プリキュア創作6

□星奈ひかる誕生日SS:2036
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「ははははははは!よく来たな!星奈ひかる!ここがノットレイの新しい母星!そしてお前の墓場だ!」
「あはは、私達もう戦ってないから墓場じゃないよね」
 ララと出会って一年くらい。私達人類はいきなりフワのキラやばなワープ能力を手に入れて戸惑ったけど、今はこうして宇宙の好きな場所へと巡れる世の中になってくれた。
 私は頃合いが落ち着いたころに、挨拶しにこうようと思ってた彼らの星へとやってきた。
 中学生の頃の私達に、多様性を教えてくれたノットレイの新しい星。
「テンジョウさんとガルオウガにも会いたいよね。彼らはどこかな?カッパード」
 そしてまず私を出迎えてくれたのも、これまた15年前と同じカッパードだった。
「ふん、ことの重大性が分かってないな、星奈ひかるよ。ここがお前の『墓場』だという意味に変わりはないんだぞ」
 がちゃり、っとまだそれ持ってたんだ、って懐かしいカッパードの武器が出てくる。そうそう、何度かそれパワーアップしてたよねえ。
「さあ、もう一度殺し合おう、星奈ひかる。キュアスター、俺達の会話はそれで十分なはずだ」
「…えっと、宇宙の偉い人になったララから聞いてるんだけど、ノットレイ達はこの15年で宇宙警察の定めた罰則を真面目に守って罪滅ぼしを終えたからこの星に住むことを許された…んだよね?私達が戦う意味、もうなくない?」
「そりゃプリキュアとノットレイの立場としてはそうだな。だが星奈ひかると私との関係は変わってないつもりだ」
 …確かに15年ぶりにカッパードを見て、相変わらずというかやっぱり宇宙人だから人間とは寿命が違っていて彼の姿は全然変わってなかった。いいなあ、カッパードは若いままで。くらいの感覚何だけど、そう…だよね。
 カッパードから見た私って
「…そんなに弱くなっちゃったように見えて、心配しちゃった?」
「…まあ見た目こそ変わったが、かつてのうざったいほどのキラキラしてやばいお前のオーラはなくなっていたよな」
 …それこそこれが、カッパード流の私の応援なのかもしれない。彼は彼なりに、またプリキュアとして戦えばかつての私に戻ってくれると思ったのかな?
 私は相変わらず武器を向けられながらも仰向けになって空を見上げる。
 綺麗。ノットレイ達はこの当たり前の平和な空をほしかっただけなんだよね、って思いつつ。
「私は、弱い大人になっちゃったかな」
「…かつて私がお前と初めて相対した15年前」
 武器は構えつつもカッパードは昔話をしてくれた。なんやかんや、やっぱり私達の会話ってこれくらいの緊張感があった方がいいよね。
「…私はこの宇宙で自分と似た存在と出会ったと思って心躍った。単身で宇宙に飛び出しフワを守る為に戦うお前の姿は昔の自分と重なっていた。こいつなら、私の真の戦友になれるのではないかと立場は違えど戦いの中で分かり合えると思った。しかし」
 私はカッパードの思惑とは違って、この宇宙にはキラキラしたものしかないと思っていて
 中にはノットレイみたいな生まれながらの不幸に生き方を歪めなければいけない人たちがいたというのを、想像してなかった。
 それが昔のカッパードが私を許せなかった理由。
「…お前が私達のような弱い存在がこの宇宙にいることを想像できないのならば、私自らお前たちを倒して弱者にすることで分からせてやりたかった。世の中自分の想像以上に残酷なものは存在する。自分はただ、たまたまその残酷さから身を守られている幸運な星の元に生まれているだけだ。それを自覚できないのであれば、私が星奈ひかる、お前にとっての残酷な存在になってやろうと思った。だがお前は」
 …私も15年前を振り返る。何度も何度もカッパードはやってきてそれをわからせようと戦ってきたはいいものの。
「…私達、全部それに勝っちゃたんだよねえ」
「全部じゃないぞ。惑星クマリンで一度は勝った」
「ああ、そうだっけ」
「目は腐っていてもそういうところは相変わらずだな、星奈ひかる」
 そういうカッパードはちょっと嬉しそうな顔に戻ったけど、すぐにまた険しい顔に戻る。
「お前に世の中残酷だと分からせて、自分も弱い生き物の一人なんだとわきまえさせるのは私の役目だと思っていた。それがなんだ、15年ぶりにあってみたらまるで私以外の存在に『残酷さ』を分からせられた顔をして、むかつく。だったらもう一度私と勝負しろ。重ねて言うがここがお前の『墓場』だ」
「…『墓場』、ね」
 その言葉を聞いて私は改めて自分がいつの間にか昔のキラやばが少なくなってカッパードを失望させてしまった訳を考える。多分、自分の中で浮かんでいた気持ちを誰でもない、15年前の自分を一番よく知っていただろう彼に言葉で伝えることで初めて気づいたのかもしれない。
