プリキュア創作9

□おばあちゃんの思い出
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「ちょっと拓海〜、本当にゆいと二人っきりで花火見ないの?私達がちゃんとセッティングしてあげるわよ?」
「・・・いいよ、別に。気持ちは嬉しいがな」

 まったくこのいけすかない中三ボーイめ。そんなにかっこつけてたらいつかゆいを取られてもしらないんだからね!

「ゆい、結構モテるみたいだし、あなたが知らないところで結構イケメンといい思い出作ってるわよ」
「な!何・・・それは知らなかった・・・確かにゆい、誰にでも優しいから勘違い製造マシーンでもあるんだよな・・・」

 お、これは良い感じかもね。確かにあのケットシー君なんかゆいを見る目が尋常じゃなかったもんね。いつかちゃんと罪滅ぼしをした暁にはしっかりゆいにアプローチかけてくるんじゃないかしら。彼との差を作る為にも今しっかりゆいちゃんとの思い出を作っておかないとね。

「・・・でもそれは今日じゃなくても・・・いいかな。今日のゆいは特に幸せそうだし」
「・・・あら、そうなの?」

 っと言いつつ幼馴染みの拓海じゃないと気がつかないゆいの変化とかもあるのかもね。個人的には勿体ないとは思うけど、野次馬の思う感覚とは何か違うゆいの心境とかあるのかもしれない。
「・・・少し、聞いてきていいかしら。今日のお祭り、楽しかったって?」
「・・・別に、それくらいのことを聞くのに俺の許可はいらないだろ。そうそう、俺はクラスの連中とこれから用があるから今日はここまでな。やきそば、美味しかったぜ、ローズマリー、じゃ」
 っと言って拓海はお祭りの賑わいの中に混じっていった。
「今日のゆいは、拓海がフォローするまでもなく楽しかったってこと、かしらね」
 そんなのいつも通りだとは思うけど、逆に言うなら拓海が入る余地がないって自分で諦めていることにならない?それは勿体ないと思うから背中を押してあげたいところなんだけどねえ。青春なんて、一瞬で過ぎちゃうから、遠慮した分だけ大人になって未練になっちゃうのよね。まあ今のゆいは毎日楽しそうだから、あえて恋人を作らなくてもよさそうなのはそれはそうなんだけど・・・
「マリちゃん!拓海と何話してたの?」
「・・・って話をすればゆい」
 そして私の時にだけは何かタイミングのいいゆい。このラッキーを拓海に分けてあげたいわね。
「・・・拓海とね、今日のゆいは楽しそうだった話をしてたのよ」
「うん!楽しかったー!今日は特別に思い出になったかもー」
「え、そうなの?」
 やっぱり拓海の言う通り、何かがゆいにとってプレシャスな一日になっていたのかもしれない。やっぱり持つべきものは幼馴染みってことかしら。
「何が思い出に残ったのかしら、ゆい。良かったら聞かせて」
「うん!思い出に残ったっていうより、みんなの中でおばあちゃんが生きていたことを確認できて嬉しかったかなー。私ちょっと前はね、おばあちゃんに会えなくて寂しい時期もあったんだけど、それでもおばあちゃんの言葉とみんなの反応を見て立ち直ることができたんだ」
 ゆいはいつも通りに天に指を差す。そっか、タカオさんとみやこさんがお話してくれたみたいに、この街のみんなはゆいのおばあちゃんのヨネさんに助けられて生きてきたのよね。今日は特別、ヨネさんの思い出話をよく聞けた日だったのかもしれない。
「私はみんなの心の中に生き続ける、だから寂しくないよ。その言葉を今日は一番感じた日だったかなー」
「・・・ふふ、そうね。お祭りってそういうところあるわよね。みんなで協力して一つのことを目指して、自分の中にある先人の知識や思い出を駆使しながらお祭りを作って新しい思い出を作っていく。積み重なっている過去を確認しながら新しい今の思い出を作る行事でもあるわよね、お祭りって」
 あのゆいが落ち込んでいた時期があったのを知ったのもびっくりしたけど、立ち直り方もゆいらしくて安心したわね。
「それと前に拓海が言ってくれた通りでもあったのかなー。おばあちゃんがいなくなって寂しいけど、おいしーなタウンの人達と普段通り接していれば、それはおばあちゃんの教えやおばあちゃんのおかげで縁のできた人達と触れ合っていくうちにもっとおばあちゃんがここにいたことを確認していく生き方ができるって。落ち込んでそれを見逃す方が勿体ないよね」
「あら、拓海がそんなこと言ったの?」
「うん!今日ももっと拓海と遊びたかったなー」
 ・・・まああの子ったら、自分の思い出よりもゆいがおばあちゃんのことを思い出す瞬間を大切にしてあげたってことね。端から見たら拓海こそ勿体ないことをしているって思えるけど、拓海はきっと本当に落ち込んでいる時のゆいの姿を知っているからこそ似たような動きをして守っているのかもしれない。ふふ、私はケットシー君もゆいとくっついても良いかもなんて思ってたけど、ゆいと似てしまっているのは拓海の方よね。これからは拓海をフォローして私が昔のゆいごと拓海も救う動きをしてあげないとね。
「でもやっぱりおばあちゃんの言葉通りだったねー、過去の思い出に耽るよりも、今大切なことをするべきだって。過去はその後にもついてくる。今を全力でトロピカろー!って」
「あら、おばあちゃん、トロピカってるも言ってたの?」
「あ、今のは私がちょっとアレンジしちゃったかな。段々おばあちゃんの言葉も、私の思い出で変わって行っちゃうのかな」
 一瞬、悲しそうな顔をするゆい。でもすぐにいつものゆいに戻っていった。
「マリちゃんこそ!今日のお祭りありがとうね!優勝おめでとう!私も動画編集したり裏方のお手伝いできて楽しかったよ!」
「ふふ、同率一位だけどね」
 おばあちゃんの思い出を上書きするみたいで寂しいかもしれないけど、でもそれでいいのよね。
 拓海、ゆいはあなたが思っているほどもう弱くはないわ。あなたの思い出も、おばあちゃんに遠慮しなくても上書きしても良いと思うわよ。
 たとえ上書きしようとおばあちゃんの思い出は決してなくならないことを、ゆいはもう知ってると思うから。
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