弐
□使えないと、不便なモノって結構ある。
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前回二人の喧嘩を止めに入った際、不幸にもスーは利き腕を骨折してしまった。
現在三角巾を首に下げ、骨折した腕を支えながらソファーに腰掛けている。
「暇…。」
ボソリと呟いたスーは、積み上げた本の上にさらに本を積み上げた。
その題名は【Let's ゆるゆる人生】。
うさぎのようなゆるキャラが、いかに暇な毎日をスタイリッシュかつ、有意義に送るかというよくわからない内容をイラスト付きで力説している。
「くっ…暇を有意義に活用出来ない私は、この不細工なうさぎ以下なのね…!」
「安心しなよ。スーは可愛いよ。包帯で目隠しとか、包帯一枚の姿になってくれたら、もっと好きになっちゃうかも。」
「変態うさぎ。」
「うわ、ひどーい。こうして看病してあげてるのに。」
「ベッドに寝そべって、お菓子を食べている人が何言ってんですか。」
神威は利き手が使えないなら何かと不便だろうと、スーの看病を理由に仕事を阿伏兎へ丸投げしていた。
しかし実際には特にすることもなく、スー同様に時間を持て余しているのである。
「はいスー、あーん?」
神威は地球産チョコレート菓子【ぽっきり】を向けるが、スーは顔を背けた。
「いりません!そういう市販のお菓子は、嫌いなんです!
長持ちさせる為に、いろんな物入れてるんですから!
いっぱい食べちゃダメですからね!健康によくないですから。」
ホームメイドが一番だと言い張るスーは、かなり鬱憤が貯まっているらしい。
開いた口からは遺伝子組み換えでないとか、着色料がどうのとブツブツ呟いている。
(健康オタクのおばちゃんみたいだな…。)
「ま、俺もスーの手作りが一番好きだけどね。今は我慢してるけど。」
「すみません。腕が治ったら、大いにご馳走を作りますから!」
「あははっ地球人レベルの回復力なら、一体いつになるのかな?」
「………。」
神威のさりげない一言が、背中にのしかかったスーの空気は、さらにどんよりとした。