プリキュア創作9

□セルフィールとナルシストルー
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「ああん?俺様を尋問だと?いい度胸じゃねえか!逆にお前の黒歴史を暴いてやるぜ!ふふっふふ」
「ひ!ひえー―――!このナルシストルーって人!やっぱり狂暴だー――!」

 ゆいさん達にナルシストルーをよろしくね、っと頼まれたのでよく面会をするようになったんですけどこの人本当に実は暗い過去とかある悲しい人なんでしょうか。私はとにかく舐められっぱなしでいつもおちょくられている気がしますね…

「ふん、お前みたいな青二才がこの俺様を尋問しようだなんて百年早いな。とっとと出直してくるんだな」
「あうう…だから尋問じゃなくて普通に話にきたんですよー。ゆいさん達の話だとあなたは話せば分かる人っぽいですし…ほら、モチツキ王国では沢山の人の前でも楽しそうに話してたって聞いてますし」
「あれはお客様の前だったからな。俺様もリップサービスしたってことだよ。敵のお前にする訳ないだろ!」
「ひえー――!お客様って何――――!」

 …にしても仮にナルシストルーが環境によって悪人になった、実は根が良い人だとしても元々私とは相性が悪い気がする。に、苦手なんすよね、こういうマウントを取るような話の仕方する人…故郷の人達を思い出してしまう。

「…っていうかそもそもお前、男の子なの?女の子なの?この質問するのはさすがに失礼かと思ってこれまで控えてたけど、少し話していても全然分からない」
「あ、一応女ッスよ。よく中性的って言われますねー、えへへ」
「…褒めてない。まあローズマリーもいるし、この国の都会ともなると寛大な価値観してるんだな。俺のいたところとは大違いだ」
「あれ、もしかしてあなたも田舎の生まれですか?やったー、やっと話が合いそうですね」
 ここまで話してきてやっとナルシストルーとの共通点が生まれましたね。あんまりいい共通点じゃないかもしれないですけど。
「…は!俺様と共感したいってのか?それってかなり残酷なことだって気が付いてる?相手の気持ちに立てるのは相手と同じ苦しみを経験したことあるやつだけだぜ?ぬくぬくと幸せな環境で生きてきた奴がいくら相手の気持ちを分かろうとしたところで、その価値観の違いは相手を傷つけるだけだ。お前は無意識のうちに当たり前のようにやってることが不幸な生まれの人を沢山傷つけていることを知れ!もっと配慮しろ!この偽善者!」
「いやー、私もあんまりいい環境とは言えなかったんですけどね。ナルシストルーさんの境遇と比べたらもしかしたらまだ緩かった方かもしれないので、本当に気持ちを分かってあげられる訳じゃないかもしれないですけど…」
「は…どゆこと?」
 …何だか初めてナルシストルーと目があった気がしますね。私もクックファイターのみんなにこのことを話すのはあんまりないので、話しなれてなくてまたつい彼を傷つけてしまうかもしれない。
 でもプリキュア達に教わった。まずはどんなに下手でも最初の一歩が大切なんだ。私も自分の過去を払拭するためにも笑い話に昇華してしまおう。
「私ほら、こんな見た目なのでよく男の子と間違えられて差別まがいなこと言われてたんですよね。もっと女の子らしくしろ、っとか男の子ならもっとこうしろああしろな的外れな要求とかされたり…結構苦しかったんで、ローズマリーさんっていう偉大な人がいるって噂を聞いて故郷から離れて都会のクックファイター養成所に通うようになったんです」
「…そっか、辺境の国はどこも同じようなもんなのか」
「あー、でも私は確かにナルシストルーさんに比べたら恵まれている方だったのであなたの気持ちは分からないのかもしれません。辛くて自分に合わないな、って環境から逃げられるのもまた幸せなことですからね。世の中には本当に逃げられない人もいるでしょうし、あなたみたいに…」
「…いや、あんたは俺より正しい・・・かもな」
・・・っておやおや、あのナルシストルーが大人しくなってますね。勇気を出して自分の過去で誰かを救える体験談になるってのは気持ちの良いことなのかもしれません。
「・・・俺だって本当は逃げようって気になったら逃げられたはずさ。でも負けたくないからって、自分に合わない環境でも戦い続けることを選んでしまった」
「・・・そう、なんすか」
 何だかやっと、ナルシストルーと会話できている気分ですね。他のクックファイターとの面会でも同じようにはぐらかされたって話ばかり聞きますけど、もしかして私だから話してくれたんでしょうか。
 …これももしかして、私の才能?
「何だか逃げたら俺が負けみたいって思えて、俺は頑張っても報われないことが見えている環境で頑張ってしまったんだ。その場にあるのは楽しそうに成功している連中の足をひっぱったり、粗を探して嫌味や嫌がらせをすることで相手の弱点を突くことくらいしか役目がないって最初から分かっていた。俺にはこれしか生きる道がないって思ってたけど、本当は違うんだよな。もっと視野を広げれば、逃げればちゃんと幸せになりそうな環境なんて、この世にはいくらでもあるんだ。確かにその場に行って一からスタートするのはそりゃ怖いよ。また上手くいかないで排斥される可能性だってあるし、人は信頼できない性格は変わらない。保証がないのにその一歩を踏み出す勇気は、俺様にはなかった」

 ちゃんと逃げれたお前はすごいやつだよ
 時には勇気を出して逃げることも大切だ

 そう、ナルシストルーから嫌味や恫喝するオーラも消えて、これが色んな仮面を捨てた彼本来の表情だとわかった。

「セルフィーユですよ、私の名前は。ここがあなたの新しい場所になれるかは分かりませんけど、少なくとも私はあなたの最初の一歩を馬鹿に何かしません。勇気ある行動だって称えます」
「セルフィーユか…相変わらず女みたいな名前だな」
「女ですよ!やっぱり失礼ですよね!普通にあなた!」
「はっはっは!まあ人の性格は三歳で決まるっていうしな、そうそう変わらないし俺のしてきた罪も消えないよ。さ、この不毛な話し合いを続けようか、セルフィーユちゃん」
「…もう、疲れる…」
 でも尋問じゃなくて話し合い。
 私のことをリア充か何かかと思って勝手に卑下して対等に話し合いするら参加するつもりもなかったナルシストルーでしたけど、少しは心を開いてくれたでしょうか。
 これから彼のおちょくりはまだまだ続くかもしれないし、何だたら彼は私の故郷の人達に似ていて苦手な人かもしれないですけど。
 でもなぜだか故郷と違って『ここは報われない環境だな』って予感はしなかった。彼のことを知っていくのは、少し楽しいと思えた。
 …これがここねさんの言っていた、昔の自分を救うってことなのかな
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