不思議体験談

□ずぶ濡れの女
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それは、ある夏の日のこと―――
その日は夕方から雨が降り始め、夜には激しい雷雨になっていました。
そんな日の深夜に私が体験した出来事です。

先述したように、その日は激しい雷雨に見舞われておりました。
深夜、私はふと異様な感じがして目を覚ましてしまったのです。
部屋に光源はありません。
時折窓の外に光る雷で、部屋の中がぼんやりと映し出されるくらいでした。
いつもの部屋、いつもと同じ夜、同じ暗さ…
違うのは激しく窓を叩く雨と、耳をつんざくような雷鳴だけ。
そのはずでしたが、その時私は何か違うものを感じたのでしょうか…
何故かは分かりませんが、今すぐに布団から出て、電気をつけなければいけないと思ったのです。
電気のスイッチは、私が寝ている場所からほんの数歩歩いたら手が届く壁にあり、スイッチのすぐ左にはこの部屋のドアがあります。
夏という季節上、私はその時ドアを開けっぱなしにしておりました。

私が布団から出て立ち上がり、スイッチの方へ一歩を踏み出した瞬間でした。
一際大きな雷が鳴り、雷光が私の部屋を照らし出したのは…

その瞬間私が見たものは、きっとこれから先も忘れることは出来ないでしょう。

雷光で淡白く照らし出された部屋の中、私の足元…
布団に入っていれば、丁度足がある所…
そこにずぶ濡れの女が這いつくばっていたのです。
髪は長く、水に濡れている感じがし、上半身は真っ白な服を着ている感じで、下半身は入り口付近に近いためか暗くて確認できませんでした。

その女の腕は布団の裾に…
まるで腕だけで歩いてきたかのような格好だったことを覚えています。

体は真っ白だったのに顔は真っ黒で見えませんでした。

雷光が消え、部屋に再び暗闇が戻ったその瞬間、と言ってもいいと思います。
瞬間的に私は学習机の電気をつけました。
しかし、先程それがいたところには何もありません。


もちろん床も濡れてはいませんでした。


その日はそのまま電気をつけて、布団を頭まで被って寝た覚えがあります。
雷が光った一瞬で見たものでしたが、妙にリアルで心臓がバクバクいっていたのを今でも覚えています。
未だにあれが何だったのか分かりません。
家にそんな女性はいないですし、仮にあれが家族の悪戯だったとしても、雷光の一瞬のうちに消えるのは不可能だと思っております。
例え入り口のドアが開きっぱなしになっていたとしても…

あの日以来、雨が降っている夜は、雷が鳴っていなくても恐怖心を煽られてしまいます。
私は変わらずその部屋に一人…
それ以来同じような出来事にはあっておりません。

体験:蓮夜自身
 

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