□友達のことだと相談するのは、たいてい自分のこと。
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元老からの配慮で、席はファーストクラス。それなりに料理は美味しいし、サービスもいい。
だが、スーの気分は悪かった。勿論長い間、船の生活してきたのだから船酔いなどではない。


「さっき、乗務員のお姉さんから貰っちゃった。」


「………。」


自分が少し席を立っている度にスチュワーデスから連絡先を渡され、それを悪びれた様子もなく見せる神威にイラッとしていたのである。

金持ちで顔も良けりゃ、頷ける話だ。


(それにしても、何で受け取るかなー。)


「妬いてる?」


「知りません。」


口早に返事を返し、スーは顔を背けた。
つい無意識に唇を噛めば、頬にのびてきた手が背けた顔を戻させられる。
グキッと痛む首に、スーが文句を言う前に下唇を噛み付かれた。

驚いて肩を押しても、その腕を掴んで引き寄せられる。
スーは耳に届いた足音に焦るが、神威は全く気にしていない。

近付いた足音が足早に去っていくのを聞き、見られたのだと確信する。


「バカッ何で、こんな場所で…!」


「見せびらかそうと思って。これの相手に。」


連絡先のメモを、後ろで寝ている男の席のコップの下に挟んだ神威は悪戯っぽく笑った。


「紛らわしいことをしますね…。」


「面白いでしょ?さ、もう寝ようよ。」


借し出された毛布を被り、座席の背もたれを倒した。眠りに就くべく目を閉じると、左肩に重みを感じる。
目を開いて隣を見れば、ぐっすりと眠る神威の寝顔があった。開いた右手で神威の髪を撫でていると、何やら物音がする。
乗客が寝静まった室内では、余計に耳についた。

どうやら、それは後ろの機内のよう。たいして気にすることもないかと、スーも神威にもたれ掛かって目を閉じた一方では、ある男がトイレのドアをひたすらノックしていた。


「ちょ、早く出てくんない!?腹の痛みが、半端ないんだってェエエ!!」


「お、お客様?他のお客様のご迷惑になりますので、お静かに…っ。」


「無理無理っおじさんの顔見てごらん!嫌な汗かいてるでしょ!?
くそっ喉が渇いたからって、生水を飲むんじゃなか…っ。」


叩いていたドアにもたれ掛かるように床に倒れた男に、乗務員は焦りを現した。


「っお客様!?お客様!」



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