プリキュア創作8

□ほまパパのリハビリ2
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「・・・今日は・・・あの若宮アンリって奴は来てないよな・・・」
 俺が前に使用していたリハビリ施設はどうもほまれの幼馴染みのあの若宮アンリもかつて使っていた施設ということもありたまに出くわすことがあったので薬師寺先生に無理を言って変えてもらった。別に今はもう彼も良識のある大人なので俺が迷惑そうな雰囲気を出したらあれ以上干渉することもないのだけれど、やはりほまれとの接点が増える可能性がミリ単位でもあるのなら俺のメンタルに支障をきたすので別の場所に移してもらった次第である。
 ・・・はあ、俺こそもういい大人だというのに、思春期みたいな繊細さしてるよな。
 ・・・こんなんだから、何回も失敗している大人もどきになってしまっているのかもしれないけど。
「・・・それでもこれから人生良くなると信じて、歩き出すしかないんだよな」
 あの日。クライアス社との最終決戦で周りの大人達も『何でも出来る何でもなれる』と呟きプリキュアになって世界を守った日。俺や一部の人間は変身することがかなわずに見ているだけしかできなかった。
 自分はそんなキラキラした世界に入れるような、まともな人間ではない。
 ほまれに、他の家族にも会える状態ではないのだ。
 せめてキラキラしたプリキュアになれなくとも、俺は今からでも自分の力でなりたい自分にならなくてはいけないのだ。
 ・・・そこらへんのハングリーさは、あのリハビリ施設で若宮アンリとばったりした時に少し話して参考にしたところは多少はあるが、やっぱりもう少しあの環境にいてもっと若宮アンリのことを勉強しておいた方が良かっただろうか。
 ・・・いやいや、意思が弱すぎるだろ、俺。さっき自分が言ったことを思い出せ。ほまれからちゃんと離れないとな・・・
 ・・・だとしたらあの薬師寺先生からもやっぱり離れた方がいいのかな?あの人の場合は俺が離れても勝手についてきそうだから、どのみちまずはちゃんと歩けるようにならないとだな。
「・・・よし、何はともあれ今日のリハビリメニューをこなすか。えーっと、今日のトレーナーは・・・」
 にしてもさすが薬師寺先生が用意してくれた二つ目のリハビリ施設だろうか(結局頼りになりっぱなしじゃないか)。前の施設と遜色ないどころかここは人員が豊富なのでリハビリメニューごとに違う専門のトレーナーさんが指導してくれる場所だった。無論トレーナーさんも人なので俺との相性もあるのだが、基本皆さんプロなので安心できる方ばかりだった。むしろ外れな患者は俺なのかもしれないが・・・
「おっしゃ!今日のトレーナーさんは愛崎さんか・・・この人優しくて分かりやすいからすき・・・」
「・・・え?正人?」
 っと俺がトレーニングルームにぶつぶつ言いながら入室するやいなや、入り口の死角からいきなり変な言葉が飛んできた。
 ま・・・正人?それって確か、今俺が呼んだ愛崎トレーナーの・・・
 俺はとっさにもらった資料のスタッフ一覧を見る。
 愛崎正人。確かにその表記がされていることを確認して、次に恐る恐る声のした方向を見る。
 ・・・本当なら先に資料確認より人の方を見るべきだ、って流れがあるとは思うが、声を聞いた瞬間に逃げ癖のある俺は先に資料の方に目線を逃がしてしまったのである。ここでも逃げ癖。しかしもうこの声の主の人物に興味を示すっという作業工程は飛ばすことができないので渋々見る。俺の対人恐怖センサーがビンビン反応している、この声の主の正体はそう・・・
「・・・ほまれの・・・お父さん・・・って言わない方が良かったか。あなたが何でここに・・・」
「・・・君こそ・・・若宮アンリ・・・くん・・・」
 相変わらずまつげなが!!!そしてテレビでみるよりちゃんとたくましい筋肉がそのインナーの下には潜んでいるんだなって分かってしまう距離感で、若宮アンリ君は入り口のすぐ側にいた。
「・・・ま、まさかとは思うが・・・君、俺を追ってきて・・・」
「ああ、いえ、勘違いしないで下さいね。今日は僕のパートナーの仕事っぷりを見に来たんですよ。僕も仕事柄、リハビリのことは学んでおきたいですしね」
「・・・パートナー?」
 俺を追ってきたって嘘の理由だとしても良い訳としては微妙なものなので逆に本当っぽいな。彼も過去、大きな事故を経験しているみたいだからリハビリのことは学んでいてもおかしくはないのだが・・・
「・・・そっか、ここの先生と仲がいいんだな」
「・・・ええ、前にも話したかもしれませんけど、僕にとってあの時の経験は心と身体の基礎を作ってくれましたからね。恩返しや今後の自分のためにも、色んな施設にいって勉強しているんです。その愛崎正人って彼も、僕のリハビリに付き合って勉強していったら自信がついたのか、いつの間にかリハビリトレーナーの資格も取ってたんですよね。今日は彼の仕事っぷりを見学しにきたのもあります」
 ・・・はあ、じゃあ何。
 わざわざ施設を変えてきたというのに、リハビリ施設っていう同じ畑の中なら若宮アンリ君の関係者は割とどこにでもいるってことなのか。世間は狭いって言うか、薬師寺先生がわざとそういう関係者の多いところを選んでいるのか・・・
 そりゃ考えてみたら顔なじみの多いところを選ぶわな。薬師寺先生がいじわるしたとかじゃなくて、勝手に環境を変えたら知ってる人が少ないと思っていた俺が甘かっただけか。
「正人の奴、ちゃんとあなたのトレーナーできてますか?」
「・・・ま、まあ・・・」
「・・・ま、僕を復帰させてくれたパートナーですから、実力は折り紙つきですよ、安心してくださいね」
 そしてさすが薬師寺先生の息のかかった人間だけあるだろうか。愛崎正人のパートナートレーナーは確かにやりやすい相手だった。
 ・・・そう考えると、俺はほまれやその幼馴染みの若宮アンリ君と同じような怪我からの復帰をしているのかもしれないな。
 ・・・彼らといると、俺も彼らみたいな何でもできる、何でもなれる大人に、戻ることが出来るんだろうか。
「・・・僕がいるとあなたもやりづらいだろうし、そろそろ退散するとしますかね。今日の話の続きはまたいつか出来る時にするとしましょう」
「・・・まれに・・・」
「え?」
「・・・ほまれにこのことを話さないってんなら、別に見ててもいいぞ・・・減るもんじゃないしな」
「・・・ええ、それでは久々にお言葉に甘えて」
 ・・・何が久々にだよ、俺は別に君に何かしてあげれた友達のお父さんでもあるまいに。
 ・・・これからまた、若宮アンリ君と付き合っていくためにも、俺もせめて逃げ癖も治した少しは大人らしい大人になっていかないとだな。
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