プリキュア創作6

□親子のつながり
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 今日はアスパワワを医療に活用する技術の研究の為に患者さんを連れて専用のリハビリ施設まで車で移動する日だった。
 こう、本来なら患者さんをマンツーマンで自分の車に乗せて移動するなんてこと滅多にないんだけど、患者さんとは言えもう結構な知り合いになってるし、私個人もプライベートで仲良くしたい人物だったのでコミュニケーションがてら特例処置とさせてもらってる。
 ・・・まあこのアスパワワ療法自体、まだ研究段階の域に出ないから私も付き合わせてしまっている側面も強いからせめて移動くらいのお世話は義理を果たそうとも思えた。
 義理のお父さんになる人かもしれないしね。
「あ、SAで何か買っていきます?義父さん」
「・・・いや、いい。あと義父さんって呼び方は何度も言うがやめてくれ、先生。俺と彼女とははもう縁は切れてるってあんたなら分かってるだろ」
 ・・・ああ、いけない。つい、で言い間違えて済む問題でもないしね。そこは私がデリカシーにかけてたかしら。
「・・・でも改めて何て呼べば良いんだろう・・・」
「・・・そこはあくまで患者と医者の立場で接してくれよ。っていうか私情がはさみそうなら別の人に担当してもらえよ」
「まあこの研究してるの、私だけだし」
 もっと言うとアスパワワを大量に浴びたことで不死の病だったはずなのに何か知らないうちによくなっちゃった例、あなたしかいませんもんね。んでもってその場にたまたま近くにいた専門医も私だけだったし。
「まあ嫌な言い方をすれば消去法ですよ」
「・・・まあ、人生そんなもんかな」
 っと私よりも何回り・・・ってほどでもないんだよね。やはりあの人の実の父親だけあってか、想像通りあの年齢の娘のいる父親にしては結構若めな人。そんな人から出てくる『消去法こそ人生』の言葉の重みは、あとで私も噛みしめるくらい情念のこもったものに思えた。
 今は患者さんを運んで運転中だし、集中力は乱さないんだけどね。
「・・・にしても話は変わるが先生」
「はい」
 ・・・この人もちょっと話題をそらしたくなっただろうか。とりあえず視界に移った適当な話題を選んだって感じだ。これも消去法なんだろうか。
「運転、すっげー丁寧だよな。ハンドル持てば性格変わる人だと思ってた」
「私のことをなんだと思ってるんですか」
「いや・・・おとなしそうな顔して、得意分野ではめっちゃテンション上げる人に見えた。あと機械とか好きそう」
 まあ好きなんだけど、今は仕事してるしそこまではっちゃけませんよ。そもそも前にも誰かに言われた気がするな、こんなこと。私、そんな運転荒く見えるのかしら。
 ・・・って。
「あ」
「・・・あ?どうした?先生」
「いや、ちょっとうれしい発見が」
「え、なになに。何かレアな風景でも見えたの?どこどこ」
 っと子供みたいに外を見るこの人を見てつい笑みがこぼれてしまった。どうしよ、言った方がいいのかな。
 ・・・さっきの話からして言わない方が彼の為になるのかもしれない。彼の過去の経歴は確かに褒められるべきではない。絶縁した本当の理由は、当人達同士の間の話で部外者の私が野次馬根性で突っ込むべきことではないんだけれど。
 それを反省して、もう二度と彼女たちと会うまいとしている彼の今の姿勢自体は、私は嫌いではなかった。
 喉まででかかった言葉を飲み込んで、私は久しぶりに演技をする。
「・・・前にも似たようなこと言われたことあるんですよ。私、ハンドル持てば暴走するような人に見えたけど、意外と運転うまいじゃんって」
「へえ、俺と似たようなこと考える人もいるもんだな」
「で、ほとんど同じ返し方、私もしちゃってデジャビュでしたね。っていうかネタかぶりですよこれ。大丈夫でしょうか」
「・・・何が大丈夫かよく分からないけど・・・」
 彼は微笑む。そのやれやれといった表情は、やっぱりどことなく彼女との血のつながりを感じさせるものがあった。
「変な人だな、先生も」
「・・・よく言われますね」
 いつか会わせてあげたいけど、それはとりあえずこの人の身体と心が回復してからゆっくり考えればいいことだろう。私は今は医者としてそれをサポートするだけだ。
 そして願わくば、だけど。
「いつか消去法じゃなくて、あなたが今やるべきこと!って思ったことをすこやかな身体で出来る日が来るといいですね」
「・・・来るかな、そんな日」
「来ますよ」
 あの子だって、怪我から立ち直れたんだから。
 そこも血がつながっててほしいかな。
「あ、目的地が見えてきましたよー」
「・・・結局何を発見したんだ、先生は」
 ・・・まあそれはいつかおいおい
 本当に義父さんって言える日がきたら告白するとしよう。
 親子って、発想似るんだな、って。

「さー!アスパワワ療法の研究!がんばりましょーねー!」
「・・・何だかモルモットにされた気分だ・・・」
「うーん、モルモットって言うよりも?ハムスター?」
「違いが分からん」

 ・・・ってこの人こそ知るよしもないか。
 ・・・やっぱり当時、彼女があのハムスターさん好きになっちゃったの、ちょっとお父さんに似てたから、かな?
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