弐
□こっそり相手の行動を把握しても、良い事はない。
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骨折が完治したスーはリハビリを終えると、貯まっていた仕事を片付けるべくこの数日間自室に篭っていた。
神威はテーブルに顎を置いて、つまらなさそうに呟く。
「スーが構ってくれなーい。つまんないよー。
部屋に引きこもっちゃってるもん。体に悪いってあれ。」
「仕方ねーだろうが。休んでた分と上からの指示が、貯まりに貯まってたんだからよ。
俺らじゃ、薬の実験台になるくらいしか手伝えねぇぞ?俺ァお断りだね。」
「………。」
休息を取るのが下手なスーに食事を持っていくのは、神威が担っていた。
昼食である鶏肉のフォーを持って、自室である薬室に入れば小さな寝息が聞こえてくる。
足を進めれば、スーは壁に寄り掛かってうたた寝をしていた。
「ありゃりゃ…疲れてるなら俺の所に来ればいいのに。おーい?君の大好物だよー。
ま、でも…。」
昼食の乗ったトレイを置いて腰を下ろし、髪を手で梳いた。
くすぐったいのか、身じろぎをすれば頭は壁から離れて神威の肩に乗る。
『…頑張るコは大好きだよ。』
「…かむ、い。」
良い夢を見ていた気がする。夢の中で、神威が頭を撫でてくれていた。
まどろみたい意識は、匂いで覚める。薬室の匂いがしない。ついでに手足が動かない。
目を開けば、見知らぬ四角い部屋の中にいた。手足には手枷がされている。
「……は、い?」
(何これ。変態兎のマニアックなプレイ?)
スーは周りを見回し、現状を理解しようとした。その時、スピーカーの電源が入る音がする。
《気が付いたようだな。毒竜姫。》
「…誰ですか?せっかく良い夢を見ていたのに、最悪な目覚めですよ。」
《それは悪い事をした。代わりと言ってはなんだが、悪夢を贈ろう。》
「有難迷惑で…!?」
機械的な音に身構えれば、変わる景色。その光景に、スーは顔を真っ青にした。