プリキュア創作6

□風鈴アスミ誕生日SS:2021
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「アスミちゃん!一歳のお誕生日!おめでとー!」
 
 っと用事があってしばらくすこやか市にいたのですけど、どうやら私が誕生した日とかち合ったみたいですね。

「これでやっと節分の豆を一つ食べれるのですか…うう…二月は屈辱でした…」
「そ、そこなんだ、悔しがるの」
「ええ、でもティアティーヌが言うには私、肉体的には二十歳みたいなので本当なら豆を二十個食べていいのでは?」
「あ、じゃあ食べる?今は二十一個になるのかな」
 そう言われてのどかのお父さんのおつまみの大豆のお菓子をもらう私。美味しい。
「うう…本当なら二月の時に気がついておくべきでした…もぐもぐ…美味しい…」
「でも本当ならおつまみのお菓子じゃなくて味のない大豆なんだけどね」
 ふむ、そうですか。それでは今度はちゃんとした大豆を食べてみたいですね。
「二十一個も食べたら飽きそうですけど」
「ふふ。じゃあ次の節分の時は一個、その次は二個って年を重ねるごとに少しずつ増やしていこうね。そしたら年齢を重ねる生きてる!って気がする喜びも感じることができるよ」
 …それだと少ない気もしますけど、でも確かに自分の年齢が増えていく喜びみたいなのを実感できるのかもしれませんね。
 …ヒーリングガーデンに滞在中、私はティアティーヌに言われたことを思い出す。
 私は人間ではない。
 ビョーゲンズとの戦いが激化する最中、ティアティーヌの願いで咄嗟に生まれたかつてのキュアアースの素体となった人間のコピーの精霊である。
 そしてキングビョーゲンとの戦いが終わった今、精霊としての生き方が主に二つあると聞かされている。
 一つはこのまま残党ビョーゲンズとの戦いや引き続き人間界の監視をするためにこの肉体的には全盛期の姿の二十歳のままでいる、地球を守る装置として永遠に生きる生き方。確かそれを選ぶとこの私が生まれた日の誕生日なる日に身体の巻き戻し現象が起きると言われてましたね。私は会ったことないのですけど、それはさながら過去を司る精霊のリフレインが起こした現象のように身体だけ一年前に戻ってしまう、老化を防ぐための退化が起きるはずです。
 そしてもう一つの生き方が…

「ささ、お豆を食べるのはその辺にして、みんなが待ってるとこにいこうか、アスミちゃん」
「みんなが待っている…」

 どうやら人間界での『誕生日』というのは単に年を重ねる訳ではないようです。私はのどかに連れられた部屋のドアを開けると、そこで…

 パンパーン!

 っと軽めの爆発音がする。確かクラッカーというものだったでしょうか。東京でカグラさんのお誕生日でも使ってたのですね。続いて

「アスミちゃん!誕生日!おめでとー!」

 っとちゆ、ひなた、康子に健に私がアルバイトでお世話になったお店の店長、他にもこの一年間でお世話になったすこやか市の皆さんが私に暖かい言葉を与えてくれた。
 …そっか、誕生日というのは
 こんな風に、生まれたことを喜ぶ、生きてるって気がする日を感じる日でもあるのですね。

「ありがとうございます、皆さん。そして改めて、ごめんなさいです」
「ええ!?何でそこで謝るの!?アスミン?」

 何となく、一つ目の生き方を選びそうだった私。その事情はみんなは知らないとは思いますのでここでは口外はしませんが、前にそれと似たようなことをしてしまったことをこの場を借りてもう一度謝罪することにする。
 私はこんなに、生まれてきたことを皆に祝福してもらったというのに、それも自覚しないで

「…皆さんを悲しませないように、これからはならべく自分を犠牲にしない戦い方を選びますね」
「…そっか、アスミちゃん。シンドイーネと融合したこと、まだ気に病んでたんだ」
 これはプリキュア間でしか伝わらないことかもしれないけど、どうやら街の人にもなんとなくバレているみたいなのでそれとなく伝える。
「…私はかつての戦いで自分を犠牲にしてでも皆の過ごす街を守るために賭けにでたことがあります。その時は勝算もありましたし、何より何かを犠牲にしなければ勝てない状況でしたので私のした行動に間違いはなかったと今は自負しています。しかし今頃になって、皆さんにこうしてお祝いしてもらって心の中で申し訳なさが広がってきましたね…これが罪悪感…」
 私は皆のにこんなに愛されているというのに
 そんな自分を否定するようなことをしてしまった。
「過ぎたことをとやかく言ってもしょうがありませんが、次はもっと自分を、自分を愛してくれる人達を悲しませないような選択をするように成長したいと思います。これもまた、生きてるって感じ、何でしょうか」
「アスミちゃん…私達も、アスミちゃんが生きててくれて嬉しいよ」
 っとのどかがハグをしてくれる。それに続いてちゆにひなたに康子と健と、私のことを大切に思っていてくれた人達が私を暖めてくれる。
 …よし、この誕生日が終わったらティアティーヌに改めて伝えるとしよう。
 私が精霊として選ぶ、これからの生き方の二つ目。
 のどか達と同じ時間を過ごせるように、巻き戻しはしない。老化ではなくて、一緒に成長し続ける生き方。
 心の内側から声がする。

 ふっふふ、あんたがそういう生き方をするなら都合が良いわね。
 年をとって弱くなるってことは、いつかあんたの身体を乗っ取れる日がくるかもしれないってことね。
 私もあんたの誕生日をお祝いするとしましょうかね。おーっほっほっほ。

「あ、私の中のシンドイーネも祝福してくれてますね。ありがとうございます」
「ちょっと!今闇の声みたいに決まってたのに声に出さないでよ!空気読んで!」
「…結局あなたも声出してるんですけど…」
「ええ、アスミちゃんの中のシンドイーネ、起きてるの!?」
 ってこれまた事情の知らない人達がポカンとしてる。見る人によっては私の中に赤ちゃんいるみたいな感じになってきましたね。
「…でもいいでしょう、シンドイーネ。今はあなたにも負けないようにと成長するのも私の目標の一つになってますからね。自分と違うものを取り込んで、戦って抗体を得ていく。これもまた進化しながら生きているってことですから」
「ふん、余裕ぶってるのも今のうちなんだからね!とりあえず…」
 何か料理くれー!あんたが食べると私の栄養にもなるしねー!うっししー
 っと心の中で笑うシンドイーネ。
「…結局あなたも誕生日、楽しんでるんですね」
「まーね、私達にはないし、誕生日。でも元々人間だったせいか、風習としてはなーんか残ってるのよね」
「じゃあ今日はシンドイーネの誕生日でもあるってことで」
「うえー、シンドイーネの誕生日は祝いたくないなー。っていうかどちらかというとその状態のシンドイーネの誕生日は半年前にアスミンと融合した時じゃね?ハーフアニバーサリー?」
「ちょっと!それってどうゆうこと!?」
 …まあそれは皆からしたらシンドイーネの誕生日は祝いたくないでしょうし、あとで二人でやるとしますかね。
 …とりあえず今は

「これからもよろしくお願いしますね、のどか」
「うん!アスミちゃんこそ!」

 皆で生きていくこの時間を、大切にしていきましょう。
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