10/10の日記
21:54
灰夜叉4 プロローグ
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注意!今回の記事は通常記事ではなく「Cassisi」という作品の二次創作シリーズの「灰夜叉」という連載作品の掲載ページとなりますので閲覧注意です。
はい、ってなことで一応宣言通り?今回から「4」を掲載していきたいと思います。先に言い訳をすると今回は(今回も?)ギリギリの進行ですので先に別作品の掲載をしてしまいましたが、「4」は「4」でまたこれまでのシリーズの続き物のラストとなりますので閲覧順にもご注意ください。
一応「灰夜叉シリーズまとめ」ページで順番の整理したやつとかもまとめているんですけど「4」ってタイトルである以上は「3」の続き…
ではなくて
えー実は去年の外伝作品であるべきだった「Gold Suger」がめちゃめちゃ面白くなってしまって「3」より先にストーリーが進んでしまったのでできればこれまでのシリーズ+「Gold Suger」を履修してから見てもらえると助かるモフ…!
簡単なあらすじを言うと「猿」「犬」を倒して桃太郎が出てきて負けたと思ったら明島さんが出てきてどんちゃん騒ぎしてバイバイキンしたあとの話ですね。
え、こんな話だっけか。まあいいや。
正直「Gold Suger」からライブ感覚で進んでいるストーリーとなりましたので一年前と同じくポケ―っと「何してんだこいつ」みたいな心構えで見てもらえると助かります。
ではでは明日も忙しいので?(言い訳)どんどん行きたいと思います。
「灰夜叉」シリーズ最終回!
「灰夜叉4」!スタートです!
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夢を見た。いつもみたいなどうしょうもない自責からの悪夢とも言えないどうでもいい夢だ。
「はあ、宝くじでも当たらないかなー」
いつからだろうか、夢の中でもこれが口癖になってしまったのは。
少なくとも子供のころはこんなこと微塵も思わなかった生活を営んでいたと思う。
ありがたいことに比較的裕福な家庭に生まれさせてくれたし、食うのにも苦労したことはなかった。何だったら恥ずかしげもなく言うなら就職も割と便宜を図ってもらったところがある。
なのにそんな状態で『宝くじ当たってほしい』なんてこと現実で呟こうものなら誰かにぶん殴られてしまうのであくまで夢の中で留めたいと思っているから何回もここで自問自答を繰り広げてしまうのだろう。
俺が宝くじ当たって得たいものは自由だった。
育ててもらった家から、仕事から脱して何も縛りなく、強いて言うならこれからの人生で払わなきゃいけない税金は前払いで払ってあとは好きにいきたかった。
代償。
俺があの家に生まれて裕福に育てられた唯一の縛りと言えばそれだろうか。
まあどんな家庭にしても何も我慢していない家などないだろう。
異常な家庭なんてないように、俺だってその代償をみんながそうやっているように『これはこれでしゃーない』と飲みこんでいくしかない。それができなきゃ大人ではない。
だからこの歳になってからの口癖になっちゃったんだろうな。
二十代後半。
ある程度大人としての洗礼を耐えて、家庭の呪いもある程度慣れてきて一人の大人として本来なら自立し始めなきゃいけない時期である。
実際俺の周りの同級生だった連中も若い頃はトゲトゲして色んなものに反発して苦労していたのを無責任に横目で眺めていたもんだが、そんな連中は段々とその次のステージへと登っていって自由にやり始めている。
ある者は結婚して。
ある者は失恋から立ち直って新しい関係を成功してたり。
ある者は妥協した人生ながらも受け入れて前に進んでいる。
俺だけだった。
俺だけが、そんな苦労や傷つくのが嫌なくせして一丁前に『宝くじ』とか甘いこと抜かして嫉妬から上澄みだけを吸おうとする汚い大人になってしまっていた。
てめえふざけんじゃねえぞ。
そんな適当な人間に宝くじが当たる訳ねえだろ。
当たったら寧ろ不幸だろうよ。
苦労を知らない人間が、コネだけで生きてきた人間が何の努力もなしにそんな報酬を受け取るようなものなら破滅の未来しか見えてこない。
俺のこの不自由という代償は、俺に降りかかる理不尽から守ってくれている盾でもあるんだよ。世の中冷たいと言うけれども、ある程度苦労して成功している人間には配慮してくれるくらいの優しさは残っているんだよ。
俺にとっての盾はこの家であり、そこから発せられるストレスを感じてるからこその『生きる』だ。
この盾以外の生き方を感じたかったら、それこそ高校生くらいの時の家出でも成功させて『家の援助なしで生きた苦労』を選択すべきだったんだよ。
