プリキュア創作9

□又三郎とれいら
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「プリキュアチームと元敵チームで集まって野球チームをあつめよー!オールスター野球大会だよー!」
「な・・・なんじゃあの連中は・・・」
 宏介があれから友達をどんどん増やして野球チームを作れるくらいになっていった。何やかんや子供が外で大勢の人達と遊ぶのは良いことだと最初は見守っていたが、何だか次第に変なお姉さん達と変な生き物が集まってきてまるで妖怪大戦のような野球大会が始まっていった。
「ふははは!星奈ひかる!この俺の豪速打ってみろ!」
「キラやばーーー!かきーん!」
「打たれた!?」
「へへん、野球の本場で鍛えてるからね!」
「ナルシストルー!取れ!」
「とりゃーーーー!キャッチ!」
「おお!アウトにはできなかったがスーパーキャッチだ!二塁進塁を阻止するんだ」
「ふふん、まあこの俺様にとってはこれくらいのボール取るの何てことないぜ。これで刑期少なくならないかな」
「キラやばー!ランニングホームラン!」
「こらあああ!キャッチしてからのうのうと自慢してるんじゃあないよ!あと星奈ひかる!はや!キラはや!」
 っと宏介、こんなところで野球して大丈夫なのだろうか。近頃の若者はすごいのお。
「ふふ、何だか最近の若い人達の仮装ってすごいですよね、おじいさん」
「む、あなたは・・・」
 っと呆然と野球大会を眺めていると綺麗な女性から声をかけられてしまった。この声、どこかで聞いたと思ったら・・・
「又三郎さんですよね、有名料理人の。私は薬師寺れいらと申します。燃える炎の料理人の時はあなたの料理店にこっそり行って役作りの勉強しにいったこともあるんですよ」
「やややや!薬師寺れいささん!あの大女優の!ふぁ、ファンです!いつも朝ドラ見てました!」
「ふふふ、やだ。私がデヴューして間もない頃のドラマですよね。そこからファンでいてくれたんですか」
「ええ!そりゃもう!毎日仕込みが終わってから見るのが楽しみで楽しみで・・・っていうかわしの店に来てたんですか!?全然気が付きませんでした!」
「そりゃまあ変装してましたからね。でも今の子達の変装技術もすごいですよねえ。ハロウィンがどんどん盛り上がっているみたいね」
「あ、あの連中はハロウィンのコスプレだったんですね。なるほど、納得・・・」
 うおおおおお!何だか宏介の知り合いに変な人ばかり集まってきたと思ったらまさかの薬師寺れいささんも来てるぞ!どどど、どういう繋がりで・・・
「私の娘もこの野球大会に来てるんですよ。ほら、あそこでバッドぶんぶん振ってる。ふふ、あの子ったらホームラン王の称号の『ホーマー』を手に入れる為に張り切ってるのよね」
「おお、あの子も確か元女優の・・・確か薬師寺さあやちゃんでしたかな」
「ええ、今は別の夢を見つけて勉強中なんだけど、お友達が沢山できたみたいだから今は普通の子としてこんな野球大会に出れるようになったわね。私もそれを見守れる立場になれて良かったです」
 ・・・わしも、宏介を半ば無理矢理料理人にしようとしていたが、そういえば薬師寺れいらさんは娘が自分と違う道に進んでいることをどう思っているのだろうか。
「・・・れいらさんは、寂しくないでしょうか。その、娘さんと違う道に進んで」
「・・・まあ別にさあやちゃんが他にやりたいことあるならそれを優先すればいいんじゃないでしょうかね。親の名前で売れていっても、いつか壁にぶつかって苦しい思いをするのは彼女なんですから。それを自分で気が付いてくれて良かったわ」
「あ・・・」
 ・・・そうか、わしは年を取って自分の未来のことばかりを考えてしまったが、宏介には宏介の未来があってそれを尊重するべきなんだよな。わしの受け継がせたいのであれば弟子でもなんでも雇えば良かったのだ。
「それにあの子が最初に芸能界入りをしたのも別に周りの人間に担がれたとかじゃなくて、私とお話したいために女優になったみたいなのよね。それもこの前のドラマで共演することで最初の夢は叶った訳だし、今の彼女は次の夢に進めているんですよ。親としてこんなに嬉しいことはないわ」
「次の夢、ですか」
 そうじゃな。最初は誰かの憧れで真似や教育で目標を決めることは悪いことではない。それで世間や自分を知って、本当に自分にあったやりたいことを見つけるのもまた人生だ。
 ・・・ってそんなこと、ヨネさんも言っていた気がする。確か彼女も最初は料理人じゃなくて別の道も探していたなんて、懐かしいことを思い出してしまった。
「・・・やっぱりみんな強いですな。わしは柔軟性がなくて、脆い」
「やだ、でも又三郎さんの頑固なところも私は勉強させてもらったんですよ。あ、でも頑固な人の演技が実生活でも染みついて怖いお母さんになってたのかもしれないのは反省しなきゃいけないですけど・・・」
「え、じゃあもしかしてれいらさんとさあやちゃんがちょっとぎくしゃくしてたのって、わしのせい?」
 ・・・そ、そんな。わしは人様のしかも憧れの薬師寺れいらさんの家庭環境まで変にしてしまっていたのか・・・?
「まあそれも終わった話ですし、大切なのは今ですよ。一緒にあのハロウィン大会みたいな野球の試合を応援しましょ、又三郎さん」
「あ、ああ・・・れいささん」
 そしてこの未来に進む姿もやはりヨネさんを思い出す前向きさがあった。わしの人生はいつもこんな女性に応援されてばかりじゃな。
 ・・・わしも宏介にとって、そんなおじいちゃんでいられるよう、なりたい自分に向かって未来に進んでいこう。子供はそんな大人の背中を見て育っていくものじゃしな。
 薬師寺さあやさん、あなたがどんな大人になっていくのかも楽しみにしてますよ。
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