プリキュア創作3

□お正月のさあユニ
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「うひゃー、久々のテレビのお仕事もないお正月〜部屋のおこたでみかん食べながらテレビでも見よ〜」

っと言いつつ今年はテレビのお仕事がない代わりに受験生なので勉強道具をある程度出しながら新春番組を流し見していた。
…知っている芸人さんや著名人はいるにはいるけど、やっぱり移り変わりの激しい世界で一年も離れていたら新しい顔の人がちらほら見えた。
…私も、お母さんの後を追っていたら別に医者を目指していなくともすぐに消えるような存在になっていたのかな。

「こにゃにゃちわ〜、薬師寺さあや。遊びにきたにゃーん」

っと、相変わらずタワーマンションのセキュリティを軽く突破したユニちゃんがお正月早々遊びにきてくれた。

「わ〜、いらっしゃいユニちゃん。どうぞおこたで温まってて〜」
「おじゃまするにゃ〜ん、ごろごろ」

っと、ユニちゃんが遊びにきてくれることを狙ってこたつにしてみたけど、どうやら効果てきめんみたいで嬉しい。

「…っていうかユニちゃん、年末からララちゃんのロケットで暮らしてるんじゃないの?」
またプルンスと小言の喧嘩でもしたんだろうか。

「ああ、いや。何だかプルンスもララも地球の行事に則って『おしょーがつ』みたいなことしだしてうるさくて逃げてきたにゃん。いつも昼寝してる神社もものすごい人が来て逃げる場所がここしかなかったにゃん」
「…ああ、そういうこと」

考えてみれば太陽暦の習慣がないユニちゃんとしてはお正月の概念が分からなくて当然である。ララちゃん達は郷に入れば郷に従えって感じで楽しんでるみたいだけど。
「…いいんじゃないかな、ユニちゃんはいつもお正月みたいなもんだし」
「…それってどういう意味にゃ?っていうか薬師寺さあやはそのみんながしてる『おしょーがつ』みたいなことしないの?」
「…まあうちはお母さんがまだまだテレビのお仕事忙しいし、親戚関連はまだ勘当扱いのところが多いからいざ私のテレビのお仕事なくなったら暇な正月になっちゃうかな」
暇って言うか受験生だから勉強してなきゃいけないんだけどね。
「…私があなたと知り合った時にはもうそのテレビのお仕事から卒業した後だって聞くけど…」
不意に、ユニちゃんは付けているテレビの方へと視線をやる。
「…こう言っちゃなんだけど、薬師寺さあやってあんまり人前に出るの得意そうに見えないにゃんね。神経は太い方だとは思うけど」
…一言余計である。
…けどユニちゃんにはやっぱりバレちゃうんだろうな。
…同じような演技のタイプだと思ってたし。
「…本当は苦手だよ。けど人の求めているものを察してそれを演じるのは残念ながら無駄に器用に出来ちゃってたかな。そこのところお母さんに見透かされてたからあんな扱い受けてたと思うけど」
ちょっと自虐の入ったことを言ってしまってユニちゃんが心配そうな眼差しを向けてきた。
…いけないいけない。この子の前だとほまれとはまた違った意味で本当の私を見せちゃうよな。
「…薬師寺さあやはまた、テレビの向こう側の。自分の演技を求めてくれる世界に戻りたいと思う?」
「…求められてそれに答えるのは嫌いじゃなかったけど…それって要は求められなくなったら終わっちゃうお仕事だからね。あの世界は若いってだけで才能だから、今は良いかもしれないけど大人になったら仕事なくなって私は何者でもない私になっていずれは誰からも望まれない存在になっていたと思う」
自分らしさを持つと言うことはそれはそれで傷つく生き方になってしまうと思うけど。
自分らしさを他人に求めていた私は。
誰かに求められなくなってしまった大人になった私は。
何でもいいから承認欲求がほしくなって。
好きでもない誰かと結婚とかしてたのだろうか。

嫌だな。

今の私からしてみれば反吐が出る人生だ。

勉強は辛い。
個性を持つのも隠しながら生きて大変だ。
ほまれへの片思いもいつまで続くか分からないけど。

「…私が薬師寺さあやと一緒にいてうるさいとも思わないで落ち着けるのって、孤独な自分を認めてあげてるからだと思うにゃん」

あなたといると。
昔の私も大切にしてあげれると思えるにゃん。

そう言ってくれる彼女と今こうしてお正月を迎えれているということは。

少なくとも、イフの大人の私より、一人じゃないって思えるんだ。

私はこたつから出て、改めてユニちゃんに挨拶する。

「今年もよろしくお願いします、ユニちゃん。惑星レインボー、元に戻ると良いね」
「…うん、元に戻ってもまた、遊びにきていいかにゃ?」

復讐に生きる為のブルーキャットでも
偶像のマオでもなく

「…トモダチとして」
「…こちらこそ」

彼女と過ごせるのはあと少ししかないかもしれないけど。
この瞬間を宝物にして、未来に進んで行こう。
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