選ぼうと思えば選べたんだよ。
『自由』か『金』か、『愛』か。
そこで高校生の俺が『金』を選んでしまった以上、今更『自由』がないから文句垂れるとか虫が良すぎである。
それが取捨選択の代償だ。まあそれを言ったら未だに選びきれてない『愛』は問題の先送りでそれはそれで苦労はしているけど。
俺は弱い。
そしてクズだ。
生かされて、それ相応のリスクという名の盾を背負わせてくれて面倒みてもらっているのに。
幸せな人生を送らせてもらっているのに。
挙句の果てに宝くじに逃げようとしている。
それはもう心の中で感じただけでも罪と言えるんじゃないだろうか。
だったら良いよ。俺は俺で自分の罪をボコボコに自己否定してやるからさ。
家にも縛られて、残りの余生は自己否定し続ける人生でいいからさ。
その盾でせめて、心の中くらいは。
夢の中くらい自由でいせさせてくれないかな。
「ふーん、まあ君のどうでもいい劣情はいいからさ、早いとこ聞かせてくれないかな。宝くじ当てたら何をしたいのか、その欲を。そっちの方が面白そうだしねえ。あ、っていうかもし当たったらどこのみずほ銀行で降ろす?」
「…は?」
…何だか夢の中だと言うのに話しかけられてしまった。え、何この状況。
そりゃ夢の中なんだから予想不能のことは起きるだろうけどそれにしてもいつもの自己否定の悪夢を見ているかと思いきや唐突に第三者が出てくるなんてパターンは初めてだった。
「とりあえずまずは伊勢丹に行って好きなだけショッピングはしたいよね。あとは都内で一軒家を立てて優雅に暮らしたいなー。出来れば自分専門の美容師雇ってシャンプー小屋立てるの!毎日シャンプーするだけの時間をゆっくり過ごすなんて人生の勝利者だと思わない?ぐふふ」
「いや、あの…」
だとしてもフリーダム過ぎる。
ある意味夢らしくはあるけれども、自分の深層心理にここまでの偶像がいたのかと思うと首をかしげてしまう。
自由の象徴?憧れの自分?
っと言っても夢にまで出てくるそんな強烈な人物ともなると多少なりともモデルを彷彿とさせるパーツが組み込まれているものである。
夢はあくまで自分の記憶の整理だからな。
目の前で宝くじについて自由な意見を述べるその人物は。
出会った覚えもなければ出会ったら出会ったで絶対忘れないような、今の時代には珍しい着物姿をしていた中庸な雰囲気の人物だった。こんな人、現代で出会えるとなると映画村くらいだろう。そして俺は映画村に行ったことがない。
俺の脳の中の夢なのか、ここは?
「…あなたは誰ですか?」
「はあ、君も不思議なことを聞くねえ」
あんたにだけは言われたくない、っとは思いつつもご丁寧に目の前で仁王立ちして自己紹介をしてくれる。
「僕は君の一部だよ、夢の中なんだからね」
まさかの自分だった。信じがたいがでも『俺』って一人称からしてやっぱり男性なんだろうか。僕っ娘の可能性もなきにしにあらず。
「ふふん、その顔は納得してないね?それかエッチなことを考えている」
「エッチなこと考えるかよ。あんたは俺の一部らしいんだから自分に欲情なんて悲しい真似するかよ…まあかといってあんたと俺の共通点もさっぱり分かんないけどさ」
「そうかな、僕と君は似た者同士だと思えるけどね?」
「…はあ、その心は?」
「とりあえずのんびり屋さんなところ。君ってばいくら夢の中と言ってもこんなエッチそうな不審者と二人っきりだなんて警戒心なさすぎだよ?もう結構いい年なんだから大人になりなさい!」
いやエッチそうだと言われましても俺から見たら中性な見た目なので性的とはちょっと違うベクトルのところにいる。好みのタイプともちょっと違うしな。美しいとは思うけど。
「そして傲慢だ。君は僕のことを自分らしくないと言うけれど、果たしてこの世にどれだけいるんだろうね。自分のことを完全に理解している人って。君の言い草だとまるで自身のアイデンティティを全て把握している創作キャラクターのような不気味さがあるよ。そんなんじゃ生きているとは言えないね。人間誰しも死ぬまで自己探求してなきゃいけないものだよ。ここ夢の中だけども」
「いや…何もそこまで…」
「君は自分のことを空っぽな人間だと思っている」
「………」
「とりあえず自己否定しまくるからこの世に現存することを他者から許して欲しいと願っている。一方で誰も構ってくれないからそろそろ本当に虚しくなってきていて、だけど自殺とか出家する覚悟がないから更に自分の中途半端さに嫌気がさしてきている」
「………」
「だから僕がここにいる」
「いや、何でそうなるんだよ」
「自分が誰か分からないってことは、これから自分が何にでもなれるってメモリがまだまだあるってことだよ。こうやって君の夢の中のキャラクターである僕が君を構ってあげれるってことは、君はまだ本当の孤独ではないってことだよ」
