プリキュア創作3

□20年と19年のさあほま
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「ハッピーニューイヤー!明けましておめでとう!はな!えみるちゃん!」

っと簡単ではあるけど二人に年始の挨拶のメールをした後に

「さてと…」

っと、お母さんの年末の特番やら紅白で失った時間を取り戻そうと私は勉強机に戻る。
今年の目標は、とりあえず一か月後に迫った高校受験に合格することである。
なりたい自分になるための旅は一生終わることはないんだろうけど。
今が人生の中でも佳境なのは忘れてはいけない。
やることを全て終えて、すっきりした気持ちで年始を迎える準備をするのは、別に来年でも良いのだ。
せめて大きな勝負を控えている今だけは、人生の中でももっとも油断しないようにしなきゃいけないだろう。
あー、でも去年は楽しかったよなあ。
クライアス社との決戦も終えて、新しいプリキュアのひかるちゃん達とも仲良くなれて
年を取る度に一年が早く感じてくると言うけど、去年一年は色んなことがあってものすごく長く感じれたと思う。
恐らくだけど、あの新しい自分になれて色んな人と出会えた一年以上に濃厚な年は、もしかしたらもう訪れないのかという不安さえ感じる。
女優をしている時は常に自分より新しくて若い子が来ないか心配してばかりだったけど
ピークを、旬を。
過ぎてしまったんじゃないかという寂しさが急に襲ってくる。
…けどいいよ、過去を振り返るのは性格上嫌いじゃない。
元々暗い性格の私だったし、後は過去の頑張りを懐かしんで、今の苦しみを軽減しながら適当に未来を生きていくような自分に戻れる一年でいいかな…
って、そんなこと考えると受験で足元をすくわれかねないから油断しないようにしないとね…さて、勉強勉強。好きなことやって弱い自分の姿を忘れないとね…

ぷるるるる、ぷるるるるる

っと、そんなことを考えていると電話が鳴る。

…はなかな、彼女も同じようなことを考えて寂しさがシンクロ出来ていたら嬉しいな、って思ったけど。

「あれ!?ほまれ?」

着信元は、モスクアにいるはずのほまれだった。

「…もしもし?」
「あ、さあや!ひさしぶりー!そっちはもう2020年になった?」
「…ああ、時差があるから…」

ほまれはまだ2019年の時間の中にいるんだ。不思議な感覚。
過去の栄光を懐かしんでたら、その過去の時間の人からメッセージが飛んでくるって、何だか怒られているようで少し肝が冷える。

「あ、年があけたばっかで忙しかったかな?」
「…ううん、新年早々ほまれの声が聞けてうれしい。っていうか海外に知り合いがいるからこそ出来る会話だし、珍しい体験できてるなあ、って思うよ」

…それにしてもほまれ。今は大会のシーズン中だし、向こうでも人気になって年末の予定も引っ張りだこになっているはずなのに。
年末の大切な時間を、私のために割いてくれたと言うの。
…嬉しい。
けどそれこそ過信しないようにしないとね。
はなにだって同じ会話した後かもしれないし
今年も、私はまだほまれにとっての特別になる資格はないと思ってる。
ちゃんとなりたい自分に胸を張ってなれたって言えるまで、私はまだほまれにとっての普通のトモダチでいたいと思ってる。
調子に、乗らないようにね。自分を殺して演技して…

「今年最後に話すの、さあやがいいな、って思って連絡しちゃった」
「…そう」
「…いつも私達の前をちょっと行って、見守ってくれていてありがとうね。私はさあやみたいな存在がいれるから輝けるんだよ。すごく特別な存在。来年もまたよろしくしてほしいな。すぐに2020年にいくから待っててね」
「…ほまれ…」
駄目、嬉しい言葉を貰って飛び跳ねたくなるけど。
私の来年は、もっと言うなら新学期はまだまだこれからなのだから。
「…私も、受験に受かった状態でちゃんとあなたに会いたいから、あなたも輝いて待っていてほしいな」
…ほまれはみんなから愛されて、少ししたらおいてけぼりにされていかれそうな儚さはあるんだけど。
「…うん、来年も一緒に二人羽織みたいな年にしようね」
先に行ったと思ったら待っていてくれて。私が先に年を明けたと思ったら後ろから声をかけてくれる彼女と。
またこの距離感で。
過去を懐かしく思いつつも今を一緒にいて、未来に向かって少しずつ歩みよれる二人でいれたらいいな。
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