プリキュア創作3

□遼じいの四季
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「こらー!遼ちゃんをいじめるなー!」

学校のすみっこでいじめられているところを、僕は今日もまた春ちゃんに助けてもらっていた。

「…いつもごめんね、春ちゃん…本当なら僕も抵抗しなきゃいけないのに」
「…良いんだよ、別に。いじめてる連中の方が悪いんだから遼ちゃんは気にすんなよ」

…けど助けられている立場からこんなことを言うのは失礼だとは思うけど。

「…僕って男っぽくないからさ…周りの男子達から見たらイライラされちゃうんじゃないかな」

いじめ、って言葉にしてしまうとまるで被害者みたいではあるけど。
集団の中でコミュニケーション能力の低い者を排除しようとする働きそのものは動物の本能みたいなもので責め切れるものでもない。
いじめられたくなかったら当たり障りなく周りと溶け込める能力だとか、抵抗して男らしいところも見せなくてはいけない。
…無論僕達は動物じゃなくて人間で、まだ子供だから力加減が出来てないってところもあるんだろうけど。
せめて自分で自分のダメなところはちゃんと分かって解決しようと自力で動かないとダメだ。いつまでも春ちゃんに迷惑かける訳いかない。
…まあ本当のこと言うと読書や勉強出来るスペースをこの学校はもっと作るべきだと思う。
運動の得意な子、勉強や創作活動の得意な子をちゃんと分けれる区分を分けることができたら、他の子との摩擦も少しはなくなると思うんだけどなあ。
僕が大人になったら、せめて観星町にはそんな場所を作れる大人になりたいな。

「…男らしくないってさ、じゃあ遼ちゃんはどんなのが男らしい、ってどんなのだよ」

っと、いつもと違って春ちゃんから質問が投げかけられた。

「うーん、やっぱり春ちゃんみたいにいざとなったら友達を守れる強さのある人かなあ」

僕も春ちゃんみたいになってみたいと思ってばかりだよ。

「…いや、これは俺がたまたまちょっとだけ体が丈夫なだけだよ。それに弱い者いじめしてる連中見てるとなんか本能的?動物的な感覚でイライラしてぶっ飛ばしてるだけだよ」
「…あはは、春ちゃんらしいや…」

…僕の中での動物らしさと違う会見なのも面白いところである。

「…俺が思う男ってのはさ、夢を持ってることだよ!」
「夢?」

そんな春ちゃんの方が、何だか目を輝かせているように思える。

「…正直俺って将来やりたいこととかないんだよなあ。それこそまあ普通に親孝行して、成り行きで就職とか結婚とかして普通に暮らしていくんだなあ、っとは思うけど。さっきも言ったように俺って考えなしにとりあえず目の前にある問題につっかかって満足しちゃう性質だからさあ。本当ならもっとこう!普通じゃないビッグなものに挑戦してみたいって思うんだよ!」
「…普通、か」

…普段いじめられている僕にとっては。
春ちゃんの言う、そんな普通の方に憧れるけどな。

「だから俺は遼ちゃんを助けるよ。遼ちゃんは俺に持ってないものを沢山持ってる!」
「…え?そう?」

こんな、教室の隅っこで本ばかり読んでいじめられている僕が?

「やりたいことあるんだろ?」
「…うん、いつか星に関する仕事に就いてみたいんだあ。さっき思いついたことだけど、この観星町に新しい施設とか作ってみても良いかな」
だとしたら町をまとめている香久矢家の人達とも将来を見据えて仲良くなりたいよなあ。
「そこだよ、そこ!」
「え」
「遼ちゃんは小学生なのに俺達よりずっと先を見てる!俺には持ってない普通をもうさも当たり前のように持ってるんだよ!すっげえ羨ましよ!遼ちゃんの邪魔をするやつは俺の夢の敵でもある!」

俺の夢はまだないかもしれないけど。
遼ちゃんの夢を叶うことろは見てみたい!

…そう言う春ちゃんの笑顔は。

少しだけ、残酷に見えた。

夢を追うことの。
普通を捨ててでも叶えようとする人の孤独をまるで想像もしたことないような。
努力をすればもれなく夢は叶うと信じてるような純粋さを、まあ子供何だから普通に持ってはいるんだろうけど。
努力をしている人間って、別に善行をしている訳ではないんだ。
努力をすれば報われるという考えは危険で、僕から言わせてみれば何かを犠牲にしてでも一つのことに集中している人間が。
たまたま運を拾いやすいというだけに過ぎない統計学だと思ってる。
そんな博打みたいな生き方は、確かに春ちゃんには向いていないと思えた。

…けど良いよ、春ちゃん。

春ちゃんがそう思ってくれるなら、僕は君の憧れの存在でいたいとも思える。真の意味で孤独じゃないと思えるんだ。

僕が捨てていく分の普通を、君になら託してもいいかな、って思えるんだ。

トモダチ、じゃなくて、君は…

「…うん、わかった。僕は僕の夢を叶えるからね、春ちゃん」
「おう!応援してるぜ!遼ちゃん!」

…僕にとっての春は、もう少し先でもいいかな。
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