弐
□友達のことだと相談するのは、たいてい自分のこと。
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仕事中に不意に鳴ったノック音。阿伏兎が入るよう声を掛ければ、ドアが開く。
そこには、困った顔をしたスーがいた。
「阿伏兎さん…あの。」
「ん?どうした?」
「実は、元老から薬を作るよう依頼があったのですが…。」
顔を引き攣らせて、何かに堪えるようなスーの様子に阿伏兎は大方の察しがついた。
また、無理難題な薬を注文されたのだろう。
「また無茶な依頼か?無理なら無理って言ってもいいと思うぜ、オジサンは。」
「いえ、作ったのは作ったんですけど。」
「え?ああ作ったんだ?じゃあ、どうしたんだよ。あとは、献上するだけだろ?」
「育毛剤なんですよね。」
「ブフッ…あーそうなの、元老もいい年だかんな。」
阿伏兎は思わず吹き出した。何事も無かったように話をするが、もう遅い。
堪えていたスーも、つられて笑ってしまう。
「ちょ、阿伏兎さん。ぷふっわっ渡してきてくださいよ!私、半笑いで渡しそうで…っ。」
「無理無理っ中身教えられて真顔で渡せるほど、ポーカーフェイスじゃねーから!」
互いに笑いを堪えながら、手を顔の前で振った阿伏兎は団長に頼んでみろという。
「普段から笑ってんだから、問題ないだろ?」
「駄目ですよっああいうのって、逆に自分のことで笑ってんじゃないかって気になるみたいですから!」
「めんどくせぇな。」
「何だか受け渡し方も慎重なんですよね、指定された星にいる世話人に渡せって。
元老の誰だか、特定させないつもりですよ。そういう事されると、調べたくなるんですよねー。」
「やめなさい。」