月日、空を飾る

□長所は時に短所。
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ある日の昼間。愛用のママチャリで買い出しを済ませた翡翠は、時間も短縮出来て便利だとママチャリをスイスイ走らせる。

何気なく町並みを眺めれば、路地からのろのろと動物が出て来た。


「まぁ、かわいらしい猫さんですの。…あら?」


力尽きたようにくたりと倒れた体に、翡翠はブレーキをかけてママチャリを降りた。
翡翠が近付いて見つめるその動物は、ぴくりとも動かない。明らかに弱っている様子に、翡翠は膝をついて覗き込む。


「元気がありませんの。お腹が空いたのですか?」


翡翠が頭を撫でようとしゃがんで手をのばせば、ガブリと容赦なく噛み付かれた。
手の甲からタラリと流れた血。翡翠は強い痛みに顔を歪めるが、すぐに微笑んだ。


「私はご飯ではありませんよ。」


その反応が意外だったのか、動物は威嚇していた表情をぽかんとさせる。
そんな様子に翡翠はクスリと小さく笑った。そして痛みに堪え、もう片方の手で頭を撫でる。


「放っておいて欲しいかもしれませんが、私は放っておけませんの。
私の我が儘に付き合ってくださいな。」


抵抗しない体を抱き上げて籠に乗せると、翡翠は帰路に戻る。
カゴに入れたままの荷物を後回しにして、動物の体を抱き上げた翡翠は玄関を開けた。


「只今戻りました。」


「あ、おかえり翡翠ちゃ―…い゙ぃいいい!?」


ちょうど市中見回りから帰ってきた近藤は靴を脱いでいると、帰って来た翡翠に持ち前の笑顔で振り返り叫ぶ。
何故なら翡翠の右手は、真っ赤に血に塗れていたからだ。

だらだらと出血中の現状に、近藤は慌てる。


「何があったの!?買い出し中にィイイイ!!血まみれじゃないか!」


「歯がしっかりしているので、離乳食ですよね。」


「そんだけがっぷりいかれてたら、歯もしっかりしてるだろうね!?
…て、あ、あれ?翡翠ちゃん。それ…。」


近藤はそこでようやく翡翠の腕の中にいる動物に気付く。

特徴的なシマ模様。太く、しっかりした手足。

一見、ぬいぐるみのようなモフモフとした毛皮。

それはそれは真っ白な―……


「虎ぁああああ!!!?」



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