プリキュア創作6

□みのりとローラのトレーニング
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「ねーねー、みのり。今その読んでいる本も『想像力を鍛える』ために読んでるの?」
「…うーん、そう言われればそうなんだけど、普通に日課だから読んでるとこもある」
 ちょうど部室には私とみのりだけ。せっかくだからこの間くるるんの言葉を分かることのできた『想像力』を鍛えるコツってやつをみのりから伝授してもらおうかしらね。
「…想像力を鍛える方法…?それは」
「それはそれは?やっぱり色んな本を読むとか?」
「…やっぱり筋肉かな?」
「…へ、筋肉?」
「うん、筋肉。やっぱり想像力を鍛える…つまり読書をしたり自分で創作するにあたって一番大事になってくるのは自分の体力がちゃんとあることなの。本を読むのも体力がいるし、プロの作家さんともなると自分の一日あたりにかける文字数とか体調管理で一定の進行を保たなければいけないの。やはり筋肉は正義」
「ちょっと、ちょっと待って!」
 えーっと、何だか『想像力を鍛える』話から『いい話を作るには?』にすり替わってないかしら?みのりって私達のチームの頭脳労働してくれるとこあるけど、たまにズレたとこに突っ走るとこあるわよね。
 こ、このチームのまとも役は私がしっかりしてないと
「…みのりはそう言うけど、この間の走りこみだって全然体力なかったじゃない」
「…昔、本を書いている時は走って体力つけてたよ。今は書いてない。そのブランクかな」
「…ふーん」
 私としてはこう、もっとインテリ故のアイディアを期待してたんだけど。
「やっぱりなんやかんやいってどこの分野も自分の身体が健康だから健全な活動が出来るってことかしら?想像力もまずは自分がしっかりしてからってこと?」
「そうそう。何事も基礎の土台がちゃんとしてるのが大事なの。いくら面白い話や奇抜なアイディアを持っていたとしても、基本の物語構成を作れる力とか、誤字脱字はしないとか、作家としての基礎ステータスが揃ってないと奇をてがった変化球はできないからね」
「あー、そう言えば昨日の『星奈ひかる誕生日SS:2036』でも設定間違えたまま書いてたしね、そういうのダメってこと」
「…そう、ああいうのはダメ…私が書いた訳じゃないんだけどね」
 えっと、また話がズレてきたわよね。私が最終的に知りたいのは。
「私もくるるんが何を言っているのか、想像力を鍛えようとは思うんだけど、そのためには自分自身を鍛えることが大切だってこと?」
「…うん。自分の考えや健康な身体があってこそ、相手の気持ちがちゃんと分かるの。全部に同意ばかりしててはダメ。それでいて『相手の気持ちになってみる』も両立しなきゃいけないの…例えばだけどさ、物語の主人公がすっごい苦しい場面を乗り越えるシーンとかあるけど、ああいうのって自分のリアルでも同じように『辛く苦しい場面を乗り越えた』経験が自分にもあるとより物語の解像度が上がるの。自分の中の引き出しが沢山あればあるほど、物語の登場人物がどれだけ頑張っているかも、自分にはできないことも頑張っているって感動がひとしおになるのよ」
 そう物語について語るみのりはなんだか
「…あなた、出会った当初はポーカーフェイスって感じだったけど、今はこうして普通に話せてるじゃない。これも想像力を広げられた結果ってことかしら」
「………」
 あら、黙っちゃったわね。私何か失礼なこと言ったかしら?
 って思ったけどどうやらみのりはちょっと長考してから眼鏡を外して目のマッサージをしてる。私は勝手に怒っているっとか思ってたけど、みのりのこの癖は何か思い出しながら言葉を選んでいる仕草だ。
 …これも私の想像力が鍛えられたから、分かったことなのかしら?
「…最初、私もローラが考えてるように、自分の中の世界に閉じこもるのが目的で創作の世界に入ったとこ、あるよ。外の世界で自分がどう表現するより、心の中で感じたことを表現することの方が、私のリアルだった」
「あら、そうなの」
「…でもさっきも言ったみたいに、創作を極めようとすればするほど、自分の体力の限界を上げるためにトレーニングが必要になってくる。自分の限界を上げて壊して再生するトレーニングをしないと面白いを得られないのは、運動部と一緒なの。主人公の辛い気持ちの再現度を上げるためにね。あと色んな人物の気持ちを知るためにも、自分以外の考えに触れて他者からの『面白』を得ていく必要がある。一人で部屋の中で生きるための創作だったのに、いつの間にか外に出て体力つくりもしてるし、人と関わろうとしていく…全然真逆のことをしていたわね」
 …まあ結局想像力を鍛える方法って。
「自分が嫌だ嫌だって思うことでも、自分をよくする為に利用するのが大切だってことね」
「…まあトレーニングっていうくらいだから負荷がないとね。想像力のトレーニングともなると、自分と違う考えの人のことを嫌だ嫌だだと思いつつも理解しようとすることが、ちょうどいいストレスになれるのかな?」
 それは何だか女王になる為にも大切なことだとは思うわね。自分が嫌だって思うことでも、勉強しないと立派な指導者にはなれないもの。じゃないと民の心が分からない女王になってしまう。
「…けどローラはくるるんの言ってること、今は分からなかったけどね」
 っとみのりが揚げ足を取ってくる。私には足はないんだけども。
「何よもー!あんたも大概性格悪いわよね」
「…そうそう、私はクールで冷静な先輩じゃないの。裏では結構色んなこと、考えてるから」
「それは知ってる」
「…ローラも」
 カチャ、っと眼鏡をかけなおして、みのりは微笑む。
 うん、やっぱりこの子、笑ってる顔の方が似合うわよね。
「想像力、ついてきたんじゃない?」
「ま、一応女王志望だからね!」
 せっかくだから私もみのりの読んでいる本、参考に読んでみて価値観でも広めてみようかしら。
「で、あんたさっきから何の本読んでるの?」
「こっちはコラボダンスパーティの時に知り合った花寺さんに紹介してもらった『犬の気持ちが分かる本』、こっちの本は花寺さんの知り合いの星奈さんって人が紹介してくれた『宇宙人の気持ちが分かる本』、こっちの知り合いはそれまた星奈さんの知り合いの野乃さんが紹介してくれた『赤ちゃんが何言ってるのか分かる本』、そしてこれがそのまた知り合いの…」
「だーーーーーー!知り合いの知り合い!多すぎい!」
 …やっぱり想像力を手っ取り早く鍛える方法って。
 友達を増やすことなのかもね。
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