プリキュア創作9

□拓海とケットシー
1ページ/2ページ

「へえーここがあのケットシーの中の人が働いているレストランかー」

 何かドリーミアで怪しい動きしていたみたいだけど、一からスタートして今度は人間のシェフとして子供達の笑顔を守ることにしたんだな。俺もあの時はよく分からないで戦ってたけど、人助けに参加できたみたいで何よりだな。
 ・・・おっと、俺がブラックペッパーだってことはばれないようにしないとな。

「・・・どうも、品田拓海君・・・いらっしゃい・・・ませ」
「お・・・おう、よろしくな、ケットシーさん・・・」

 ってケットシーの中の人、結構かっこいい青年でびっくりしたんだけど、何だか俺に怒っているように見える・・・?単に接客が苦手なだけなのかな?

「こんにちはー、ケットシーさん」
「はーい!いらっしゃいぼく〜〜〜、僕のレストランドリーミアにようこそ〜〜〜、君に素敵なお子様ランチをプレゼントするね!」
「わーい、ありがとー」

 ・・・って他のお客さんにはケットシーのままで接客してるな。単に子供に優しいだけなのか?それとももしかして俺のことをブラックペッパーだと見抜いていて恨んでいるとか?

「・・・はあ、駄目だな、僕は。お客様によって態度を変えるのはよくない。気持ちをすっきりさせるために君とはまずはちゃんと気持ちを明かさないとね。品田拓海君、向こうのVIP席に案内するよ。ちょっとそこで腹を割った話をしたいんだけど、いいかな。お題は結構だよ」
「お、おう・・・」
 なんだろう、ただ飯を食えるなら俺はほいほい行ってしまうんだが、そこでブラックペッパーの正体の話とかするんだろうか。それともまだこの店では人を人形にしてたりするのかな・・・
 俺は万が一の為にいつでも逃げれる覚悟を臨んでその部屋に入ってみたら・・・

「品田拓海君!!!君は和実ゆいちゃんとはどんな関係なんだい!」
「・・・は」

 ブラックペッパーとはまた、違った方向でびっくりする質問が飛んできた。

「・・・どんなって・・・どんな?」
「・・・僕は和実ゆいのことが・・・好きだ・・・」
「はあ!?」

 いやいきなり何言ってるんだこの人は!やっぱりきぐるみに入って無くても少しぶっ飛んだ人だった。

「いや分かってるよ。この気持ちを年下のゆいに向けるのはあまり健康的ではない。僕はかつて孤児で一人ぼっちだった時に、たまたま立ち寄った和み亭で彼女のお子様ランチを食べて心が救われたんだ。僕は不幸な生まれかもしれないけど、それでも平等に愛してくれるご飯や和実ゆいのような救いがあるんだって、その時初めて思えたんだ」
「は・・・はあ」
 それっていつくらいの話なんだろうか。まさかゆいとケットシーが会っていたとはな。今だってゆいは気軽に和み亭のキッチンに立たないから、それってまだ分別のついてないかなり昔のことじゃないか?
「・・・だから僕のこの『好き』という気持ちはまだ恋愛感情ではないとは思う・・・そう言い聞かせてきた。僕が和実ゆいのことを大切だと思うのは子供の頃の自分を救ってくれた博愛のヒーローに向けての憧れだ。それを独占欲の愛と一緒にしてはいけない。頭でそう分かっている・・・」
「お、おう・・・」
 何だ、別にゆいの優しさに勘違いしてるって訳ではないんだな。ケットシーがどんな生まれかは分からないけど、人にたまたま優しくされたら好きになってしまったじゃこの先苦労しそうな気がする。悪いことじゃないとは思うけどな。
「でも!君という存在を知って僕は初めてそれ以外の愛を自覚してしまったかもしれない!!!ゆいがたまにこのレストランに来てくれるんだが!その時に近況報告で君の名前が出てくる度に僕は変な気持ちになってしまうんだ!ゆいにはもう!特別好きだと思える相手がいるかもしれない!彼女が本当に好きなら僕は身を引くつもりだけど!何だか話を聞けば聞くほどただの幼馴染みにも聞こえる気がするし!でもどこか大切な異性として話している雰囲気にもたまになる!わからない!拓海君!無礼を承知で聞くが今日は来店ありがとう!そして僕のこの気持ちをはっきりとさせて君に清々とした気持ちで料理を届けたい!」

 君は和実ゆいの何なんだ!!!

