プリキュア創作9

□ショッピングモールで迷子になる正人
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「うわー!ここが庶民がご飯を食べるショッピングモール、意外と広いんだね」
「…正人、その言い方ちょっとトゲがあるから人前では注意した方がいいよ。僕も人のこと言えないかもしれないけど」

 今日はアンリと映画を観に来たんだけどお腹が空いたのでご飯を食べようと、僕は生まれて初めてはぐくみショッピングモールのイートインコーナーまでやったきた。普段ならこんな大勢の人と一緒にご飯を食べるなんてこと、社交パーティ以外ではしないんだけど、ここではその規模の食事会を毎日しているんだ。すごいな。

「僕知ってるよ、ここはバイキングじゃないから一店舗ずつお金を払って自分で配膳するんだよね。ふふ、たまにはこういうところで食べるのも学生らしい」
「…まあそれが一般人としては普通なんだけど、やっぱり休日なだけあって混んでるね。やっぱり正人がよく行く静かなレストランでも行こうか?そっちの方が落ち着けると思うけど」
「…ううん、いいんだ」
 何だか今日はアンリと普通の友達がするようなご飯の食べ方をしてみたい気分になっていた。こんなこと口にすると世間の人やアンリに怒られるかもしれないけど、これまで年相応のイベントをしてこなかった自分としては当たり前を何でもしたくなってしまう。

「あ!この店舗何かすごいよ!プリキュアのコラボグッズが売っているよ!僕はここにしーよおっと」
「それじゃあ僕はもうちょっと巡ってみようかな。分かる?正人。あそこはちょっとバイキング形式に近い店舗かな。先に揚げ物を小皿にとってそのあと店員に口頭で食べたいうどんを直接注文するんだよ。今は人混みも多いし声が聞こえづらいかもしれないからはっきりと大きな声で『プリキュアセット下さい』と言うんだよ。あと冷たいうどんか暖かいうどんかも先に言うんだ」
「分かってるよ、ネットで調べてきたからね。ふふふ」
「…ふふ、デートに行く前に下調べをしてくれたってことだね。嬉しい。それじゃあ健闘を祈るよ、正人」
 っと言ってアンリは自分の食べたいものを探しに人混みの中に紛れてしまった。
 少し寂しい。でもデート中にこういった小規模な解散はよくあることだろう。っていうかデートだったのか、これ…今更ながらその事実を知って嬉しくなってきてしまう。

「プリキュアセット!サイズは中で!冷たいのお願いします!」

 よし、ちゃんと言えたぞ!

「すみません、お客様。プリキュアセットは小しかないんです」
「え!?そうなの!?」

 しまった!恥をかいてしまった!もっと下調べをすればよかった!

 少々のトラブルはあったもののその後のお会計はスムーズにできたし、お箸や水はセルフサービスということを調べていたのを冷静に思い出していたので僕は心を揺るがすことなく的確な行動を続けることができた。きっと以前の僕なら一度の失敗でくよくよしてその後も調子を崩していたかもしれないけど、今は無事にアンリと合流するという第一目的のために動いているんだ。それを完遂できるよう、未来に進んでいくことを優先しよう。

「よし!アンリと合流だ!アクスタは何がでるかな!キュアマシェリだと嬉しいな!おーい!アンリ!」

 がやがやがや

 っと。

 アンリを呼んでも姿は見えず、この人混みに最初はびっくりしたけど、いざ一人の人を探そうと思うとこれはすごい労力になりそうだぞ…

「…っていうかどこに座ればいいんだ…人が多い…ちゃんと座って食べられるのか?ここにいる大勢の人は料理を頼んだあとに席取りもしているという実は高度なことをしていたのか…」

 って考えて見たらスマホでアンリと連絡を取ればいいじゃないか。えっと、確かスマホはポケットの中に…って

「トレイを両手で持っているからスマホが取り出せない!どうしよう!どこか一時的にでもうどんを置いておける場所はないだろうか!?」

 いや、でも席についている人は大勢いれど、そんなことしている人は一人もいない。も、もしかして僕はこれからはしたないことをしているのか?ネットで調べようと思ってもスマホを取り出せないのでとにかく今は闇雲にアンリがいないか歩き回るしかない。
 そして人混みの中をうどんを持ちながら歩いていると、だんだん不安になってくる。このままアンリと会えなかったらどうしよう。さっきと同じ場所を通った時に、周りの人から変な目で見られないだろうか。あの人可哀想とか、あの年で迷子になっている人とか、そんな風に思われてないだろうか。
 うう…ショッピングセンターでご飯食べるのって、こ、こんなに辛かったのか…庶民の人達はすごい。そして僕はなんて世間知らずだったんだろう。
 ああ、この道を通ってしまえばこのイートインコーナーを一周してしまうことになるぞ。そしたらきっと周りから変な目でみられる。果たして僕のメンタルは持つことができるのだろうか…

