プリキュア創作8

□飴屋に行く拓海
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「はあ…ゆいとハンバーガー、食べに行きたかったよなあ」

 食べているゆいの姿って何か可愛いんだよな。最近は仲の良い友達とずっと遊んでてそれはいいことなんだけど、もう幼馴染として一緒にご飯を食べる機会はこれからどんどん減ってきてしまうかもしれない。
ゆいとこれからもご飯を食べる機会を増やしたいなら、俺の方から動いていかないとな…幼馴染としてじゃなく、他の関係もこれからちゃんと築いていけるようにならないと…ご飯で釣るような真似はあんまり頼りたくはなかったけどハンガーガー作戦も上手くいかなかったしもっと別の方法も考えないとな。
…でもハンバーガーか…結局一人で食べてたら例の途中で味の変わる事件が起きたみたいだし、あれに巻き込むかと考えたら結局ゆいを巻き込まなくて正解だったかもしれない。
 にしても途中でゆいの姿を見た気がするけど、あれは何だったんだろうか。まさか危険なことに巻き込まれているとかじゃないよな。ゆいの場合は巻き込まれるっていうか自分から足を突っ込んでいくイメージもあるんだがな…
 そこも良いとことなんだが…

「…ゆいに憧れてばかりじゃなくて、俺も変わらないと」

 男がどうとか言うつもりはないけど、せめて対等な存在になりたい。あいつの隣に立てるって胸を張れるくらいの自分になってみたい。
 …なーんてこと、そう言えば最近見たアイドルの配信でも思ったよな。何だっけかな…プリマジ?女の子アイドルが沢山出ているあのコンテンツで突然男子アイドルグループが出てきて話題になったよな。女子がやるものだって勝手に決めつけていたところもあったけど、別に楽しいなら男子がやってもいいんだよって勇気をもらえたよな。
 それにあのユニットの内の一人、何だか並々ならない覚悟を感じて俺も心が熱くなったのを感じる。
 …マジ、って何かいいなって思えた。

「…はあ、何か口直ししたくなってきた。甘いもの食べたい」

 ハンバーガーの味は直ったはいいけどそれはそれとしてデザートも食べたくなってきた。俺はゆいとのデートコースのプランをしていた中でここも行ってみようかな、って思っていた飴細工屋さんに行ってみることにした。

「おー、かわいい猫の飴だな。ゆいも喜びそうだ」
「…いらっしゃい」

 …っとガイドブックだとここの店主はおじいさんがやっているみたいだけど今日は若い人だな。あれ…この人の顔…どこかで見たことある気がするけど…

「じー――――」
「…すみません、今日は店番する人があまりいなくて…俺は本来店に立ってはいけない立場なんですけど…変でした?俺の接客」
「ああ!いや、そういう訳じゃなくて…」

 いかんいかん、俺も失礼だったよな。でもどっかで見たことある気がするんだよな、彼。

「…はあ、みゃむも接客出来るってのに、俺って本当に不器用だな。ステージに立つと何かアイドルっぽい台詞ペラペラ出てくるのに、これが舞台と日常の違いってことなんだろうか」
「…アイドル?」

 …あれ、もしかしてこの人…

「あー――!もしかして『TrutH』の伊吹橙真さんですか!こんなところで飴を…」
「あ!まずい!バレた…」

 そんな、ガイドブックにはそんなアイドルがやっている飴屋さんなんて書いてなかったぞ…いや、伊吹橙真さんはこの間アイドルになったばかりだから更新されてなくて当然か…っていうか。

「あ、よく見たら陽比野まつりさんの実家みてーじゃん…じゃあアイドルがいて当然…じゃなくって…」

 …あれ?陽比野まつりさんの実家に伊吹橙真さんが働いているってことは…つまり…?

「二人ってもしかして…」
「違うから!まつりと俺は君が想像しているような関係じゃないから!あくまでアイドル活動している以外の俺はここで飴職人を目指している英吉さんの弟子!」
「ああ…すみません、憶測で勝手なことばかり言って…」

 えっと、英吉って人がここの店主か。そこに弟子入りするなんて最近にしては珍しい人だよな、伊吹橙真さんって。

「…にしてもあの伊吹橙真さんが本当は飴職人の弟子なんて」
「…あの、自分でバラしておいて何だけど、このことは秘密にしてもらえませんか…あんまり目立ちたくないので…接客やってる時点で説得力ないですけど」
 あーはいはい、最近のアイドルは大変ですねえ。
「…分かりました。それに俺、伊吹橙真さんのパフォーマンスすっげえ好きなんで応援してますよ。頑張ってください」
「…え、見ていてくれたの」
「はい!何かこう…マジが伝わって胸の奥が熱くなりました。俺も伊吹橙真さんみたいになってみたいです!」
「…そう言ってもらえると嬉しいな。俺は本来はステージに立ちたくてアイドルになったって訳じゃなくて、あくまで誰かを一人ぼっちにさせたくないっていう他人がモチベーションの活動だったから、お客さんにちゃんと喜んでもらえているなら嬉しい」
「…他人がモチベーション?それって」

 あのひゅーいさんって人の為なのかな。それとも

「…お客さんに何言ってるんだろ、って思われるかもしれないけど。俺がアイドルを始めたのは大切な人と肩を並べたかったからなんだ。もう後ろから見ているのは嫌なんだ。一緒の景色に立って、彼女達のマジに応えられる人間になりたい」
「…わかります、その気持ち」

 …彼女っていうことはひゅーいさんの為だけにアイドルになった訳じゃないんだ。その詳細はよくは分からない。本当は褒められた理由じゃないかもしれないけど。

「俺は好きですよ、橙真さんのその真剣な気持ちがライブで伝わってきますもん」
「…ありがとう」

 俺もいつかゆいと並ぶために勇気を出す日がくるんだろうか。その時は橙真さんみたいになれたらいいなと思う。
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