プリキュア創作7

□はなの生徒会選挙
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 …あ、何か駄目だ、今の私。多分これから何やっても上手くいかない雰囲気がする。
 こう、頭の中で出てくるヤル気パワーの源であるドーパミンだかそこらへんの成分が全然出てない気がする。最近睡眠時間を削り過ぎて勉強してしまっているせいだろうか。マキ先生との研修の中で私の失敗だと思うことが連続し過ぎて自分を責めることが増えて耐えられなくなってきたのか。
 表側の私としては『まだ大丈夫』と思いつつも綱渡りをしている気分になっている。これを続けていればいつか綱から落ちてしまうだろう。これからお医者さんを目指すにあたって…ううん、かつてのほまれやアンリ君見たいないつの間にか怪我をしてしまっている患者さんを目の当たりにしてきた私にとってこの『危ないかも』というサインを事前に自覚して休憩することはこれから人生生きていく上で大切なスキルなのかもしれない。
 ってなことで一旦勉強は中断。ノルマは一応達成している訳だし、ここは快調だった時の自分が作ってくれた貯金に素直に甘えるとしよう。少しだけあるこの時間の余裕で、それとなく自覚しているどこかの心の過労を癒やすとしよう。
 …何をする?寝る?ご飯を食べる?読書する?カレー作る?ドリルの手入れする?ほまれとHする?
 うーん、どれも捨てがたいけど(ほまれは確か今高校の修学旅行だった気がする。残念)、今日は…

「はなと通話しーよおっと!ぽちっとな!」

 っとキュアパッドの通話機能に手を付けるんだけど。

 ぴるるるる


 っと先に鳴っていたのは私のキュアパッドだった。あれ?もしかしてこの発信元、今私がかけようとした…

「しもしも?はな?どうしたの?」
「あ…さあや…今時間大丈夫かな…少し相談したいことがあって」
「ほう…」

 今まさに私がしようと思ってたんだけど、これがシンクロニシティってやつだろうか。はなも何か悩み事があったのかしら。ふふ…何やかんや似たもの同士だよね。
「いいよ、ちょうど今私もはなと話したいタイミングだったの。グッドタイミング」
「そう…相変わらずさあやは社交辞令が上手いね~」
 いやほんとなんだけど。でもタッチの差ではなの方が先に連絡してくれたからここは順番通りにいくとしよう。

「その…実はね…もうすぐ私の高校で生徒会選挙があるんだけど」
「ほう、そういう時期よね~」
「私、立候補することになっちゃった…」
「ええ!?なっちゃった?」
 その言い方だと…
「みんなや前生徒会長が推薦してくれたんだ。私が生徒会長の学校を見てみたいって」
「…なるほどね、はなのみんなを元気にするリーダーシップは魅力的だもんね。人を見る目あるじゃない、高校のみんな」
 少し、気がかりなことがあるとするなら。
「でもその様子だとはな自身はあんまり乗り気じゃないみたいだね。どうしたの?確か中学三年生の時は私の次に学級委員も立派にやってたじゃない」
 これは言って良いのかな、って迷うけど、プリキュアとして活動していたころも実質リーダーとしてみんなをまとめてくれてたしね。プリキュアにチームリーダーがいるのか実はよく分かってないけど、強いて言うなら私達は全員チアリーダーだしね。
「…中三の時はさあや達が色々サポートしてくれたからだよ…」
「でもそっちにもはなを助けてくれる人、いっぱいいるでしょ?」
 はなと同じ高校に進んだエリちゃんともたまに連絡を取り合ってはなをよろしくね、ってお話しているつもりではいる。一応はながまた別の環境でいじめられてないか、それとなく気にしてすぐに駆けつけるつもりではいたけどエリちゃんから聞く範囲だけなら元気に高校デビューはとっくに成功させていると思っている。
「今…私のクラスとか応援部の中では…ね。ほら、私の高校、結構なマンモス高校だから、シャインヒル学園中等部では応援部に所属してたけど、今は別のとこにいてまだ再会してない当時の人達とか、まだいるにはいるんだよね」
「あー…」
 そっか、はなを前の学校でいじめていた人達と、同じ高校に進学してしまった状況でもあるんだよね、今は。エリちゃんとか同じ応援部にまた入部して、そこで改めてお話しして当時の決着をちゃんと付けた人はいるんだろうけど。
「中にはまた、私の空元気を『かっこつけ』『正義感ぶってる』『演技っぽい』を言う人…生徒会長になっても言う人いるのかな…」
「まあ!はなのあの元気をそんな風に言う人いるの!許せない!」
 ってこれは当時、中学二年生の時にはながカミングアウトしてくれた時に言ってくれたことを繰り返しているだけなのかもしれないけど、はなが自信をなくしそうになったら何度でも言ってあげよう。
「はなの応援は人の心に寄り添ってくれる素晴らしいものだよ!それを悪く言う人がいてもその何倍も私がはなを応援する!だって私も、はなに応援してもらって自分を変えることができたんだから!」
「私がさあやを応援したのって…」
「そうね、一番最初ははながラヴェニール学園に転校してきた初日だったかな。もらった台本や望まれている演技しかできない、空っぽの私にははなの元気な自己紹介は私もああいう風になってみたい、お友達になりたいって思える子だったんだよ」
「あはは…それこそ空元気だったんだけどね、そのあとすぐに落ち込むこともあったし」
「だとしたら全人類皆空元気!本当に元気な人なんていないよ!」
「規模がでかい」
「それに私はその時は一応はプロの女優だったんだよ。その私が『演技っぽくない』っていうんだからはなの空元気は演技じゃなくて本当の元気だよ」
 …って女優を辞めた今の私が言うのもなんだけど。じゃあお医者さんっぽく言ってみよう。
「今だって、私勉強や研修で超落ち込んでた時に、はなと連絡してみようって思ってたところだもん。このままだと多分鬱になっちゃうから、はなと話して脳内で元気が出てくる『はな成分』を摂取しようと思ってたんだよ」
「はな成分って何なの…変な成分作らないでね…」
「じゃあ言い方を変えるならはなと話すとアスパワワいっぱい貰える…かな?」
 そうそう、アスパワワって謎の力、今マキ先生とも研究してるけど、あれ本格的に医療に転用できそうなのよね。いつかお医者さんとしてもはなの力を借りる日は、意外とすぐにくるのかもしれない。

「とにかく今の私もはなにいつの間にか元気を貰えた。本当は私を励ましてもらうつもりだったのに、いつの間にかはなを応援してたら私も元気になっちゃったんだよ。はなはそういうタイプのイケてる指導者になると思う」
 …そもそも今はなが目指している夢も、そんな社会を応援できるような会社の社長になることだもんね。生徒会長くらいなれるなれる!
「っていうか今から会ってちゃんとお話しない?今日から緊急事態宣言解除だし」
「う…お医者さんにあるまじき発言…!緊急事態宣言が終わっても慎重な行動しないとだめだよ…」
「じゃあちゃんと感染予防をして、会お。そっちの生徒会選挙のこと詳しく聞かせてよ」
「…うん」

 さっきは身体も重いと思っていたのに、はなに会えると思うと自然と身体は軽かった。
 ああ、やっぱりあるかもしれないね、はな成分。
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