 カッパードに気づかされた、って意味では彼の長きに渡る復讐は今ここで決着がついてしまったのかもしれない。
「人間の寿命は、短い」
「…」
「私は年を重ねるにつれて自分の『限界』を思い知らされたかな。私はもっと色んなことをしてみたいって思ってるけど、人間の身体が、老いが、才能が全部をそうさせてくれないの。カッパードはここを私の『墓場』だと言ってくれたけど、寿命の違う私達ならいつかどこかで死に別れることはあると思う」
 それは今ここで戦って倒されるのと、どんどん弱くなって自分の身体が若いままなのに勝手に死なれてしまうのとでは
 カッパードの目線からしたらどっちの墓場がいいというのならせめてかつての私のキラキラを確認できる方がいいだろう。
「…私もね、大人になって。宇宙飛行士になる立場になって分かってきたことあるの。自分より若い立場の後輩が入ってきてどんなにキラキラした夢を語っていたとしても『あ、この子は何となく無理そうだな』って思ってしまう子はいる。その子に対して『君の才能じゃ無理だからやめておいた方がいいよ』『辛い思いする前にやめておいた方がいい』『私があえて辛くあたって、辞めさせてあげたほうが優しさなのかな』って言いたくなってしまう、カッパードの気持ち。今もそうなんでしょ」
 カッパードからしてみたら、今の私は世界の残酷さに負けてどんどん弱くなってきている一方だ。だったらそうなる前に、せめてもの優しさで引導を渡してあげる。
「…やっと、当時のあなたの気持ち、分かる大人になったかな。こういう誰かを嫌だな、攻撃したいなって気持ちになる時って、大抵心の中の自分の鏡を見ている気持ちになるんだね。カッパードも、私が嫌いって言うより私の心の中の鏡に映った弱い自分を見ているようでそれに攻撃してきてたんだね」
「ふん」
 つー、っと私の頬をカッパードの武器が通過する。
「だからお前はイライラするんだよ。私が教える前に勝手に自分で答えを出す。でもまあいい、これで私達の15年…いや、16年におよぶ戦いも幕を迎えたな」
 あ、そう言えば今日は太陽暦で言えば私の誕生日か。いや、この宇宙ってどこにいても太陽暦が適用するスターパレスの神様達が作った世界だから関係ないか、って今更なことを思いつつ。
「それじゃあせめて最期の誕生日プレゼントとしてこれをお前にプレゼントしよう。本当は死に場所を与えてやるつもりだったが、今のお前にそれはのちのち勝手に訪れるものになったからわざわざ私が施してやる義理もないだろ。ほい」
 っとカッパードはある紙を差し出してくる。そこに書かれていたのは…
「え?ユーマの居場所候補を記した座標!えええ!ナニコレナニコレ!」
 私とララがずっと探しても見つからなかったのに!
「え!ちょ!どうゆうこと!カッパード!いやこの武器じゃまだな、ちょっとどかしてよ!あ!分かった!ガルオウガって確かワープできたよね?ワープしまくって探してくれたとか?それとも蛇使い座のプリンセスさんがこっそり教えてくれたとか?いやいやあの人がそんなに優しい訳ないか!カッパードよりスパルタだもんね!あーーーーーいやでも案外あの人も抜けてるとこあるから誕生日プレゼントだからってことでヒントくれたのかな?キラやば~!やっぱり持つべきものは神様だよねえ」
「っておい!!!」
 っとカッパードはそれこそ15年…じゃなくって16年前と同じようなめんどくさいものを見る目で私に対応する。
「これは蛇使い座のプリンセスの誕生日プレゼントじゃなくて!私のだぞ!まったく!失礼なやつめ」
「あわわ、ごめんなさい、カッパード。でもどうして?私達が探しても探しても見つからなくて、生きてるうちは会えないんだろうなってあきらめかけていたユーマの情報を、どうしてあなたが」
 ふふふ、っとカッパードは不敵に笑う。
「怖かろう。宇宙にはまだまだお前の知らないことが沢山あるのだ。勝手に分かった気になるなよ。お前にとっての『分からないもの』の象徴はこの私だということ、改めて分かっただぞ?あんなに腐っていた大人の目になっていたのに、すっかり昔みたいに戻りおって」
「…あ」
 もしかしてカッパード。
 その為に隠しててくれたのかな。
 …嬉しい。
 …っとそれはまあ置いておくとして
「早くその紙!ちょうだい!」
「…ふん、私に勝ったらな」
「えー!誕生日プレゼントじゃなかったのー16年分の!」
「うるさい!それを言ったらお前こそ私に16年分の誕生日プレゼント渡してないだろ!」
 …それじゃあこう言っちゃなんだけど
「…やっぱり戦うしかないっぽいね、私達」
「応ともさ!」
 私は16年前に戻ったつもりで歌う。

 きらめく星の力で
 憧れの私!もう一度描くよ!
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