弐
□馬鹿と天才は、紙一重だった。【前編】
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俺は自然と目が覚めた。普段は、先に起き出したスーに起こされているというのに。
「…スー?」
寝返りを打って、隣へ目を向ければそこにスーの姿はなかった。
いつものように先に起きて朝ご飯を作っているのかと、着替えて台所に行く。
しかし、テーブルの上に食事の準備はあっても本人がいない。
欠伸を一つした俺は、寝癖を直さないままに口元に手を当てる。
スーが俺に挨拶もなしに姿を見せないのは、以前に一度だけあった。
怒らせて気まずくなった事が原因だが、今回思い当たる点がない。
まあすぐに見つかるかと、椅子に座った俺は、ラップをされた皿の隣に置かれた一枚の紙を見付けた。
何となく手に取って見れば、やたら長い文章が綴られている。
トマトが美味しい季節だから、冷やしトマトが冷蔵庫にあるとか。
ちゃんと三角(ご飯、汁物、おかずの意)バランス良く、食べるようにとか。
正直、おかんかよ?とか。
読むのめんどくさっ!とか。
調理の手順とか、隠し味とかどうでもいいし。
書き置きで書くもんじゃないでしょ。
ていうか、隠し味書いたら隠し味でなくなるじゃんとか。
もしかして、食事中に交わす会話を全て書いちゃってる?とか。
ツッコミ所満載な書き置きに、ローテンションな起きぬけの俺は一々反応できないわけで。
見逃すであろう、占いの内容(12星座全部もいらなくない?)など。
スーが俺に、何を伝えたいのかわからない。
いい加減読むのをやめようかと思えば、最後の文面に行き着いた。
【探さないでください。】
「………は?」
何これ。
あの脈絡もない世間話のような書き置きから、この言葉に行き着く道筋がわからない。
文面で既に迷子?実は暗号だったり?
(ていうか―…!)
「はあぁあああ!?」