図書館

□或朝。
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 朝の保健室の鍵を開けた土方は、空気の入れ替えの為に窓を開けた。登校してくる生徒達の声が朝の空気と共に室内に流れ込んでくる。
 「歳〜、おはよう!」
 保健室の扉をあける音と共に、爽やかな朝に似合いすぎる、元気な声が響いてきた。
 「近藤さん。朝から元気だな」
 規則正しさと健康を第一に考えなければならない筈の教育者という仕事をしている土方だったが、実は朝は苦手だ。だから近藤の爽やかすぎる挨拶に少し疲れた。
 「いやぁ、今日はうちの奥さんの朝ごはんが豪華でな。思わず元気が出てな」
 土方は嫌な予感がした。この男はことある毎に妻・ツネの話を歳三にしては妻のいる素晴らしさを語る。決まった相手のいない歳三はいつも辟易させられている。
 「早起きしたらしくてな、弁当も豪華らしいんだ」
 愛妻弁当…土方は背筋が寒くなった。ここ最近、土方の周りには愛妻弁当が蔓延っているのだ。
 「近藤さん、職員会議、行かなくて良いのか?」
 土方は窓を閉め、職員会議に持って行くべきものを引き出しから取り出しながらまだ妻の自慢話を辞めない近藤を振り返る。
 「もうそんな時間か?」
 時間ですとも、と土方は独り言を言った。
 職員会議へと向かう道すがら、近藤は妻の自慢話の後のお決まりのパターンとして、「誰か好い人いないのか」と聞いてきた。奥さんを持つのはいいぞと、何時ものように続けた。
 「いるさ。好い人くらい」
 土方はニヤリと、含みのある笑みを近藤に向け、自らにあてがわれている席についた。それとほぼ同時に職員会議が始まった。



END



〜〜あとがき〜〜
嘘ですよ(笑)土方に好い人はいません。いつも妻だ、奥さんだ、などと煩い近藤をちょっとからかっただけです。
この続きはお昼休み編で書きます。…多分。

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