□入れ代わっての王道が、有効活用されるかどうかは当人次第。
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それは何気ない日だった。

スーが薬圃で鮮やかな色の毒草をうっとりと眺めるのも。

腹を空かせた神威がスーを探すのも。

阿伏兎が仕事に追われるのも。

第七師団では見慣れた光景である。


しかし―…


「はあ…鮮やかで綺麗な色。どうして危険な毒草ほど美しい色なのかしら。
…って、いけない!おやつの時間過ぎてる!神威さんがお腹を空かせているわ!」


「あーお腹空いた…。スーったら、どこ行ったんだろ。おやつの時間なのに。薬圃かな?」


「だぁああっくそ!資料が一枚足りねぇ!団長か!?」


薬圃を飛び出したスー。

薬圃に向かう神威。

神威を探す阿伏兎。


それぞれに目的の人物を求めた時、奇跡は起こったのだ。


「「「あ。」」」


廊下を走る三人は出会い頭に互いに気づき、神威は無遠慮にスーに飛び付く。

その勢いに押されたスーは、堪え切れずに背中から倒れそうになった。

それを支えようと手を伸ばした阿伏兎は、手放した紙束に足をとられてしまう。


「「「ぎゃあぁあああ!?」」」


三人は長い階段を、絡まるように転げ落ちてしまった。

互いを巻き込む形で転げ落ちた為に受け身も取れず、打ち付けた体の痛みに耐えながら阿伏兎は起き上がる。


「いってて…。おい、大丈夫か?団長、スー。」


「ちょ、めちゃくちゃ痛い…っこんなに痛いの、久しぶりかも。」


「大丈夫です。意外とダメージが少なくて。」


「……は?」


地球人並の体の強度であるスーが痛がるのも、頑丈な神威がけろりとしているも問題はない。

何故、阿伏兎が怪訝そうな表情をしたか。それは二人の口調である。
神威の口調で痛がるスーと、スーの口調でけろりとしている神威が一致しないからだ。


「お、おい…。お前さんら、どうしちまったんだ?」


「は?ちょっと黙っててよ。スー、怪我診てくれない?痛みが引かないんだ。」


「わかりました。では―…。」


診せてくださいと、神威とスーが顔を見合わせれば。その表情は驚きのものに変わる。


「「…あり?」」


驚くのも無理はない。何せ、自分が目の前にいたのだから。



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