□フルコンプって憧れる。
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今日はバレンタイン。主に地球では、女性が男性にチョコレートを渡して愛の告白をするという。

恋人達のイベントでもあるわけで、スー自身も例に漏れず手作りチョコレートを作っているわけだが…。


「く…っだぁあああ!素直になれ私ィイ!!」


ベタなハート型のチョコには、白のデコペンで大々的に【義理】と書き込まれていた。
それはまさに、誰が見ても義理チョコである。


「ここまでくれば、精神的な問題だわ…。」


テーブルの上に並ぶ十数個にも及ぶ義理チョコに、スーは頭を抱えた。
どうすれば、この状況を打開出来る?悩んだ結果、スーはある人物に助っ人を呼ぶ事にした。


「…で、俺にどーしろと?」


「見てくれるだけでいいんです。そこのチョコレートを、食べながらでいいですから。
誰かの目が無いと、材料が全て義理チョコになっちゃいそうなんで。」


「オジサン、こんなに甘いモンは食えねぇよ…。」


ズラリとテーブルの上に並ぶ【義理】の文字。それを前にした阿伏兎の気分は、決していいものではないだろう。
しかし阿伏兎は、椅子を引いて腰掛けた。此処でくだらねぇと一蹴したところで、他にスーが頼れる団員はいないのだ。


「ま、手は空いてるからさっさと作っちまえ。」


「はい!」


スーはチョコレートを刻み、湯煎で溶かす。そして型に流し込んで、冷凍庫へ運んだ。

固まったら後は、可愛くデコレーション。しかし阿伏兎が見守る中、スーは声を上げる。


「ああっまた書いちゃった!阿伏兎さんっ止めてくださいよ!」


「え?」


「【duty(義理)】って、書いちゃったじゃないですか!」


「知らないよオジサン!?何で英語で書いちゃってんだよ!」



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