プリキュア創作6

□トロプリ6話あとの百合子とまなつ
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「生徒会長―誤字直してきましたよー」
「はいはい」
 結局あのあと部活申請書を受け取ったはいいものの、誤字を見つけてしまったので夏海まなつには書類の再提出を命じていた。何だかきれいに収まらないのがなんというかこの人達らしいと言うべきだろうか。
「こういう細かい言葉のミスで人生台無しにすることもありますからね。社会に出た時にも注意してください」
「えー、何か会社みたーい」
「会社というより社会に出た時の練習をするのが学校です。覚えておいてください・・・って」
 この申請書、よく見ると。
「・・・あなた、ここの修正箇所だけ別の人に書いてもらいましたね。字が違います」
「えー!そこまで分かっちゃうんですかー!いや・・・漢字分からなくて・・・」
 ・・・まあそこまで詳しく見る必要もないでしょう。ああは言いつつこれくらいのズルというか誰かを頼ることも学生の身分なら大切ですしね。
 ・・・かつての私達が出来なかったことでもある。
「・・・そもそもあなたの書く字。なんとなく特徴的だから分かっちゃうんですよね。汚くはないんですけど、字から性格も出ると言いますしこういう正式に提出する書類は誤字以外にも気をつけた方がいいですよ」
「えー!じゃあ私の性格どんなんですかー?」
 ・・・いや、そこを話を広げられても困るんですけど。
「まあ、まだ世間のことを知らない子供っていいますか、かわいいっていうか」
「がーん!いや?これはもしや褒められているのでは?」
「褒めてませんよ」
 どんだけポジティブなんですか、あなたは。
「そしてここの修正箇所だけ代筆した人・・・この人は」
 ・・・相変わらず、粗暴な見た目に反して性格は繊細そうなんだから。
 ・・・ここは一応、年長者、『部長』の責任として目は通して推敲したってことでしょうか。
 ・・・いいな、彼女と部活、か。
「会長―?何ぼーっとしてるんです?そいで?受理してくれるんですかー?」
「・・・は」
 いけない、私としたことが油断してましたね。
「いいでしょう。改めましてですけど『トロピカル部』、部活として認めましょう。しかし重なりますけど以降も部活動としてふさわしい活動をしていかないと部活として認めませんからね」
「はーい、今やるべきことがんばりまーす」
 ・・・ってだからそれがよく分かってないんですけど、まあいいでしょう。
「・・・なんやかんやいってあのアンタッチャブルな屋上の小屋の清掃もしてくれましたし、OBの先輩方の私物も整理することができましたからね。いづれは私の時代の生徒会でもやろうとは思ってましたけど、あなたたちが『今やるべきこと』と称してやってくれたのはありがたかったです。私も後回しにしてましたからね」
「ふえー、会長も後回しにすること、あるんですね」
「ありますよ、これでも人間ですからね」
 ・・・それこそこのまま大人になって社会に出ていいのかって思うことが沢山です。
 勉強やこれからのこと
 ・・・あのOBの先輩方みたいに
「・・・中学の頃の青春を振り返った時に、ちゃんとキラキラできる自分でいれるかって、今は胸を張って言えるか分かりませんしね」
「ふーん」
 ・・・って
「は!」
 ・・・いけない、また私ったら油断を。あー何故かこの子の前だと余計なことばかり言ってしまう気がする。
「・・・会長が私達の部活のこと、認めてくれたのって」
「・・・ごくり」
 ・・・って自分でつばを飲み込む音言うの、何か変ですね。
「OBの先輩に言われてしかたなく認めた、っとか思ってたんですけどちゃんと理由があったんですねー。いやーよかったよかった。会長がOBの先輩いなかったら認めてくれないとかじゃなくて」
「・・・私のことを何だと思ってるんですか・・・それじゃあまるで大人の圧力に負けたみたいじゃないですか」
「あ、そういうとこ、何かあすか先輩っぽいですよねー」
「ぎく!」
 ・・・ってギクって言うのも始めてだ。いかんいかん、いつもの会長の顔に戻れ、百合子。
「ま、まあまあまあ、中学三年生ともなるともう半分大人みたいなものですからね。不当なことをしている大人にはちゃんと反撃できるよう、あなたもそんな中学三年生になってくださいね」
「えー、なれるかなー、私そんなかっこいい三年生に」
「なるなれないに関係なく、時間はすぐに過ぎ去りますからね。これだけは真実です」
 ・・・ってそういう私はさっきからつまらないことを年下に言う、なりたくない大人側になってしまったのかもしれない。
 それこそ夏海まなつくらいの年の私達が今の私を見た時に
 彼女は、当時の私は、今の私に何て声をかけるんでしょうね。
「にしし」
 っとそんな私の苦悶とは裏腹に、何だかにやにやしている夏海まなつ。
「・・・何ですか、もう申請書は受理したんですから用がないなら部活に戻りなさい」
「はーい、会長もこの学校で『今やるべきこと!』頑張ってくださいね!じゃ!あ、あそこのお花きれいですね!」
 っと話題がぴょんぴょん飛ぶ子である。生徒会室の隅に飾ってある花瓶。そこには
「OBの人達が今日のお礼にと花を寄贈してくれましたね。綺麗だから飾ってあります。あとでトロピカル部にも持って行かせましょう」
「うーん、いいですよ。ここに飾っててください。会長の雰囲気に合ってて、トロピかってる花ですね!キラキラしてる!」
 ・・・私がキラキラ、ですか。OBの人達も適当に買ってきてはくれたと思うんですけど。
「・・・ま、お世辞を言うのを覚えるのも大人になるために必要なことですね」
「えー、お世辞じゃないですよー。本当のことです」
 会長もちゃんと中学生らしくかわいいとこ
 みつけてうれしいですねー
 そう笑う夏海まなつを見て、また私は。
「あーもう!私が申請書取り下げる前に早く部活に戻りなさい!目上のの機嫌をちゃんと間をよくとることも勉強です!」
「ひゃー!すいませーん!しつれいしましたー!」
 油断しそうになったので追い返す。
 ・・・今はまだ、滝沢あすかと不仲で良かったなって思ってしまう。申請書を出しについでにこの部屋に部長名義でこられたら、この狼狽した私を見られてしまったかもですしね。
「今やるべきこと、ですか」
 先輩達からいただいた花を見て、なんとなくつぶやく。
 ・・・今はまだ、この距離感でいいんでしょうかね。
 ・・・私もまだ、中学生だからわからない。
 大人になって、このモヤモヤをOBの先輩達みたいに彼女と笑い合える日が来るのだろうか。
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