プリキュア創作8

□ミデンとリフレインと・・・
1ページ/2ページ

「おーい、リフレインー。いるかー?」
「ああ、ミデンさん。お久しぶりです」

 久々に野乃はな達とすこやか市にやってきた。ちょっとリフレインと話したいことがあったので彼女達には席を外してもらってお互い付喪神的なもの同士、二人で話し合うことにした。

「・・・今日もお説教ですか?」
「・・・まあ、お前のした時間を巻き戻すことで同じ一日を繰り返す、ってことは未だに許しちゃいねえけどよ。それは思い出をなかったことにする行為だからな」
「・・・私も反省しています。今はこうして皆さんの援助のおかげで美術館として新しい人生を歩めていることには感謝ですね。どんな罪滅ぼしでもしてゆくつもりです」
「・・・ああ、お前は恵まれているよ」

 どんなものにでも寿命はある。本来それを過ぎて皆にお別れが済んだのなら、潔く去るのもまた愛の形の一つ、ではあると思うが。

「お前には既に思い出が沢山あったじゃねえか。俺がお前のことを前にものすごく許せねえ、って感じたのはな。お前は既に何思い出を沢山持っている幸せな時計塔だってのにそんな贅沢な願いをもってたってことに・・・嫉妬してたからかもしれないな」
「・・・ミデンさん」

 こいつも野乃はな達に俺の事情は聞いているのかもしれないが、世の中には思い出が全くなくて悲しんでいるやつもいるというのに、俺からしたらこいつは贅沢な悩みで皆を苦しめているように見えてしまった。

「・・・あなたのような存在もいるということを考慮すべきでしたね、あの時の私は浅はかでした」
「いや・・・でも」

 しかし俺だって今は野乃はな達に大切にされて、沢山の思い出を今はもらっているカメラなのかもしれないが。
 記憶があるならあるで、それが風化していくことに耐えれなくなる、リフレイン側の気持ちも分かる時がくるのかもしれねえな。
 記憶はあってもなくても、辛い時はくる、ってことなのか。

「おー、こんなところにいたんだ。へーい、そこのお二人さーん。ちょっと会話に参加していいかしら?」
「おや・・・彼女は・・・ミデンさんのお知り合いですか?」
「あ・・・?まあ知ってる顔ではあるが・・・」

 確かトロピカル〜ジュプリキュアの一人だったよな。野乃はな達はあれから更に沢山の新しいプリキュア達と知り合っていったが、俺を喋れるカメラとして話しかけてきてくれたのは初めてだったかもしれない。

「ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール・・・」
「ローラでいいわよ?私のフルネームをいきなり言ったやつは初めてね」
「・・・まあ、思い出は大切だからな」
「ローラさん、はじめまして。この街の時計台の精霊をしているリフレインというものです」
「ええ、はじめまして。話だけなら花寺のどか達から聞いているわよ、リフレイン。あなたには一度会ってみたかったの」

 はて、てっきり俺に会いに来たかと思ったけど違ったようだな。ローラが用があったのはリフレインの方だった。

「私に何かご用でしょうか」
「ええ、答えにくい質問だったら答えなくてもいいんだけど」

 楽しい記憶があることで
 苦しい思いをすることってあるのかしら?

 っとローラはさっき俺が思った疑問を言葉にしてくれた。

「・・・ローラさん、それは・・・」
「・・・私の国、グランオーシャンでもかつてそれに苦しんで『記憶を吸い出す装置』を作っていたみたいなの。人魚と人間の寿命は違うから、それによって思い出があるから苦しくなる・・・ってことの対策のために作られていたみたいなんだけど」
 ・・・っと、どうやら他の世界でも同じようなことで悩んでいたやつもいたみたいだな。
「・・・そんな装置があったのですか」
「ええ、でも何か爆発しちゃったみたいなんだけど」
「爆発!?」
 おお・・・相変わらずぶっ飛んでいるプリキュアだよな・・・トロピカル〜ジュプリキュア・・・
「だから結局私は分からないのよね。寿命が違うことで、楽しい記憶があるから人間と別れるのが辛いって感情・・・リフレイン。あなたの話はだいたい聞いているわ。あなたもまた、あとまわしの魔女やシャロンみたいに、一人ぼっちで残されてしまったから、寂しいからああいうことをしたの?」
 ・・・そうか、ローラ=ラメールも心配なんだな。いつか自分もかつて戦った敵のような苦しみを味わうんじゃないかって。
 俺も今は楽しいかもしれないが、時が経てばリフレインみたいな存在になってしまうのだろうか。
 俺がこいつのことを許せなかったのは、シンプルな嫉妬だけじゃなくて、やっぱり少し似ているとこがあった同族嫌悪だったのかもしれないな。
「・・・辛いは辛いですよ。楽しい思い出があるからこそ、今の朽ちていくだけの自分と比較してしまって・・・全盛期と比べてしまう。そのあとまわしの魔女とシャロンという方の話もなんとなくは聞いてますよ。私も時を戻す力以外に別の力があったら、永遠のあとまわしや時が止った永遠に幸せの国を作っていたのかもしれないですね・・・ローラさん、あなたは」
 いつかローラ=ラメールも、そんなことをする日がくるのだろうか。それを心配して、彼女はリフレインの元に意見を聞きにきたんだ。
「さあ、わかんない」
「・・・って重い話になりそうだったけどいきなり軽く返事したな」
「だって私、今が楽しいんだもん。それにシャロンのことだって、彼女が生きていた証を今生きている私達が伝え続けるのが大切だって、まなつのおばあちゃんから教わったんだもん。思い出はね、今生きている私達が大切にしていけばずっと残っていくのよ」
 ・・・そうか、ローラ=ラメールは強いな。
「・・・じゃあローラさんは安心ですね」
「・・・でもやっぱり私も真の意味で『楽しい思い出があるから辛い』ってことに今は気付いてないだけかもしれないわね・・・いつか私も愚者の棺を利用する日がくるのかも・・・」
「そんなことはさせないぜ!ローラ=ラメール!」
「・・・ミデン」
 本来こいつはリフレインに会いにきたかもしれないが、俺がいる以上はそんなことはさせないぜ。
「・・・俺もまだよくわかってないんだ・・・『楽しい思い出があるから辛い』ってこと。俺は思い出がなにもなくて辛かった。自分が何者にもなれない、真っ暗な人生を歩んでいくかと思ったけど、お前と同じで今は沢山のキラキラした思い出を集めて今が楽しい。お前が楽しい思い出を忘れそうになっても、俺が沢山残してやるよ。ほら!これ見ろよ!」
「・・・おお、私と戦った日の正午のあとに撮った写真ですね。ミデンさんが撮ってたのですか」
「ふふ・・・みんな楽しそう」
 俺だって未来のことはよく分からねえ。けど、そのシャロンって奴の話を聞いて改めて確信したことがある。
「みんなが生きていた証を残すのが、俺の役目なんだ。お前を一人にさせないぜ、ローラ=ラメール」
「・・・ええ、今日はここにきて正解だったわね。これからよろしく、ミデン」
 俺たちはお前みたいにならないぜ、リフレイン。リフレインは少し嬉しそうな顔をして俺たちを見つめていた。せっかくなのでそんなリフレインとローラ=ラメールの写真を撮った。
 これを見て、いつか懐かしいと思える日もくるのかな。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