小説

□ホワイトデーSS:8
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 …まあルルちゃんの立場からしての次のステージが斗鬼先生と同じ舞台に立つコミケなんだろう。彼女にしては珍しく僕を誘ってくれたのは勿論嬉しいのだけれど。
 コミケの理念と。
 ルルちゃんと同じく斗鬼先生達とも同じ舞台に立つのであるなら、僕も僕なりに書きたい話を見つけなければいけないだろう。そうでなければ失礼である。
 …あとついでみたいに言うのもそれこそ失礼なんだけど、先日僕の執筆活動を応援してくれた伊舞鬼先生対しても恥ずかしくない創作をしないとね。
 …っていうか伊舞鬼先生、ワンチャンコミケに来そうではあるよな。
「ま、とりあえずは現場を見に行ってから、参加するしないを考えても良いんじゃない?」
「…現場、って?」
「…現場って、そのままの意味のつもりだけど?」
 ルルちゃんは仕事場のカレンダーを指差す。
 いつもは締切日にしか注視していない日数の羅列だけれども、暦の上ではそういえばもうすぐ
「…ああ、もう年末なんだね」
 っていうか本格的にホワイトデーと関係ねえじゃん!このコーナー!そしていつの間にかクリスマスが過ぎてる!何をしてたのかと言えば絶賛ルルちゃんと缶詰で原稿作業していた気がする!いえい!
「…何か勝手に盛り上がっているようで気持ち悪いんだけど、せっかくだから冬コミに参加してくれば?とりあえず会場の雰囲気だけでも肌で感じてくればいいじゃない。年末に予定があるってんなら話は別だけど」
 …まああるとしても原稿さえ終わっていればあとは大掃除だけなんだけど、母さん達からしたらルルちゃんとどっか行く、って言ったら喜んでそっちに行け、って言いそうではあるけど。
 …っていうか。
「今回のホワイトデーSS!まさかの冬コミデート編!?」
「デートじゃないわよ。あそこは戦場よ。そして私は私で斗鬼先生のサークルに並ばなきゃいけないからお前に構っている時間はない。チヨはチヨでコミケの雰囲気を肌で感じて自分で書きたい話を自分で見つけてきなさい」
「…は、はい」
「んでもってついでに私の買い物も手伝ってくれると助かる」
 …あ、やっぱりルルちゃんも普通にコミケ楽しんでるんだね。
「…っていうか探したら私の連載作品の二次創作とかあるかな…わくわく…大体どんなジャンルでもあるって言うしね」
「…原作者ならではのワクワクしてる…いいな」
 っていうかよくよく考えたら別に僕だってコミケに関わらずルルちゃんの作品の二次創作とか書いたら喜んでくれるのだろうか。ルルちゃんに喜んでもらう前提にしてはダメではあるんだろうけど、一応作画スタッフの一員としてはやっぱりまだ彼女の作品の二次を作れる程客観的ではないのかもしれない。
 まあまず普通に漫画描くこと自体難しくはあるんだけど。
 …でもまあ本来なら僕と似たようなレベルのアマチュアの方々が大勢集まってあの場で自作の創作物を展示しているのである。敵情視察と言うか僕と似た立場の鬼達がどんな創作をしているのか、それを知ろうとするだけでも僕はレベルアップ出来るのかもしれない。
 うわー、どうしよう。なんやかんや僕も楽しくなってきちゃったぞー。
「ルルちゃんの作品の二次創作とか発見しちゃったりしたら…『僕、その作品のアシスタントしてますよ』って言ったらびっくりされるかな。うふふ」
「いや、私の作品の顔を借りて威張るなよ。張った倒すわよ」
「あい、ずびばべん…」
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