月日、空を飾る

□何事も適度が一番【後編】
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パチリと目を開いた総悟は、隣に目を向ける。自分の左腕に、ピッタリと抱き着いた翡翠の寝息に頭を抱えた。


(寝れるわけねーだろィ…。)


目の下のクマが睡眠不足を物語る。昨夜一緒に寝たいという恋人に、何度理性が飛びそうになったか。

もちろん手は出していない。それは今の翡翠の異常もあるが、自分と翡翠の間に丸まっている虎子も理由の一つ。

どんな川の字だ。もし手を出そうものなら、腸を食い散らかされること必至。

それを警告するように、虎子の目は光っていたのだから。


(四時か…。)


時計を見上げ、二つの針はニと四を指している。


「ん…総悟さ…。」


「?」


「そっちは危ない…です…。」


(寝言か…。)


「鮪が…。」


(鮪?)


「鮪が走ってくる…っ。」


鮪が走ってくるという意味不明な発言をして唸る翡翠に、総悟は思わず吹き出した。
寝言を聞いていると、どうやら刺身を作ろうとした翡翠は鮪に南蛮漬けがいいと詰め寄られ、手足の生えた鮪に追い掛けられているらしい。
想像すると、気持ち悪い光景だ。


「……手足は食べられますか。」


「おはよう。」


最終的に、夢の中で鮪を捌くことを覚悟した翡翠が目を覚ます。
朝の挨拶をすれば、夢から覚めきっていない翡翠が起き上がった。


「総悟さん!鰹が!」


「鮪じゃなかったのかィ?」



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