃでもないんだよね。一条さんの知ってるさあやはそんなに強烈だったの?」
「…ええ、そりゃもう…」
…どうやら輝木さん達の前では上手くねこを被ってるようですけど、わたくしは忘れませんからね。昔あなたにされたことを…
「一度遊びに付き合わされたらビュンビュンどこかへと連れ回されて一日中ぼろ雑巾のように扱われますの…」
「…ほうほう」
「…おままごとなど大人しい遊びをしてみても、あの子どんどん設定に凝ってめちゃめちゃめんどくさくなっていくんですの」
「うんうん…」
…ってそんなに意外そうでもなさそうなリアクションですわね。そこらへん有名人でアスリートの輝木さんの体力と知識なら着いていけるとでも言うのでしょうか。
「あとちょっと意見が食い違うとすぐ怒るんですの…」
「へー、そこは意外。さあやって全然怒るイメージないんだけどなー」
「…あの子も中学生になって、そこは変わったんでしょうね。確かにわたくしの目から見ても、進学してからの彼女は子供っぽさを何故か隠すようになって、より演技染みたムカつく薬師寺さあやになってた時期はありましたね」
「そうだね…さあやは多分、成長していくごとに自分で自分に無意識にブレーキかけてたと思うよ。自分が傷つくにも敏感なんだけど、あの子人の目も気にしちゃうことろもあるから」
輝木さんは少し寂しそうな表情を浮かべる…現役女優のわたくしから見てもものすごく絵になるショットで見とれてしまうほどに。
「…けどわたくしには進学してからも遠慮なんてあったもんじゃない扱いさらてましたけどね…」
「…そこだよ、私が一条さんのこと羨ましいって思ってるところ」
「へ」
不意に輝木さんから手を握りられてしまう。かっこいい顔立ちでいきなり距離を縮められてしまってドキドキしてしまうわたくし。
「な、なんですの!輝木さん、急に!」
「一条さんはさあやにとって、子供の頃から遠慮のいらない、数少ない対等な友達だったと思うよ。私はそこが羨ましい。さあやにとってこれからずっと力になってあげたいって思えるけど、友達として支えていた時間は一条さんが一番長いんだなって…」
「…そんなことないですよ」
…輝木さんがどうわたくしのことを思ってるかは知らないけど、それは買いかぶりだということを声を大にして伝えたい。
「…今の薬師寺さあやを作ったのは紛れもなくあなた達ですよ、もっと言うなら輝木さん、あなた」
「…え?」
長いまつ毛がぱちくりと動いてお人形さんみたいでまたドキドキする。けどわたくしも女優のはしくれだ。言うべき台詞はどんなシチュエーションでも堂々と言ってあげよう。
「わたくしの本音は薬師寺さあやにはずっと女優でいて欲しかった。私のライバルでいて欲しかった。今だってそうですわよ。お医者様の夢をやめてまた女優として、ライバルとして戻ってきてくれたらそれが一番嬉しいです…けどそれはわたくしエゴ。今の薬師寺さあやが選んだ夢は紛れもなく、中学生になってからの彼女が得た経験と人脈で選択した夢です。わたくしの意見なんてあの子は昔から一つも聞いてないんですよ」
「…そ、そんなことないと思うよ!」
慰めのつもりか、涙目になって訴えかけてくる輝木さん。
…もしこれを演技でやってるとしたら、彼女も相当な役者ですね。
「さあやの『今』はずっと、さあやがこれまで出会ってきたみんなで作られてるはずだよ。その中に一条さんだって入ってるはずだよ。一条さんは私が一緒にいられなかったころのさあやだっているんだから、そんなこと言わないで…」
「…少なくとも…」
手を握り返す。この人は多分、嘘の付けない人なんだろう。だからせめて、わたくしも真意に答えよう。
「わたくしはあなたみたいに、好きな人のためにここまで勇気を振り絞れる行動はできませんから…」
「す、好きだなんて!そんな!」
あれ、そうでしたの。嘘は付けないかもしれないけど、ひょっとしてただの鈍感なだけなんでしょうか。
「…ぷぷ」
「…何がおかしいの?一条さん」
「いや何でもないですよ。ただあの子も結局、似た者同士の友達が出来たようで安心しましたの」
…薬師寺さあやとは道は違えたかもしれないけど、近くに輝木さんがいてくれるのならば安心ですかね。
「一条さん…私ね…」
「蘭世で良いですわよ」
「…え?」
「…あなたの言うところによるなら、私達は薬師寺さあやを遠くから見守る同志のようなものですからね、堅苦しい呼び方はこれまでにしましょう。ほまれさん」
「…うん!これからもよろしくね!蘭世ちゃん!」
…う、いきなり『ちゃん』呼びされるとは、馴れ馴れしいというかかっこよすぎてドキドキしてしまう。
…薬師寺さあやめ、相変わらず羨ましい人ですね…
「じゃあこれからもさあやファンクラブの仲間としてよろしくね!蘭世ちゃん!」
「んあーーーーーーーーーーだからあの子のファンになった覚えはありませんのーーー!」
あの子とわたくしはこれからもライバル、道は違っても、どちらが先に一流になるかの勝負ですからね!
…負けませんよ、こらからも
さあやちゃん…
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