プリキュア創作6

□輝木ほまれ誕生日SS:2018−3
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 4月9日。もうこの学校で祝われることがないと思っていた私の誕生日を、『薬師寺さあや』さんって隣のクラスの普通科の子に祝ってもらえた次の日。
「・・・薬師寺さんに、昨日のお礼言えるかな・・・なんちって」
 っとか言いつつ学校はめんどくさいって気持ちとはまた別腹なので普通に遅刻して訪れてしまった私。薬師寺さん、見た目通り真面目な委員長っぽいからこんな時間に登校しても会える訳ないんだけどね。
「・・・会ったとしても、うれしすぎて昨日のことなんてお礼言えば分からないし・・・」
 私はこの学校では今は不良として周りから見られている。
 きっと薬師寺さんと仲良くしていたら回りのイメージも悪くなるだろうし、彼女の為にもならないから引いていた方がいいんだろう。
 ・・・私もちゃんとしたトモダチ付き合い、もうちゃんとできないだろうからそんな見え見えな失敗をする自分が怖い、ってのもある。
 きっと薬師寺さんを傷つけてしまう。それが嫌。だったら独りでいる方が寂しくはあるけど楽ではある。
 ・・・このまま大人になっていいものやらって自分でも思うけど、
 私は自分の足を見る。
 お医者さんにはもう本当なら治っているはずと言われている、この足首。
「多分これと一緒で、本当は前みたいに戻りたいとは思うけど、挑戦してまた失敗するのが嫌・・・って気持ちが強いんだと思う。だったらこのままがいい・・・」
 なりたい自分になりたい。
 今の私にそれを言える権利、あるのかな。
 ・・・おじいちゃんに昨日たまたま相談したら、未熟な自分で失敗し合えても許し合える関係が、トモダチ、って言うみたいなんだけど。
 私はその未熟な自分を他人に見せるのが色んな理由をつけても嫌になってしまったんだと思う。変に大人の世界に足を突っ込み過ぎたってのもあるのかな?。
 ・・・勝手な妄想ではあるんだけど、薬師寺れいらの娘で女優活動をしている薬師寺さんも、きっと大人の世界に在籍して『失敗した時に大きいダメージ』を受けることを知っている子だとは思う。
 中学生らしい失敗を許せるトモダチがほしい。
 でも、痛いのは嫌だ。
 そんな相反する気持ちで心がどっちに行って良いのか分からないこの状況、薬師寺さんも一緒だったら嬉しいなって思うけど。
「・・・でも彼女、ちゃんとしてそうでもあるしやっぱりこんなことで悩んでるの、私だけだろうなあ」
 そんなことを思いつつ、ホームルーム普通に始まっている時間にゆっくり社長出勤していると、職員室あたりから私みたいに遅れて登校してくる子がいた。
 ・・・薬師寺さん・・・?じゃないよね。誰だろう、初めて見る子だな。転校生?まあ4月の時期だしいるんだろうな。
「はわー・・・背高い・・・足長い・・・きれー・・・」
「ん」
 何だろう、じろじろ見てきて、私のことそんなに珍しいのかな。まあ転校初日だし見るものみんな珍しいだろうし、そもそも私も変な時間に登校してきて向こうも何だろこいつって思って見てるんだろうけど。
 私はいけないと思いつつも、また眼つけてるって因縁つけられてしまうかもしれないから関わらないようにしてあげようと思ってたけど
 つい、その子の変な前髪に目が行ってしまった。
「ぷ」
 って眼つけるどころか笑ってしまった。何、あの前髪。かわいいじゃん。イケてる。中々ないセンスでいいなって思ってたけど。
「ううー」
 あ、隠しちゃった。良かったのに、ちゃんと言ってあげた方が良いのかな。イケてるって、どうしよう、初対面の子にこんなこと言ったら失礼なのかな?
 もっと話してみようかな、この子も友達になれるかなって一瞬そう思ってしまったけど。
 どうせうまくいかない。
 失敗が怖い。
 薬師寺さんと同じになる。
 関わるな。
 そう、心の内側から、とげとげした感情がまた出てきそうになる。
 やばい、抑えなきゃって思ってたら、職員室の後ろのドアから梅橋先生の声が聞こえる。

「おい、輝木ほまれ。もうホームルーム終わってるぞ。今来たのか?」

 ・・・正直助かった。今またネガりそうだった私に声をかけてくれたことで、これでまた不良の輝木ほまれに戻れる。
 普通の友達はできないんだろうなってバリアをまた張ることができて、今みたいに普通に戻りたいけど怖い葛藤から、逃れることができる。
 ・・・ありがとう、梅橋先生。
 でもいつも迷惑かけて、ごめんなさい。

「・・・すいません」

 っと明らかにやさぐれた感じを演出してみて言ってみる。これで今の変な前髪の女の子も、私のこと怖い人だって思ってもう近づいてこないよね。
 ・・・さよなら、変な前髪の子。

「・・・美人に、笑われた・・・」

 びっ!

 っとまた声を出してしまいそうになる。
 ・・・び、美人?今のやりとりを見てまで私のことそう思うの?うーん、他人から見られる私の印象って怖がられたくない時は怖がられる癖に、怖さを演出しようと思ったらそう受け取られないとか難しいよなあ、やっぱり。
 それにしても美人って、そうかな?今日日そんなこと言う子いる?
 私は振り返って
『君の前髪も、めっちゃイケてる!』
 って言ってあげた方がいいのかな。
 自分が美人だと思ってないのと一緒で、あの子も自分の前髪切るの失敗したとかどうとかで自分のことそんなに好きじゃないって思ってるかもしれないけど。
 私から見たら、すっごいいいセンスしてるよ、自信もって。
 私がそう言ってほしい言葉を、他人に言ってあげることができるかな。
 昨日の薬師寺さんに言えなかったことを、今ここであの子に言う?

 なりたい自分になれる場所は、今ここなのかな。

 私は反転しようか迷う。足首に力を入れようとするけど

 ズキ!

 っと、今はあるはずもない痛みを想像上で感じてしまって。

 スタスタスタ

 っとまた声をかけることもできないで職員室の前を通り過ぎてしまった。
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