「…いや、でも俺もう結構いい年だし。そんな年して脳内友達とおしゃべりしてるとか恥ずかしいな、俺」
「可能性に歳なんて関係ないよ。それに別に僕は君の寂しさを紛らわせる慰み物、って訳じゃないんだよ?無限の可能性の象徴、自身の潜在能力を判断しきってしまうというのもそれくさ傲慢と言えるね」
「…つまりどういうことだよ」
何だか厨二臭いこと言い始めたので確かに俺の分身っぽくはなってきたかな。俺の中にもまだこんな歳を感じさせないような妖精さんが住んでいるというのか。
「つまるところ僕が心の中にいる以上、君にはまだ無限の可能性が残っているということだよ。年齢や産まれた家なんて関係ない。それを言い出したら君はこの地球生命という括りでいう大きな家族、生命のDNAに属しているんだから。小さい血の繋がりや人間の寿命の限界なんかで縛られちゃ勿体ないよ」
「…いや、さすがに人間はやめたくないかな…」
「…は、っはー。そうだね。さすがの僕も君に鬼やゾンビになれとまでとは言わないよ」
鬼、ね…
心のどこかでコツンという音がする。夢の中だと言うのに更に心の中に何かあるだなんて、確かにキリがない何かがある感覚はちょっと分かった気がした。
「見つけられたかな、君の中の心の宝くじ」
「いや、何だよ、心の宝くじって」
そんな、これまで出てきたキーワードを無理矢理繋げたみたいな。俺でもそれはセンスないと思うよ?
「ふふん、皮肉を言えるくらいの心の余裕は出来たみたいだね。こりゃ僕もしばらく自由に動けそうだ」
「あれ、俺声に出してたっけ?」
「ううん、まあ気にしないでおくれよ。君と僕が出会えたこの一期一会もまた宝くじみたいな『縁』だからね。誇っていいと思うよ?たとえ夢の中と言えど僕って結構レアキャラなんだからね!」
「いや、でもあんたってどちらかと言うと…」
「む、ありがたみなさそうなキャラとでも言いたいの?」
伝えたい事とはちょっと違うのだが、どうやらいくら不思議ちゃんといえど俺の心を全て見透かしてはいないようだなと安心する。ニコニコ顔だけじゃなくてちゃんと怒った表情もできるようなので、本当の意味での化物という訳ではなさそうだ。
「いいよ、今度出会えた時に改めて伝えるとするよ」
「ふふん、まあ僕は多少の神秘性は犠牲してもちょっとかましいところがあるくらいが魅力だって分かっているから、君みたいな反応はなれたもんだけどねー」
「う、すごい自信」
そして過信とも言えない裏付けのありそうな言い切り。やっぱりそれなりに経験値を積んだ存在なのだろうか。
「まあそれはお互い様、ってことで」
ウインクする。かわいい。俺の好きな人とは雰囲気が違うくせしていざ話してみると細かい仕草の共通点を発見してしまう。
自分に似ているとか言いつつ、好きな人に似てきている。やっぱりこいつは夢の世界の住人なんだろう。
「まあいいや、僕に会いたくなかったら君の中のメモリを消費してさっさとなりたい自分にでもなるんだね。そしたら僕も無事消滅…いや、融合ができるからね…」
「ん?融合?」
何だか気になる事を言ったので問い詰めようと思ったが、突如世界全体が動いているんじゃないかと錯覚する大きな地鳴りが俺達を揺らす。
「うわ、どうやら外の人間が本格的に君を起し始めているみたいだね。そろそろ本当にお別れの時間のようだよ。見つかるとマズイから僕もドロンさせてもらうかな」
「ああ!ちょっと待って!消える前に最後にこれだけ聞かせてくれ!」
足場ごと崩れ落ちそうな世界の中で、俺はそいつの手を強く握る。夢の中だって分かっている。こんな奴幻想じゃないと逆に怖いとも今も思う。
けれどその手には、熱が鼓動して動いている呼吸を感じた。
「お前の名前は?」
微笑む。世界が揺れているはずなのにしっかりとその表情の変化は見て取れてしまった。
「ふふ、君もしつこいね。最初に言ったでしょ?僕は君の中の君。今外の世界から呼んでいる人達が呼んでいる名前と根本的には同じ存在さ。まあそうは言っても僕も生まれた故郷みたいなところはあるからね。そこで呼ばれていた名で良ければ名乗るけど、起こされる前にちゃんと伝えられるかな」
いよいよ振動が酷くなってくる。崩壊していく風景の中で、夢の現実の狭間で微かな声が俺の心に届く。
「僕の名前は●●」
「起きて下さい!華倉さん!」
確かに似ている名だった。
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プロローグ終わり。最終回の主人公は久々の方です。
あとごめんなさい、正直あとはカツカツ進行なのでまた例年通り週一更新にしていきます。ごめーんね!
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