月日、空を飾る

□何事も適度が一番【後編】
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朝食時、山崎は総悟の隣に腰を下ろす。


「おはようございます。沖田隊長。」


「おう。おはよーさん…。」


「うわっ沖田隊長、すごいクマ!」


「…翡翠が一緒に寝たいとか、言ったもんだからな。」


「お…お疲れ様ッス…。生殺しッスね…。」


敢えてそこで生殺しの言葉が浮かんだのは、総悟の彼女への溺愛ぶりと自分が監察した彼の性格からだ。

ドSで悪戯心満載の総悟も、心底惚れた相手には弱いらしい。


(まあでも、床を一緒にできたのは嬉しいんだろうな。)


山崎がしみじみと感じながら朝食に箸をつけると、翡翠が満面の笑顔でやってきた。


「総悟さん。ハート型の卵焼きを焼いちゃいました!」


「器用だねィ…。」


「ありがとうございます…!嬉しくて、照れてしまいますの。」


ほんのり染まった両頬を手で隠した翡翠は、顔を背けた。
それに対して、総悟は目を手で覆って俯く。


(クリーンヒット…!!)


「トシ、今日の議題だが…」


「あ、ああ…。確か【若い娘のストーカー被害について】だったか。」


「ああ!俺達は対テロの武装警察だが、若い娘や子供…そしてお年寄りが安心して暮らせる街にするべきなんだ。
そんな街になれば、自ずと犯罪者も減っていくだろう!

その先駆けとして、対応が遅れがちなストーカー被害について何か対策をせねばならん!」


「そ、そうだな。管轄は違うが、また違った目線で見た意見があるかもしれねぇな。

…アンタがそのストーカーの先駆けだってのに。」


自らの首を絞めていることにも気付かず熱く語る近藤に、土方は若干引き気味だ。
何とか二人を元に戻さなくてはならない。

その手は既に打ってある。現在取調室にて椅子に縛り付けられているのは、昨日生放送にて胡散臭い催眠術を披露した男。

ボコボコにされて、顔面青痣だらけなのは触れないでおこう。


「さあ、二人を元に戻してもらおうか…!」


「いや…あの、すんません。僕、実は自称催眠術師なんです。」


「はい、詐欺容疑確定ィ。」


「だから戻し方わかんないんす。」


「ふざけんじゃねーぞ。テメェの催眠術を見て、二人がおかしくなったんだからな。」


「え!じゃあ、僕には催眠術の力が…!?」


「喜んでんじゃねーぞコラ。」



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