プリキュア創作8

□ミデンとさあや
1ページ/1ページ

「さーてっと、今日もミデンで色んな写真撮ってこよー」
 っとお手入れも終わったので今日もはな達と色んな思い出を撮りにおでかけにいく。それにしてもこんなレアなカメラのメンテナンスを任されるなんて、私は幸せものだなあ。
「・・・その・・・ありがとな、キュアアンジュ・・・薬師寺さあや・・・」
「あら、私に話しかけるなんて珍しいね、ミデン」
 だいたいいつもはなに話しかけている印象だけど、少しずつみんなに心を開きかけているのかな?
「・・・僕も未来に進まないといけないからね。特に君にはよくお手入れしてもらっているし・・・それに『他人から奪った思い出は本物の思い出ではない』って言葉は、君からよく学んだし・・・」
「え、私?」
 私ってそんな生き方してたっけ?
 数秒自分の人生を振り返ってみたけど、あー、なるほどあれかなってだんだん納得してきた。
「・・・確かに最初はお母さんの人生をなぞることに一生懸命だったかもね、私」
 お母さんの真似事だけじゃない。ドラマでの役で色んな人生を追体験してきたかもしれないけど、役を演じたからといって別の人間になれる訳ではないのだ。薬師寺さあやとしてちゃんとやりたいことをやらないと、自分の人生を歩むことはできない。
 ・・・でもお芝居をしている間は何でもできる、何でもなれるのは確かに楽しいことではあるけどね。
「でも最初は誰でも尊敬する誰かの真似をすることがスタートだよ。はなだってそうだったでしょ?」
「・・・ああ、野乃はなは最初、お母さんみたいになりたいって思っていたみたいだな。あいつの中の記憶を、少しだけ見た」
 ・・・そっか、ミデンも知ったんだね。はなの過去。
「あいつも将来に絶望して、何者にもなれない自分に落ち込んでいた時期もあった。そんな時にずっと寄り添ってくれていたのが家族・・・特に強いビジョンで残っていたのは野乃すみれとの思い出だったな」
「はなのあの誰かをほっとけない優しさは、お母さん譲りなんだよね。私もそれに何回も助けられた。大好き」
「・・・あとはルールー=アムールの中でも、すみれの存在は大きかったよな。彼女もまた、すみれに救われていた」
 ああ、洗脳を解いたあとも変わらずにルールーを受け入れてくれてたんだよね。すみれさんとしてはまた娘が辛い思いをしていた時に何も出来なかったことが、あの時は苦しかったんじゃないかな。
「・・・お母さんっていいね、ミデン」
「・・・ああ、考えてみたら、俺には親と呼べる存在がいなかった。だからあんなことしてしまったのかもしれないな」
 改めて自分の人生を振り返る。私も本当は望まれて生まれてきた子なんじゃないかと不安だった時期もあったけど、今はお母さんにお父さん、色んな人から祝福されて生まれてきたんだって事実を知っているから、私も優しい人間でいたいって思える。
 はなの過去みたいに、優しすぎて辛い思いはするかもしれないけど、それでもやっぱり愛情は人を育むものだ。はなやミデンがこれから傷つくようなことがあったら、私が守ってあげたい。
「輝木ほまれも・・・愛崎えみるも・・・色んなプリキュアがそうだった。親の愛情を沢山もらって生きてきた」
「・・・ほまれのお母さんか・・・」
 そう言えばハリーに告白する前にお母さんに相談したって言ってたな。ほまれにとってもお母さんの存在って大きいんだろうな。
「輝木ちとせ・・・輝木ほまれがなんとなくアバウトだけど強くいられるのは、あんな風でも楽しく生きている母親を見て自分もああなりたいって思ってたからなんだよな」
「・・・ああ、ほまれってたまに適当なところあるけど・・・あれは自由なちとせさんのまねっこだったのかもね」
 何か深刻に悩んでいてもちとせさんみたいに飄々と生きれるのもまた強さなんだろう。生きようと思えば生きられる。ちとせさんもほまれも親子の会話の中で大切な話はしているんだと思うけど、一番の応援は辛いことがあっても強く生きるその生き様を見せることなのかな。
 ・・・あんまり深くは追求しない方が良いとは思うけど、ほまれのお父さんの件で色々あったとは思う。けど今のちとせさんは過去に辛いことがあったとは思えないくらい楽しい人生を歩んでいる。きっと楽しい思い出だったんだろうな。ほまれもそんなちとせさんを見てたから、失恋してしまうかもしれないけど今の自分を大切に、それを楽しい思い出として生きられるお母さんみたいになりたいって思いで今のほまれになれたんだろう。
 ・・・やっぱりちとせさんにはかなわない。
「そして愛崎えみるがあんなのも・・・母親の影響」
「そうそう・・・えみるちゃんの親御さんも何となくよく分からないけど・・・それでもいい人達なのは分かるよね」
 自由なのは分かるよね。逆に前の正人さんはどちらかというとお爺様の影響が強そうだったかな。
「まあそんな感じでみんな最初は親のまねっこなのよ。特にミデンはその親のまねっこをこじらせた私とは確かに相性が良いのかもしれないね」
「・・・ああ、だが薬師寺さあやは今、ちゃんと自分のやりたいことを見つけて歩んでいるじゃないか」
「・・・それは、みんながいてくれたからだよ」
 親のまねっこの次は自分で歩いているように見えても、今度はまた別の誰かのまねっこをしているだけなのかもしれないけど。
 でも生きるってそういうことだから。自分って何なのかな、って迷いながら正解を探しながら人と一緒に生きていく。
「ミデンもこれからそうやって生きていこうよ。大丈夫、私達がついているから。とりあえずおでかけしよ」
「・・・ああ、そうだな、よろしく。薬師寺さあや」

 今日もミデンと楽しい思い出作りが始まっていく。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