月日、空を飾る
□一家に一台あるもの。
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「今日も、しっかりお仕事です!」
襷掛けをして、翡翠は廊下の床を駆けるように拭き上げる。
絞った雑巾に手をついて、前へ進んだ。廊下の角にきた辺りで、大きな声がする。
翡翠を驚かせようと待ち構えていた近藤が、クラッカーを鳴らした。
「翡翠ちゃん。ヤッホーっ!」
「きゃあ!?」
「うぎゃ!?」
翡翠が短く悲鳴を上げた瞬間、近藤が手に持ったクラッカーが凍り付く。
驚かせようと廊下の曲がり角で待ち構えていた近藤は、逆に驚かせられてしまった。
尻餅をついた近藤に、翡翠は慌てて頭を下げる。
「局長さんっ!?す、すみません!お怪我はありませんか!?」
「大丈夫大丈夫っごめんね!驚かせちゃって。」
「何の騒ぎだ?…って、またか。」
騒ぎに通り掛かった土方は、凍り付いたクラッカーを見てため息を吐く。
「如月。お前は出来るだけ驚くな。平常心だ、平常心。」
「は、はい。」
「アンタも、驚かせるようなことをしてんじゃねーよ。」
「い、いやぁ…この前のパーティーで、余ったクラッカーがあったから。」
つい使いたくなっちゃったと懲りた様子もなく笑う近藤を横目に、土方は部分的に凍り付いたクラッカーを見た。
「…どうやら、リミッターみたいなもんが外れちまったようだな。」
「りみったー…とは?」
「あの時に、力を目茶苦茶に使ってただろ?
今まで使わなかったから、その反動で力が出やすくなっちまったんだろうよ。
ま、見たところ体に害はねーみたいだし。
力自体は、おっかねーほどでもねー。」
だけど十分注意するようにと言った土方に、翡翠はしっかりと頷く。