プリキュア創作6

□輝木ほまれ誕生日SS:2018−3
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「あれー!さあやとさっき廊下出会った美人さん!何で屋上にいるのー!?」

 っとドアを開けた途端にびっくり箱を開けたみたいな仕掛けで声をあげる変な前髪の女の子が登場した。えっと、確か私も遅れてクラスに入って改めて名前を知ったんだけど・・・

「野乃・・・はなさんだっけ」
「あ!私の名前!覚えてくれてたの?あれ?でもどうして?さっき廊下ですれ違った時は名前聞いてなかったよね?」
「・・・それは・・・」

 あとで気になったから調べちゃった、何て言ったら怖がられちゃうかな。一応今の私は不良ってポジションだから本来ならこんな善良そうな二人と絡んではいけないのだ。あとで変な噂が立ったら迷惑かけちゃうだろうし。

「私が紹介してたのよ、野乃さん。ほまれさんは昨日事情があって遅刻してたから委員長の私が色々説明してたのよ。転校生がくるなんて一大イベントはまず話しちゃうしね」
「おおー!さすが天使の委員長!じゃあさしずめ誰もこないこの屋上でひっそりと作戦会議でもしてたんですね!ひゅーひゅー、何だかお熱い関係ですな!」
「な!いやちが・・・私とこの子はそんな関係じゃ無くて・・・」
 ってまずいまずい、私はこの子達から離れなきゃいけないのにこの子ぐいぐいくるな。その性格、羨ましい・・・じゃなくて普通の子はそりゃ転校初日で毎日新しいお友達出来て楽しいんだろうね。私が単に昔の経験引きずってネガティブになっているだけだろう。
 ・・・この前向で明るい野乃さんと友達になれたら私も変われるのかな。いけない、早く離れなきゃいけないのにどうしてそんなことばかり考えてしまうんだろう。
 ・・・私はまた傷つきたいの?

「・・・ここに来たのはね、何だか赤ちゃんの声が聞こえたから心配になってきてみたの。ほまれさんとのそういう会話はプリントを渡す時とかに言ってるから大丈夫だよ」
「あー!そうだ!私もその赤ちゃんの声が聞こえてここにきたんだった!いたの?心配だよね!何だかママを探しているような声をしてて、猫ちゃんの声とも違うし・・・」
 っと今度はキョロキョロと動き回ってその赤ちゃんを探す野乃さん。ほんと急がし子だな、私がネガティブになる暇がないくらいだ。っていうかこの子ももしかして猫ちゃんの声ではって案はあったんだ。私もいつか猫飼ってみたいな。犬でも良いけど。いっそ二匹飼ってみようかな。でも猫と犬って仲悪いのかな?あんまり二匹同時に飼ってる人っていないよね。
「・・・二人で探してみたけど、赤ちゃんはここにはいないみたいね。それに猫ちゃんでも無かったみたい。ほんと不思議な現象だったよね。それに見て」
「ん、なになに?」
 っと薬師寺さんに釣られて屋上から校庭を見下ろす。結局私も流されてばかりだな、って思うけど。
「・・・確かに、他の運動部は気にせず運動を続けてたり、他の生徒や先生はまるでその赤ちゃんの声が全く聞こえてなかったみたいな素振りしてるよね。これってまさか・・・」
「幽霊だったの?赤ちゃんの?」
「いやーーーーーー!やめて!そういう話怖いから!勘弁して!!!私今日もう学校から帰れないかも!」
「まあまあほまれさん、落ち着いて。今日一緒に帰ってあげるから」
「・・・ほんと?ありがと・・・」
 って結局離れるどころか離れられなくなってない?う、こんなはずでは・・・でもお化けは本当に苦手だからそこはマジ助かるんだけど。
「・・・だとしたら余計ほっとけないよね。赤ちゃんのまま死んじゃったなんて、絶対に駄目だよ・・・」
「・・・うん、そうだね」
「野乃さんに薬師寺さん・・・」
 って結局不良の私よりもこの二人はよく分からない幽霊の心配をしている。幽霊を怖がらないなら不良も怖がらないのかな。っていうか二人とも想像力すごいよね。確かに私も赤ちゃんの気持ちになってみたらまだ子供なのに死んじゃったのは悲しい。あんなにきゃわたんなのに、私だって怖がってばかりじゃなくてこの二人みたいに赤ちゃんを助けられる存在でいたい。
「・・・それに幽霊の線も薄いと思うの。私ね、前に番組で・・・」
「・・・番組?」
「ああ、いや。街頭インタビュー的なあれで霊媒師さんに突撃で霊感を診て貰ったことがあるの。そこで私全然霊感ないことが証明されたのよね」
「へー、そんな企画あるんだ。いいなー、いつ放送するの?」
「も、もう結構昔のことだったから、それに没になったみたいだから結局放送されてないんじゃないかな?そもそも霊感ない人の場面なんて撮り高よくないからエンタメ的にはアウトだし」
「ん?撮り高って何?」
「ああ!いや!その!つまらないシーンだからカットってこと!」
「ふーん」
 撮り高って専門用語だよね。薬師寺さんはよく知ってるよなあ。以外と芸能人のことを伏せてこの学校に入ってたり。そういうコースもあるみたいだしね。私はスポーツ科から落ちて普通科に来ちゃったんだけど、この子ももしかしてそういう経緯だったりしてね。薬師寺って名前だからあの有名な俳優、薬師寺れいらの娘だったりして。いやいやまさかそんな偶然ないとは思うけど。
 ・・・でも本当に赤ちゃんが私達を呼んだミラクルがあったみたいに。
 芸能人同士の私達を会わせてくれたのかな。
 ・・・だとしたら仲良くなれるかな。いやまあこれはあくまで私の妄想なんだけど。

