□博打は程々に。
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暗く寂れた牢獄の中、女の笑い声が響く。


「ウフフ。ちょうか…はんか。ちょうか…はんかァ。」


女は牢の中で、伏せた椀をひたすら回し続けた。椀の中では、コロコロと何かがぶつかる音がしている。
その牢に近付く人影があった。


「じゃあ…丁。」


「ふふふ〜はんじゃ…。」


男の賭けに女が開いた椀の中には、錆びたボルトと六角ナット。どこをどう見て半と言っているのか。


「ありゃりゃ。負けちった。」


「神威さん…負けたも何も、どこが半なんです?博打のルールは知りませんが、さすがにこれは…」


牢の前にはしゃがんだ神威と膝に手をついて屈んだスー。その後ろには阿伏兎がいた。
神威の隣に立った阿伏兎は、牢の中で笑い続ける狂女に同情の眼差しを向ける。


「…嘆かわしいねェ。春雨第四師団団長といえば、かつては宇宙(やみ)に咲く一輪の花なんぞと呼ばれていたもんだが…
派閥争いで居場所を失い、組織の金持ち逃げしてどこに姿消しちまったのかと思ってたら。
まさかこんな姿でご帰還たぁね。」


「ホントだね。まさか阿伏兎の好みがこういう女狐だったなんて。」


「え、そうなんですか。」


「お前さんだってわかんだろ?世の中なんでも手の平サイズ。コンパクト時代になっちまったがねェ。
女だけは手に持て余すくらいが丁度いいんだ。」


「DS位?」


「んにゃ、メガドライブ位だ。」


「成程。道理で今迄探し回っても見つからないワケだ。なんせ阿伏兎お気に入りのメガドライブだもんね〜。」


含んだような神威の言葉に、阿伏兎はピクリと反応した。


「でも残念ながら、地球(あっち)にも彼女の居場所はなかったみたいだよ。
博打が過ぎたね…彼女もお前も…」


「博打は程ほどにした方がいいですよ。」


腰を上げて自分の前を通りすぎる二人に、阿伏兎は顔を引きつらせる。


「……オイ、妙な勘ぐりは止めろ。どっかのバカ団長じゃねーんだ。仕事にそんな私情もち込んでたまるか。」


「「ハイハイ。」」


「そもそもコイツはツラも名も変えて地球に逃げてたんだぞ。んなモンわかるワケ…」


「「ハイハイ。」」


「声揃えてんじゃねーよ!仲良しか!」



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