弐
□焼き餅はいくら膨らんでも、最後は萎むもの。
1ページ/8ページ
《今年も地球では、バレンタインの季節となりました!チョコの需要とともに、女性達の熱気も高まるばかり!
今日は各有名店から、バレンタイン限定の商品をご紹介…》
リモコンでテレビを切ったスーは、ソファーに深く座る。その表情は暗い。
「今年もやってきましたか…。」
バレンタインは、女子が活気づく一大イベント。スーのように、頭を押さえてため息をつく者はそういない。
「本命チョコ、義理チョコ、友チョコ…チョコチョコチョコチョコ…っ何でもチョコにすりゃいいと思ってんだろうか…!?」
春雨に入団して早数年。毎年スルーしてきたイベントだが、今は神威の恋人という立場にいる。
ノブの回る音に目を向ければ、大きな紙袋をいくつも持った神威の姿。
それは毎年見慣れた光景であり、現在の頭痛の原因である。
「…今年も大量ですね。」
「あはは、会議室から歩いてきただけなんだけどね。」
テーブルに紙袋を置いて早速包装を破いて食べる様子は、立場が変わると違って見えるもの。
(…うん、無神経だよね?普通恋人の前で他の女から貰ったチョコ食べる?
めっちゃ肩身が狭いんですけど。昔、人の事図太いとか言ってたけど。今の貴方そのものだよね。)
「スーも食べる?」
(誰かタイムマシン持ってきて!!)