「って愛崎正人さん?えみるちゃんのお兄さんの?こんなところでうろうろしてどうしたんですか?」
「…え?」

 そんな迷える僕に声をかけてくれる存在がいた。つい周りを見回しても、人の姿はない。もしかして妖精にでも話しかけられたかと思ったけど、声の主の出どころは低いところからだった。視線を少し下げてみると、そこには…

「野乃ことりさん…?はなさんの妹で、えみるとよく仲良くしてくれる」
「はい、こんなところで会うなんて奇遇ですね。お友達とはぐれちゃったんですか?何だか泣きそうな顔をしてますよ?」
「え、ちが…これは…」
「まあショッピングセンターあるあるですよねえ。私さっき座敷のコーナーでアンリさんとも会ったんですけど、もしかして探しているのはアンリさんですか?」
「座敷!そんなところもあったのか!」
 あ、よく見たらあの角を曲がったところに景色の見えるバルコニーがあるぞ!あそこはまだ調べてなかった!
「案内しましょうか?っていうかまずは席取りしてから注文した方がいいですよ」
「え…そうなの…でも食べ物を持ってきている間に他の誰かに座られたら…」
「そのための相方じゃないですか。大方アンリさんもこういうところになれてなくてはしゃいじゃったかもしれませんね。二人ともかわいいんだから」
 …そっか、アンリも結構、わくわくしてて冷静じゃなかったのかもしれないね。
 ショッピングモールで友達と過ごすのは、きっとアンリも初めてのことだったんだろう。

「っていうか先日隣町で水害がありましてねえ、断水してないこの地域にご飯を食べにこぴょうと今日は余計に人が多いんですよ。いつもは席が埋まることなんてほとんどないんですけど」
「ええ、そんな事情もあったんだ…ん、そういえばえみるが昨日そんなことがあったからボランティアに行くとか言っていたような…」
「そう、えみるちゃんのヒーロー活動ってすごいですよね。私は早く大人になりたいってお姉ちゃんによく偉そうに言っちゃうけど、結局そういったボランティアには出ないでショッピングモールに遊びに来てしまっている。私よりえみるちゃんの方がよっぽど大人です」
「…でも今は君は僕を助けてくれただろ?君も十分に大人さ。少なくとも僕よりはね」
「…そうですか?あ、でもえみるさんのお兄さんって、何だかそういうヒーロー活動を昔は反対してたって聞いていたんですけど…私がこんなことしてたの、やっぱり生意気ですよね…」
 う…小学生は正直なことをズバっと言ってくれるから心臓に悪いよな。でも真実だ、僕も自分を変えるために真摯に向き合おう。
「…生意気なんかじゃないよ。どんな形であれ人助けをしようと困っている人に声をかける君は立派だよ。多分僕には自分のことが手一杯でできないことだと思うから。僕も新しいことを知って、変わっていかなきゃって思えたんだ。今日ショッピングモールにきたのもその一環さ」
「ふふ、やっぱりえみるちゃんのお兄さんって感じですね。しっかりしてます」
「…しっかり…するようになったんだ」
 プリキュアやアンリと出会って僕がそうなっていくように、ことりさんもそう思って僕を助けてくれたのかな。案外これからプリキュア活動をしていく中で僕に近い存在はことりさんなのかもしれない。これからも仲良くしていこう。

「あー!ごめん!正人!先に集合場所を決めてから注文するべきだったね!段取りがぐだぐだになってしまったデートですまない!」
 っと座敷コーナーでやっとアンリと合流できた。ごめんのポーズをとっている彼の姿は結構レアなのかもしれない。
「はは、いいよ。こういうトラブルも楽しいよね」
「わ…デートしてたんだ…大人…」

 そんなこんなで僕たちの新しいことをしていくデートは続いていく…
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