「・・・だから猫さんでもない、霊感のある人がここに集まった訳でもないとなると、さっきの現象で消去法でありそうな線と言えば・・・」
「「線と言えば・・・」」
 って野乃さんとハモってしまった。この子とも何か仲良くなれそうだな。
・・・じゃなくって幽霊じゃないならもう私も帰っても良いだろうに、結局話を夢中になって聞いてしまった。赤ちゃんの声も気になるけど、何だかこうして昼休みに友達と変なことで盛り上がれるってことが久々だったので楽しかった。もしかして赤ちゃん、私達をここに集める為に泣いてくれたのかな、なんちゃって。
「私達を会わせるために、呼んでくれたんじゃないの?」
「あ・・・」
 心の中で思っていたことを言葉にしてくれて、何か急にすごく嬉しくなってしまった。そんなことあるはずない、って頭では分かっているのに。委員長で頭も良さそうなこの子がこんな変なこと言うのおかしいって思ってるのに。
「そっかー!だとしたらロマンチックだよね!ほまれさんもそう思う?」
「わ、私は・・・」
 ど、どうしよう。この三人と思考回路が一緒だったことが嬉しくて、笑いたいけど、まだ私の心のどこかではストップをかける。
 やめておけ。
 また友達を作ったところで。
 同じように傷つくだけだぞ。
 その声は赤ちゃんではなかった。この二人にも聞こえてない。私の心の内から聞こえるトゲトゲした声。
 ・・・こんなこと思ってしまう私が、この純粋な二人と友達になっていい訳ない。

「・・・私は別の案も推すけどね」
「・・・ほまれさんはどう思うの、この赤ちゃんの声の正体」
「・・・それは・・・」

 全く考えてないけど、ここはアドリブで答えるとしよう。私とこの子達を友達にする為に赤ちゃんが呼んだ訳じゃ無いはずだ。この子達と私は全然違う人間なんだから、その証明的なことを言えば良いんだよね。
私は心の内側の、トゲトゲした気持ちを言葉にし始める。そうだ、私とこの子達は仲良くすべきじゃないんだ。きっとまた傷つける。今から話す言葉はこの子達を助ける為の言葉なんだ。
・・・どこかで聞いてるかもしれない赤ちゃん。あなたはこの為に私をこの屋上に呼んだんだよね。
もうこの先の私の人生、絶対に友達を作らないきっかけのためなんだ。
昨日誕生日を迎えて14歳になったことだし、ここで新しい自分に改めてなろう。
私はこの子達と友達にならない為の理由を話し始める。
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