□馬鹿と天才は、紙一重だった。【前編】
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俺は自然と目が覚めた。普段は、先に起き出したスーに起こされているというのに。


「…スー?」


寝返りを打って、隣へ目を向ければそこにスーの姿はなかった。

いつものように先に起きて朝ご飯を作っているのかと、着替えて台所に行く。
しかし、テーブルの上に食事の準備はあっても本人がいない。

欠伸を一つした俺は、寝癖を直さないままに口元に手を当てる。

スーが俺に挨拶もなしに姿を見せないのは、以前に一度だけあった。
怒らせて気まずくなった事が原因だが、今回思い当たる点がない。

まあすぐに見つかるかと、椅子に座った俺は、ラップをされた皿の隣に置かれた一枚の紙を見付けた。

何となく手に取って見れば、やたら長い文章が綴られている。

トマトが美味しい季節だから、冷やしトマトが冷蔵庫にあるとか。
ちゃんと三角(ご飯、汁物、おかずの意)バランス良く、食べるようにとか。

正直、おかんかよ?とか。

読むのめんどくさっ!とか。

調理の手順とか、隠し味とかどうでもいいし。

書き置きで書くもんじゃないでしょ。
ていうか、隠し味書いたら隠し味でなくなるじゃんとか。

もしかして、食事中に交わす会話を全て書いちゃってる?とか。

ツッコミ所満載な書き置きに、ローテンションな起きぬけの俺は一々反応できないわけで。

見逃すであろう、占いの内容(12星座全部もいらなくない?)など。
スーが俺に、何を伝えたいのかわからない。
いい加減読むのをやめようかと思えば、最後の文面に行き着いた。


【探さないでください。】


「………は?」


何これ。

あの脈絡もない世間話のような書き置きから、この言葉に行き着く道筋がわからない。

文面で既に迷子?実は暗号だったり?


(ていうか―…!)

「はあぁあああ!?」



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