プリキュア創作8

□あまねの後悔
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「はあ・・・まさかプリキュアがこの学校にいたとは・・・」

 人目につかないところでレシピボンを奪おうと気を遣ったはずだったんですけど、まさかそれが裏目に出るとは思いもしませんでしたね。しかし逆に考えるなら彼女達の正体が分かったので今後の対策も立てやすいでしょうか。
 ・・・彼女達の名前、生徒の個人情報を探るようで心苦しいですけどあとで調べておきましょうか。
 ・・・心苦しい?

 自分で心の中で呟いておいて、私は歩みを止めて考えてしまう。

 いや、レシピボンを奪うのは別に命を奪う行為ではないのだ。我々の目的は正義であって、それに対する犠牲とするならむしろ優しいくらいだ。心を痛める必要なんてない、そう、本当に心を痛めるべき相手がいるのなら、それは・・・

「ああ!あなた!無事だったかしら!?」
「・・・あなた達は・・・」

 っとぽけーっとしていると校舎の方から私を呼ぶ声が聞こえる。彼らは・・・

「食堂の皆さん・・・」
「さっき例の怪物が出たみたいじゃない!」
「あなたパトロールしてたんでしょ?怪我はない?」
「え、ええ・・・まあ」

 ・・・そうか、タイミングとしては私がパトロールしている間にウバウゾーが出ていたことになるんですよね。そこらへんのアリバイもちゃんと考えておかないとですね。

「私は反対側の・・・家庭科室を調査している時に校庭に出たみたいですね。虚を突かれました」
「・・・ああ、そうか、それなら安心だけど・・・」
「一体いつも、誰が怪物を倒してくれるのかねえ」
「・・・・・・・・・」

 今この場は乗り切れたけど、一応この学校の生徒の安否を守る役目を担っている以上は、やはりこの学校を標的にするのはそれなりにリスクはありますね。プリキュアだけではなく私の正体もバレてしまう危険と隣合わせです。
 ・・・それに。

「エビフライの味も元に戻ったし、とりあえず安心ね」
「ええ、大事な生徒の食事ですもの。何かあったら親御さん達に申し訳ないからね」
「・・・エビフライ」

 そうだ、私のしたことはこの学校の生徒は傷つかないと思っていたけど
 同じこの学校を守る者からしたら、自身の責任を問われるかもしれないことを、私はしてしまったのか?
 心が痛む、そんなこと私にはないと思っていたけど。

「何でも話に聞くとおいしーなタウンの一部のお店も味が変わって店じまいしなきゃいけないところもあったみたいだし、本当に何もなくて良かったねえ」
「ええ、でも可哀想よね、閉店に追い込まれたお店は。家族を養えなくなってこれからどうするのかしら・・・」
「そ、それは!」
 っと、本当は黙ってなくてはいけないというのに私は叫んでしまった。
 ・・・やだ、これじゃまるで。
 私は許しをこいているみたいではないか。

「・・・あくまで味が変わっているだけで・・・健康被害とかは報告されてないと聞きます・・・」
「・・・そうだね、でも私達もプロだから。お客さんに変なものは出せないよねえ」
「特にここは学校だから、子供達の笑顔を思うと今回何もなくてよかったよ」

 ・・・そうか、私がこれまでこの学校を標的にしてこなかったのは
 こんな反応を近くで見ないようにするためだったかもしれない。

 でも私だって、本当は、生徒を、この世界の人達を守るために。

「ま、結果何もなかったんだからいいじゃないか!」
「そうね、あなたも気を付けてね、生徒会ちょ・・・あれ?あの子は?」
「何だか急な用事があるとかでどこかに行っちゃったけど」
「・・・そう、忙しいのね」

 私はいてもたってもいられなくて、走り出してしまった。このままでは自分のしたことを悔いてしまいそうになる。それだけはしないためにも、私は人気のないところに行く。そして

「ブンドル!ブンドルー!」

 この言葉を唱えていると、何故だか迷いが消えて安心する。
 そうだ、私のしていることは正義なんだ、この世界の為にしていること。別に怪我人を出している訳じゃないんだからいいんだ。ゴーダッツ様の願いを叶える為に、私は余計なことを考える必要なんてないんだ。
 かりそめの体の都合なんて、この言葉を唱えて忘れてしまおう。もっと大きい大義の為に生きなければ。
 考えるのを、やめよう。

「ブンドル!ブンドル!ブンドル・・・ブンドル・・・ブンドルー!」

 っと、想定していたよりも多く私はブンドルと言った。自分の心が消えるのに、何故だか今日は時間がかかった。
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