月日、空を飾る

□恋人という存在
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翡翠は姿見の前で、着物を選んでいた。しかし、悩めば悩む程焦ってしまう。


「この間、新調した着物にしましょうか…。えっと、帯の色はどうしましょう…?
ああ、こうしている間にも総悟さんをお待たせしてしまって…!」


あわあわとしている翡翠を助けに入ったのは片手で腰を掴み、ピースサインを目元にあてたお蘭だった。


「悩める乙女、進んでお助けしましょう!助っ人蘭ちゃん参上!」


ちなみにお蘭の年齢は履歴書上、23歳である。
住人の許可も無しに部屋に入って来たお蘭に対し、翡翠は咎めることはない。


「翡翠ちゃんはいつも青系だからね。思い切って、明るい色なんてどう!?
ほら、松平のおじ様がくださったあの山吹と若草色の着物!」


「え、あ…でも、あのように高価な物を着るのは気が引けて…。」


「着物は着る為にあるんだよっだから、ね!」


自分の見立てで着替えた翡翠に、お蘭はふと口を開く。
着物を淑やかに着こなしているが、髪は下ろしているだけで物足りない。


「そういえば、翡翠ちゃんって簪持ってないの?」


「え?」


「だってさ、髪切られちゃったけどまた伸びたでしょ?
いつも前みたいに、先だけ結ってるだけだし。上げたりしないの?」


「確かに伸びましたけど、特に執着があって伸ばしていたわけでもありませんし。」


「放置してるだけ!?髪は女の命なんだよ!
しかも翡翠ちゃんの髪、色といいすっごい綺麗なのに勿体ないよ!」


「今まではその、自分で切れる範囲までしか伸ばしませんでしたから…。」


「自分で切ってたの!?」

(あのおかっぱヘアは自前だったのか…!)

「じゃあ、髪結ったげる!今手持ちの髪留めはないけど、雰囲気はがらりと変わるよっ。」



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