プリキュア創作8

□はなの夢を見る
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「うう・・・きっと私は・・・何にもなれないんだ・・・このまま駄目な大人になって・・・一人ぼっちのまま死んでいくんだ・・・」
「・・・そんなことないわよ」
「だって・・・だって・・・気持ち悪いって・・・ヒーローぶってて・・・どうせ何もできないくせに何でもやろうとして・・・馬鹿みたいって言われた・・・みんな私のことそう思ってたんだ・・・」
「・・・私は思ってないわよ。世界中のみんながそう言ったとしても、私とパパとことりはそんなこと絶対に言わない」
「・・・ことりって・・・もしかしてことりに言った?私のクラスのこと?」
「・・・ううん、でも心配してるから、いつかバレちゃうかもね。あの子最近、探偵ごっこにハマってるみたいだし」
「・・・いやだ・・・ことりにまでバレちゃうのは・・・本当にいや・・・ことりの前だけは・・・ちゃんとしたお姉ちゃんでいないと」
「・・・じゃあ泣くのはもうおしまい。クラスの子に言われたことよりも、ママの言葉をしんじてちょうだい。あなたは気持ち悪くなんかない、誰かのことを思えて一番かっこよくて優しい選択のできる子よ。他の子があなたに嫉妬してそう言っちゃうのよ。ことりだって、あなたのことを本当に尊敬しているから、早くお姉ちゃんみたいになりたいからちょっとオマセさんになってるだけよ」
「うう・・・でも私・・・」
「・・・やっぱりもう一度、学校に行きたい?」
「・・・うん、普通の子になりたい・・・学校は別のとこにしてもいいから・・・やっぱりまだ、普通の子になるのを諦めたくない・・・私の思う、イケてる大人のお姉さんになるのを・・・諦めたくない」
「・・・そう、じゃあパパと相談して新しい学校探さないと」
「・・・ごめん、ママ」
「・・・謝らなくていいのよ。むしろあなたがこんなになるまで助けられなかった私達の責任でもあるんだから」
「・・・私は野乃はなだ・・・」
「・・・ん、そうね」
「・・・私はクラスでいじめられたり・・・なりたい自分を否定されても、家に帰れば野乃はなに帰ることができる・・・よかった・・・私は何者になれなくても、野乃はなに帰れる場所があるんだ・・・うれしい」
「・・・そうね、家族ってそういうものだから」
「私、お母さんみたいになりたいな」
「・・・ありがとう」

「・・・は!」

 ・・・今のは誰の記憶だろうか。かつてプリキュアの記憶を集めていた時、色んな人の人生を追体験してきたが、こんなに暗い気持ちになるのは初めてだった。今のもただの夢って訳じゃなさそうだな・・・またつい、誰かの記憶を覗いてしまったんだろうか。
 横を見るとそこには

「くかー」

 っと幸せそうな顔をして寝ているキュアエール、野乃はながいた。
 そうだ、今は俺はこの家のカメラだったんだよな。

「・・・おい、起きろ、野乃はな」
「うーん、むにゃむにゃ・・・どうしたの?ミデン?」
「すまん、どうやらお前の記憶、見ちまったらしい」
「ふぇ?」
 ・・・って寝ぼけてことの重大性が分かってないみたいだな。俺はもう悪さをしないって誓ったはずなのに、今は俺こそ寝ぼけて野乃はなの夢・・・記憶をまた奪いそうになっていたみたいだ。
 いや・・・『また』って表現はおかしいよな。考えてみたらあの戦いの時に唯一記憶を取ることができなかったのが野乃はななんだ。
 こいつはあんな・・・辛い思いをしていたから、俺を救うことができたのだろうか。

「お前もかつて・・・何者にもなれない恐怖と戦っていたんだな」
「う、うん・・・」

 やっと俺の言っている意味が理解できたのだろうか、野乃はなは真剣な顔つきになって聞いてくれる。

「・・・そっか、私の記憶、見ちゃったんだね。えへへ・・・お恥ずかしい」
「・・・ただ何でお前が俺を救えたのか、今本当の意味で分かった気がする。人間の中にも俺と同じ苦しみをもってたやつがいたんだな」
「・・・うん、だから私もミデンにとっての『お母さん』みたいな存在になってあげたかったの。世界中誰もが敵に回ったとしても、誰かがあなたの味方でいてあげる・・・って言ってあげる存在になりたかったの」
「・・・それがお前の『イケてる』か・・・」
「うん!ちゃんとなれてた?」
 ・・・そういう生き方は危ないと思うが・・・ただ俺が救われたのも事実だ。いつかキュアエールが壊れそうになった時は、今度は俺が救えばいいんだ。
「・・・とりあえず改めてこの家の家族の写真、撮りたくなったな。特にすみれさん・・・」
「うん!じゃあ今日はお母さんの写真をいっぱい撮ろうか!ミデン!」
「・・・あとやっぱり薬師寺さあやと輝木ほまれ、愛崎えみるとルールー=アムールもだな。彼女達もまた、お前をキュアエールにしてくれた存在だ」
「うん!みんなも撮ろう!みんな大好き!」
 何者かになりたいと思って出会えた仲間。たとえどこかで失敗したとしても、またやり直して出会えた仲間を今後は大切にしていけばいいんだな。
 ・・・生きるって、こういうことなのかな。
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