コラム部屋

□アニメ感想
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創作品を作る上で頭を悩まさねければいけないのが
オリジナル要素
である。

嗚呼、一体何万人の創作系人間が、これで苦労しているというのだろうか。
小説なり漫画なり、売り物である以上、何かの真似事で始めた物語は「偽物」のレッテルが張られがちで、「お金払っても見たいとは思わんは!」と敬遠されがちです。
そもそも偽物でないとはいえ、我々は「暇潰し」のものを作る性分、どのみち自分にしか考えられない意外性のある工夫をこなさなければ、エンターテイメントの世界では生きていけないでしょう。

その工夫は、アイデアだったり、起承転結の構築の複雑化だったり、絵柄の違いだったり。
ざっと市場を見回してみて下さい。
あんな作品、こんな作品。皆それぞれのパーソナリティを得ようと必死な作品ばかりなのです。
それが今の市場。
何か人違うものがなければいけない前提で、だけどある程度の常識や技術も必要なんです。
だから私達ができることは、やはり自分の物語だけのセールスポイントを創意工夫して、世の中をあっと驚かせるくらいの気概で作品を作り続けていくしかないのです。


偉そうなこと述べてますが、かくゆう私も作品のアイデンティティーを探し続けている一人。
オタク、と一言で言っても単にアニメやら漫画やらを見ているのでなく、その作品のパーソナリティを見極めて、
自分ならこのテーマをどう料理するのか、この演出はどうたら
とかとか。

「アオイホノオ」的に言えば、自分が発信者のつもりで各メディアを眺めていることが多いです。

秋アニメ感想ラスト作品、「ベントー」。

この作品も世の中に出回る創作品の一つであり、どちらかといえばアニメ好きなオタクをターゲットにしているこの作品。(原作はラノベ)

どうして、この作品を秋アニメラスト感想にしてしまったのか。
一言で言えば、秋アニメの中で最もコメントしずらく、そして最も個性がありすぎて紹介しずらい作品。

もっと砕けた言い方します。

まじでぶっ飛ばしすぎてますwこの作品。
んもうその個性の強さ否や、確証を持って言えます。
ピングドラム以上に言葉で説明しても言いたいことが伝わらない作品です。
だからこそここまで寝かせておいたとも言えるでしょう(キリッ

言っても伝わらないだろうな…を前提で、この作品を一言で表します。

「半額弁当を奪い合う物語」

………先程述べて通り、創作品というのはアイデア勝負の世界であります。
自分の作品を作る時にも、ここが自分の作品のオリジナリティだ!と胸張って言えることを目指してネタを考えてます。

over the horn→
鬼の漫画家の物語

デュアルフレイ→
未来の自分の幽霊にとりつかれる物語

トライデント→
裏切りから始まる師弟物語

ベントー→
半額弁当を奪い合う物語

(^ω^)?











いや、まさか。そんな訳ないじゃん。んな、いくらネタ勝負の世界とは言っても、何でもかんでも突拍子のないことをキャッチコピーにすれば良いってもんじゃないですよ。
私達小中学生じゃないんだぜ?
ジャンプマガジンよか一週回ってコロコロGを好きになるお年頃だぜ?
「半額弁当を奪い合う物語」
って、いくらなんでもwww
そりゃインパクトあるキャッチコピーだとは思うよ。
っていうか自分もある。そんな下らないこと真面目に描こうとするタイプのギャグ。シリアルな笑い、って言いましたけ?
普段目につけないジャンルに色んな設定つけ加えて誇大表現する手法。まあ、創作の基本的な考えでインパクトもあって書き手のモチベーションが上がる手法ですよ。
私も五大栄養素を戦隊ものにしたり、蜂駆除を生業とする主人公書いてたりしてましたよ。
だから認める、その手法は大いに認めますよ。
でも
「半額弁当を奪い合う物語」
って、いくらなんでもむちゃくちゃすぎやしませんか?なんだか見切り発車も良いところですよ。見る前から1クルー走りきれないでネタ切れで失速するのが目に見えてるよ。
でもまあばかなことを真面目に描く、ってこと自体は私達にとって同じ土俵で勝負している作品なんだもの。失速することが分かっていても、それを含めて見守るのが同志としての務めでもあるじゃないですか?
そこはあまり期待値ばかり高くしないで、気楽に楽しんでみるというのが、大人のオタクとしてのマナーってやつですよね。

よーし、どれどれ肩の力抜いてベントー見てみますか………





































…………………

ごめんなさい、むちゃくちゃ面白い作品でした。

いわば見る前はそんなに期待してなかったけど、実際見てみたらはまりにはまる作品、それがベントーでした。

まずアイデアを生かす世界観が素晴らしい。
ストーリーの設定上、学生である主人公達はお金がないのでスーパーの半額弁当を買って生計を立てるしか生きていけない。
かといって、皆同じ環境の人間の集まり故、問答無用に半額弁当を独占してしまうのもいけないので、スーパーで半額を奪い合う際の勝負のルールを厳密に決めて、人に迷惑を掛けない程度に決闘を行い弁当を奪い合う。

ここまではいい。
問題は作中のキャラで
誰一人ツッコミするキャラがいないこと。
完全にツッコミを視聴者の心に丸投げしている作品です。
そのツッコミを省略しているせいか、物語のいきいきっぷりが半端ないです。
そんなに強くない主人公、バトルものなのに誰一人特殊能力を持った人間が出てこないベントー。
作品のバトルシーンを盛り上げてくれるのは、純粋なる肉体的な戦闘シーンとBGMとそして半額弁当を求める「狼」達の狩りの矜持。
「突っ込んだら負け」みたいな回ばかりでした。設定がアホすぎるのに、たかが弁当を得るために戦う姿がハングリーすぎて、全てのツッコミを野暮に還元していくようでした。

ただ半額弁当を奪い合うだけでなく、あらかじめ決めた決闘のルールの暗黙の了解を破るもの、ルールの隙間で甘い蜜を吸う心根の腐ったやつ。スーパーの縄張り戦争ばかりに気をとられ、「狼」の矜持を忘れてしまったもの。半額弁当を食べるために、数日間飲み食いをしなかった者。社会を作り、自分達だけのルールを作り勝負をしないで楽に半額弁当を得ようとする者達。

敵役の背景色々あれど
「けどそれ結局半額弁当食べるためにやっているんだよね?定額で買えよ!っていうか自炊しろよ!」
と一言言ってしまえば全て崩壊してしまうアンバランスな世界。
だけどそんな世界で戦う彼のアホな姿は、何か半額弁当以前の、ゆとりボケしている私達に欠けている何かを目覚めさしてくれるようなくれないような。
そんな曖昧な、文字通りフィクションな世界。ある意味創作品における「非日常世界へダイブして、休憩する」という役目を一番果たしていた作品かもしれません。

確かに、おもちゃで世界制服しようだとか。料理で世界制服しようだとか。裸エプロン同盟を作ろだとか。
創作品は、いつだって私達にそんな「夢」を提供してくれる存在でいたはずだ。
夢を売る仕事だったはずだ。
夢があれば、たとえどんな辛い日々でも有意義に暮らせるものなのだ。
そんな当たり前に気づかせてくれたベントーに、この秋に出会えて本当に良かったと思う。この作品に出会えて、大切なことを学べることができたのだから。






自炊しよう。
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