プリキュア創作3
□遼じいと小さいころのひかる
1ページ/2ページ
「りょーじー!こんちにはー!また星のご本よんでー」
「はいはい、お安い御用だよひかるちゃん」
春ちゃんのとこのお孫さんのひかるちゃん。
とある日の星座教室から妙になついてくれて、あれからよく遊びにきてくれるようになってくれた。
「りょうじー、次はこれよんでー」
「…ん、これ英語の本だけど大丈夫かな?」
「うーん、宇宙のことならなんとなくわかるかもー」
…ほうほう、中々骨のある子ではあるけど…
少しだけ、余計なお世話かもしれないけど心配なところは多少あるひかるちゃんだった。
「…ひかるちゃん、ここのところよく来るけど。お友達とは遊ばないのかな」
「うーん、何だか私って、『へんなこ』みたいなんだよね」
…聞いて良かったことなのか、今更ながら心がちくりとしてしまう。
「わたしってよく女の子からは『女の子っぽくない』って言われるし、男の子からは『へんなこ』『ふつうじゃない』って言われるんだ」
わたしはわたしのつもりでいるはずなのに。
誰にも傷つけてないのに。
「りょーじい。『おんなのこらしさ』って何?『ふつう』って何?」
…けど目を背く訳にもいくまい。
かつての僕みたいな子の
居場所を作るためにこの天文台を作ったんだからね。
「…さあねえ。『おんなのこらしさ』や『ふつう』って、色んな地方から観ると星の形や星座の解釈が違ったりしてるみたいに、一人一人違うからね」
女の子らしさより
普通より
「ひかるちゃんは『ひかるちゃんらしく』いたら良いんじゃないかな」
「…えへへー、りょーじいのそう言ってくれるとこすきー」
…ふふ、そうかい。
…春ちゃんのお孫さんにそう言って貰えるなんて、この天文台を作った甲斐があったねえ。
「…ひかるちゃんは将来、何になりたいのかな」
いつぞや春ちゃんに言われたようなことを、僕もちょっとしたいじわるでひかるちゃんに質問してしまう。
夢を大切にしてくれる。
守ってくれる春ちゃんのことだ。
きっとその心も、ひかるちゃんに届いてくれているだろう。
「んー、まだよく分からないけど、げんじつてきじゃない夢はあんまり持たないほうがいいよー、っておじいちゃんには言われてる」
「ええ!?」
って予想外の答え!僕の夢を守ってくれた春ちゃん!何てこと言ってるの!
「大きすぎる夢は、まわりの人を遠ざけてしまう…みたいだから」
「………」
「…わたしのお父さんがそうなんだって。忙しくてよく家にいないことはよくないって、おじいちゃんがよく言ってる」
…そっか、息子の陽一君のことか。
彼も、春ちゃんのまっすぐな教育を受けて素晴らしい青年になったと聞くけど。
春ちゃん。
今更ながら気付いたと言うのかい。
夢が持つもう片方の側面。
君が僕に押し付けてきた、夢を追う者だけが感じてしまう孤独を。
やっと、お孫さんが出来るくらいになって。
…やっぱり、君は夢を万能で、都合のいいものだとでも思ってたのかな。
「ひかるちゃん」
けどひかるちゃんは春ちゃんでもなければ陽一君でもなければ僕でもない。
夢を追う者の助けになれる為に作ったこの施設にきてくれた。
かけがえのない存在だから。
「夢や自分の意見を持つと言うことはね。素晴らしい側面もある代わりに、一人の独立した人間として個がなくなる恐怖と戦ったり他人とは違う摩擦を感じてしまうことの始まりでもあるんだよ」
「…う、そうなんだ…ちょっとこわいな」
「…怖いけど、それは誰だって早かれ遅かれ持つ感情なんだ。僕達もまた、他人とは遠く離れてはいるけど、端からみたら一つの星だからね」
僕は春ちゃんよりちょっとだけ自分の星の輝きに気が付くのが早くて。
春ちゃんは僕より遅かっただけなのかもしれない。
ひかるちゃんはどうだろうな。
彼女もまたこれから僕達とは違った時代を生きて、色んなものに触れあうレインボーな人生が待っているだろう。
その助けになりたい。
デネブのような傍観者の僕だったけど。
サザンクロスみたいな指針にもなってみたい。
せめて、それが今の僕の夢だよ、春ちゃん。
「周りと違っていること、他人と比べてしまうことに心がざわざわし始めるということは、自分もまた一つの星だということに気が付き始めている証だよ。けれど星と星が離れていても、ちゃんと輝いてさえいればいつか他の星と想像力という線で繋がって星座になれる。もし自分の輝きに自信が持てなくなった時は、いつでも天文台にいらっしゃい。こんなおじいさんでよければ話くらいは聞いてあげるよ」
…って、四歳くらいのひかるちゃんに言ってもまだ分からないかな。
「…それじゃあ、りょーじい」
「…何だい」
「りょうじいの星は、どこと繋がっているの?」
「…さあね、僕は星と言うよりそれを見守る傍観者だから」
それに相応しい人生を歩んできてしまったからねえ。
「…りょーじいもどこかで繋がっていると思うな。誰かの星と」
「…そっか」
星は見た人や地域によって意味も星座も想像力によって変わっていく。
僕もまだ、どこかを旅している途中の星なのかな。