弐
□仕掛けるからには、仕掛けられる覚悟を。
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俺は、真選組監察方山崎退。
今現在、報告書を書くべく机に向かっている。
内容は以前、副長に麻薬所持の疑いで連れてこられた娘について―…。
その娘はどうやら、局長や沖田隊長と知り合いらしい。しかし、どうも訳ありなようだった。
何故、俺が彼女の事を報告書に書くか。それは会ったからだ。
それは、ほんの数日前。街で見掛けたその娘は、ファミレスの窓際の席にいたのである。
その姿は試験勉強をする学生さながらに、分厚い本と紙を眺めていた―…。
「久しぶりの非番っていっても、特にこれといって用もないからなぁ。」
長い期間潜入捜査をしていた自分にとって、久しぶりの休暇。ただ何気なく街をぶらつく時間も、仕事は忘れない。
自分達真選組にとって。例え休みであろうとなかろうと、浪士達には関係ないからだ。
こうして街を見回して、些細な変化を見逃さないのは最早職業病ともいえる。
そして、俺の職業病はやはり仕事を見つけてしまったのだ。
(あれは…!)
不意に視界に入ったのは、ファミレス。その窓際に、例の娘がいたのである。
長い黒髪の、一見大人しそうな女性。
しかし副長が【宇宙海賊春雨】と関係しているかもしれないと、言っていた人物だ。
俺はすぐに、仕事モードに切り替えてファミレスに向かう。
客を装って監察し、あわよくば拠点・素性を調べることが出来れば上出来だ。