 っと。

 結局ブラックペッパーの正体より答えるのに躊躇する質問がきたな・・・さてどうしたものか・・・

「・・・その前に、お前の中で勝手に盛り上がって誤解しているところがあるから、そこだけ答えていいか」
「ああ、いいとも。僕の悪い癖だからね。自分の見た範囲が世界の全てだと思ってしまう。だからこうして僕は行動に起こす前に他人の視点をちゃんと会話で聞くようにしたんだよ」
 ・・・それはいいことで。ドリーミアの事件からちゃんと反省しているようだな。
 ・・・次は俺がしっかり話す番だ。

「ゆいと俺は別に・・・そういう関係じゃないよ。ただの幼馴染みだ」
 ・・・まだ、な。それは何故だか口に出せなかった。
「ほ、そうなんだ」
「・・・それと、ゆいをまるで完璧なヒーローみたいに言うけど、それも違う。あいつにも迷ったり、一人ぼっちで寂しいなって思う時もあるんだよ」
 確かにドリーミアでの戦闘であんたのことで悩んでた場面もあったよな。あれもゆいにとってはレアな瞬間だったけど。それよりもっと前に・・・
「・・・君は、和実ゆいが今の和実ゆいになる前のことを知っているのかい?」
「・・・ああ、あれはちょっとした事情で、ゆいの大好きなおばあちゃんにしばらく会えなくなってしまったことが分かった日だった」
 あの時のゆいは信じられないくらい落ち込んでいた。いつも明るいゆいだと思っていたが、おばあちゃんが心の支えで、そこに俺は入れないことを当時は痛感した。そりゃそうだ、俺はヨネさんにはなれない。けど。
「でもゆいはたとえ物理的におばあちゃんには会い辛くなったとしても、みんなの中におばあちゃんがいることを知ったからまた前を向けたんだ。おいしーなタウンの人のほとんどの人はヨネさんに何かしらの助けを受けて生きてるからな。そんな人達と暮らしてると自分の知らないおばあちゃんの話や新しい教え、言葉をもらってそこにヨネさんはいなくてもみんなの中にヨネさんがいることを知って元気になったんだ」
 この間のおいしーなグランプリでもタカオさんとみやこさんからヨネさんの話を聞いた時にあいつ、嬉しそうだったもんな。
「・・・だからケットシー・・・あんたとの戦いはゆいも苦労しただろうよ。おばあちゃんの言葉では通用しないような、自分の力で何とかしなきゃいけない状況だったしな」
「・・・そうか、ゆいの中には彼女のおばあちゃんの存在が大きいんだ」
「・・・そう、だからそのおばあちゃんが消えそうになった時に、ゆいはものすごく落ち込む」

 俺の気持ちがゆいがまだ好きかどうかは分からない。
 ただゆいがここね、らん、あまね生徒会長、そしてケットシーを救ったのはかつて一人ぼっちになりそうだった自分がおばあちゃんに救われたから、その恩返しだと思うんだ。
 俺はゆいのそんな行動をすごいって思うし、またゆいが落ち込んでいる姿を見たくないってだけだと思う。
 これが好きって気持ちかどうかは分からないけど。

「俺はゆいにまたあの時の自分は世界で独りだけなのかな、って気持ちにさせたくないだけだ。おばあちゃんの言葉がたまに効かない状況があるかもしれないけど、その時ほんの少し助けられる存在でいたい。それが俺のなりたい、和実ゆいの前の品田拓海だ。元気のないあいつを見てると、俺の調子も狂うからな」
「・・・そうだね、何か行動を起こす時は全て自分の為にやるべきだ。きっと相手の幸せはこうだと決めつけて、独善的に動くのは危険だよ。君はかつての僕よりは正しく動けているみたいだね。やっぱり僕のライバルだ。今日はちゃんとお話出来て良かった」
「・・・お、おう」
 お前の欲しい答えになってるかどうかは分からないがな。
「そして今日から改めてライバル宣言だ。僕もゆいを独りにさせない男になってみせる。君に負けないよ」
「・・・って結局また一人で盛り上がってないか?俺はまだゆいのことを好きだとかそういう風には・・・」
「んー、でも僕がゆいのことを好きだって言った時の君の顔、『嫉妬』しているように見えたけど〜」
「な!」
 結局こいつ、人をおちょくるケットシーの部分もちゃんとあるんだな!
「まあいいや、ここからはフェアに行こうよ。どっちがゆいのハートをキャッチするか、正々堂々勝負しようよ」
「・・・だから俺は・・・」
「ほら、その顔だよ。嫉妬の顔。君が自分の心に素直になるのに時間がかかるようなら先に僕が動いちゃうからね。恋愛はスピード勝負!だよ!」
「む・・・」
 だよな。ここねあたりもいつゆいに告白するか分からないし、俺に残された時間はかなり少ないかもしれない。
 この気持ちをしっかりと、自分の中で整理しないとな。
「・・・ありがとう、ケットシー。俺を焚きつけてくれて」
「いやいや、君にも助けられたからね。これは借りはチャラだよ。ブラックペッパー君」
「な!おま!何でそのことを!は!俺!もしかしてさっきゆいとお前が戦っていたことをつい言っちゃってた!」
「うん、まあ僕もスペシャルデリシャストーンの研究をしていたから君の存在はすぐに分かったよ。でも言っただろ。これからはフェアだって。正々堂々戦おう」
「お・・・おう・・・」

 ここねだけじゃなくて強力なライバルが登場したな。大丈夫だろうか、俺・・・
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